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ソーシャルゲームの方法論で週刊連載を考える

TVアニメやマンガ連載が「軌道に載るまで」に失敗しないための注意事項 - ピアノ・ファイア

この記事が面白かった。よくわかってないのかもしれないけど、「クライマックスに至るまでの過程も大事にしましょうね、それが起承転結の承ですよ、そこでは物語の方針とかそういうのをキチンと提示していくものですよ」ってことかなあ。

で、最近読んだ『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』っていう本に書かれていた、「無料で誘い込んでお金を落とすお客になってくれるまでハマらせる」方法論が週刊連載の漫画の場合ぴったりと当てはまるんじゃないかなあと思った。無料で(無料じゃないけど)つかみをみせて単行本を買ってくれる顧客までハマらせるっていう流れは同じですからね。

まあ最近は雑誌なんか見ないで評判を聞いて単行本を買う勢が大勢なのかもしれないですけどね。そうはいっても雑誌に連載する以上人気をとらないと連載が続かないわけで、ソーシャルゲームに学ぶべきところは多いでしょう。

ソーシャルゲームがどのようにして作られていくのかという構造を『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』をまとめるような形で説明してみましょう。

最初にソーシャルゲーム開発をする際に、「プレイヤーの分類」から始めます。簡単にまとめちゃうと1.アチーバー(達成家) 2.エクスプローラー(探検家) 3.ソーシャライザー(社交家) 4.キラー(プレイヤーキラー)探検家は世界を旅し発見することを好み社交家は他人と交流することを好みといったように4タイプにわかれています。

もしこれを週刊連載に適用するとしたら最初は読者の分類から始めることになるでしょうね。確かに読者が「漫画に何を求めているのか」というのは、ある程度分類できるような気もする。たとえば「キャラクター」であるとか「複雑な物語」であるとかですね。バトルを好むのかいちゃいちゃを好むのかといった細かい方向性もいくつでもつけられそうです。

ソーシャルゲームの場合はこの後プレイを始めた人に対して初級者中級者上級者離脱者に分け、それぞれの段階にいる人が楽しめるように手をうつための分類をしています。漫画にここを例えると上級者は物語の裏のテーマ、製作者の意図を読んだり、伏線を想像したり、よつばとに代表されるような細かい書き込みをみたりする人たちって感じでしょうか。

初級者は言わずもがな、ただただ漫画を見たままで読む人でしょう。この層を満足させつつ上級者も満足させなければならない。よつばとはそう考えるとうまいですね。いろいろ考える余地がありつつも、何も考えずに読んでも魅力的に読める。

さて、次にいよいよゲームコンセプトの決定に入ります。漫画の場合これは「どのような物語にするのか」というところに当たるでしょう。本書では「目的」と「目標」をそれぞれ使い分けていて、目的は「なぜこのゲームをするのか」「これはなんのためのゲームなのか」という問いに対しての答え。目標はその目的に達するためのゲーム内での具体的な達成事項になります。

これを漫画に当てはめると、目的はワンピースの場合「ワンピース(ひとつなぎの大秘宝)を手に入れる」になって目標は「ワンピースを手に入れるためにグランドラインに行く前に手ごわい敵がいっぱいいるからまずは強い仲間を集める」になるでしょう。そしてこの「強い仲間を集める」にもいくつもハードルが立ち上がってきて大目標を達成するための中目標、中目標を達成するための小目標を積み重ねていくことになります。

ソーシャルゲームの場合は「ずっと遊んでもらう」ことが目的なので明確なゴールは設定されず、ゲームの目的も自己目的的な物になりがちなのでこのあたりも漫画とはだいぶ違いますね。

話と漫画に戻した場合、「目的」を設定した時に何が一番重要なのかというと、「この作品の目的」を読者に正しく伝えることになるでしょう。これが正しく伝わらず、魅力的に伝わらなかった場合、ソーシャルゲームの場合でも漫画の場合でも離れていってしまいます。ここをどう魅力的に伝えるか。

ソーシャルゲームの場合はここをしっかりと取る為に大抵の場合チュートリアルを用意しています(これは普通のゲームでも同じだけど)なるべく脇道にそれないように一本道を作りながらこのゲームはこういうゲームなのだということを丁寧にわかりやすく教えてくれるのがチュートリアルです。

漫画にもこれを取り入れるべきなのか? 取り入れるとしたらどういう形になるのか? うーん……。ドラゴンボールだとまず最初のボールを手に入れるところまでがチュートリアルって感じですかねえ。邪魔する奴がいて、仲間がいて、それはだいたいどんなやつで。

単行本を最初から買う人は「これは面白いはずだ」と思って買っているわけであってハードルは凄く低いわけですが、雑誌の場合は「まあ読んでみるか……」ぐらいの気持ちで新連載を読み始めるでしょうからちょっとでもつまらないと放棄されてしまうわけだから最初のチュートリアルは重要ですなあ。うう恐ろしい。

ソーシャルゲームはなぜハマるのか ではこの後初級者中級者上級者それぞれを楽しませる仕組みをゲームに入れ込み、最初に分類したキラーなどのタイプ全員が楽しめるようにゲームシステムを整え、どの段階で何人脱落したのかといったフィードバック分析を行なってそこを修正していく……という地道な分析が続きます。

漫画でもどれも応用できそうだなあ。というかこれはまんま赤松健先生がやってることですね。結局何が言いたいのかよくわからなくなってしまったけどソーシャルゲームの方法論は週刊連載にも結構応用できるんじゃないかという話でした。そんな感じで。