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ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力

日本人からすれば任天堂というのは見慣れた企業であり、ゲームをプレイしたことがある人がほとんどだろう。普段接している分には「日本の企業である」というイメージしかないけれど、言うまでもなく任天堂は海外でも大きな成功をおさめているグローバル企業である。

本書を執筆したのはジェフ・ライアンという編集者の方で「アメリカの側からみた任天堂史」という日本の任天堂とはまた違った視点を見せてくれ、これが面白い。ニンテンドー・オブ・アメリカの社長に抜擢された山内社長の娘婿の話(今までほとんど名前を聞いたことがない)とかドンキーコングキングコングの訴訟戦争とか、マリオとカービィの名前の由来とか、重大な部分が結構アメリカで起きているからだ。

もちろんそれだけではなく、アメリカにはアメリカの文化、そして文化による受容の違い、そこで売っていくためのNOA(ニンテンドー・オブ・アメリカ)独自の歴史がある。最近はニンテンドー3DSマリオカートが京都とテキサス州のチームが合同で作っていたりと、よりグローバルな動き(いや、グローバルな動き自体は昔からあったわけだから、これは協働とかか)が見られる今、アメリカで任天堂がどう立ちまわってきたのかを知るのもなかなか面白い。

それにしても海外の視点から改めて任天堂は凄まじい、宮本茂は素晴らしい、と言われるとそうかやっぱりそんなに凄いのだなと納得する。よく意味がわからないけど「世界で最も影響力のある100人」で第九位に入ったと言われても凄いとはわかるけれど、具体的な実感が伴ってこないわけですよ。こうしてまた一人の手によってその偉業が語られてようやく腑に落ちるカンジがするんですよね。

そりゃあドンキーコングもマリオもゼルダも創ったんだから凄いのは当然なのだけど。この3人のキャラクターとその時創り上げたゲームシステムでいったい何億本のソフトとどれだけの人間に影響を与えているのか。スーパーマリオのゲームソフトだけで、全世界で2億4000万本を販売してるんですよ。

ヘイローシリーズでさえ累計3000万本(数が出ていないにしても。何しろマリオは最初のスーパーマリオシリーズ1作だけで4000万本売っている)だもんな。ゼルダドンキーコングの数字はわからないし、宮本茂が実際に制作に携わった製品の売上合計数も出せるだろうけれど、恐らくとんでもない数字に違いない。

もちろん本書は宮本茂だけを追った本ではない。アメリカでの任天堂の歴史を書いたものだ。そこには歴史のダイナミズムを感じるような小話もあったりする。PSPがアメリカでは全然売れていないとか、ゲーム市場を見渡した中での任天堂のポジション話もとても面白い。そうか、日本とは勢力図がまた全然違うんだね。

そして未来へと。本書ではコレから先ゲームは統合時代を迎えるという。十字ボタンに代表される物語へのコミットメントなどを求めるゲームと、モーションキャプチャーなどを重視した「遊びやすさ」の統合。言い換えればライトユーザーとヘビーユーザーの統合と言えるかもしれない。この統合時代を牽引していくことがこれから任天堂の、マリオのなすことであると占めている。

なるほど。その辺は全然予測もつかないがそうなったらいいな。

最後に雑記的に。本書はあまり任天堂関係者へのインタビューが行われていないこともあって微妙に記述が変なところもある(横井軍平の記述に憶測が多く任天堂を追われたように書かれているが実際はそんなことはない、みたいに。)しマリオ以外のゲームに著者の愛情は注がれていないような気もするけど総じてよくまとまっていて良い本だ。技術的な話も多く読んでいて楽しかった。

ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力

ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力