ライトノベル。7巻ぐらいまで出ていて、漫画化もされている今の売れ線と言える。中高生向けの学園が舞台のハーレム物がひしめくライトノベル界の中で社会人物、しかもSEとくればけっこうイレギュラーな作品だ。イレギュラーな作品にはまだ少し興味があるので満足するまで読んでみた。⇒4巻まで
読んでみて思ったのだけど、イレギュラーな作品だけにライトノベルの文法、お約束的な部分がどこにあるのかがよくわかる。ライトノベルを書こうと思っている人からすれば、むしろお勉強になるのではないか。いや、本当はライトノベルを書くんだったらライトノベルなんか読まないほうがいいと思うけどね。
というのも完全にイレギュラーでは話にならないので、題材とは別に展開とかキャラクターの関係性などはすごくオーソドックスなのだ。いくつか例をあげる。1.ヒロインの女の子は見た目が少女。 2・システム業界なのに周りには若くて可愛い女の子がいっぱい。3.まわりの女の子は当然主人公に惹かれていく。
展開は当然本作に限らずどの作品も同じだが、困難⇒挫折⇒復活という単純なループを巻ごとに繰り返す。その結果としてSEとしてのスキルが巻ごとに上昇していき、同時に周りの女の子たちの秘密を少しずつ引き出し、また関係性を前進させていく。こてこてのしっかりとした進め方だ。
複数人の女の子が出てきてラブがコメるというのはあまりにもありがちだが題材がSEなのでくっきりと差別化されている。能力の成長も「エンジニア」の場合は非常にわかりやすい為、職業の選択も合っている。本屋、飲食店とかだと地味すぎるし成長がわかりづらいものね。
特筆しておきたいのはSE仕事の書き方がうまいことだろう。決してリアリティがあるわけではないが、やり甲斐とか、困難の乗り越え方としての設定がうまい。SE的な知識がまったくなくても、別の事象に置き換えて納得できるようになっている。
それにしても徹底的にSEを「帰れない」、ただ「やり甲斐と興奮はある(ある人には)」として書くのには驚いた。作中で主人公とヒロインはほとんど家に帰らないんだから。
これを読んだ中高生はいったいどんな感想をSEに対して持つのだろう。でも無責任にSEを素晴らしい職として書かないのは責任感ある行為なのかもしれない。主役級はみなワーカホリックで気持ち悪いぐらい仕事に熱中しているからあまりバランスはとれていないけど。
まあ、基本繰り返しだけど扱う題材が毎回結構違うのでなかなか楽しい。一巻は基本的なSEについて。二巻は運用構築について。三巻は仕事を取ってくる際の提案活動について。四巻はプロジェクトマネージメントについてそれぞれ四苦八苦しながら乗り越えていく。
困難を乗り越えていくという意味では、敵を倒すのと何ら意味は変わらない。システムのことをよく知らない人でも敵を倒すイメージで読めば面白いだろう。
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