昨日はサンフランシスコの古本屋を紹介したので今日は北鎌倉の古本屋を紹介しよう。サンフランシスコの古本屋⇒the right book exactly,at exactly the right time 『Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore』 - 基本読書
とはいっても今更紹介するまでもないぐらい有名になってしまい、既にドラマも放送されたあと。周回遅れぐらいの感想になるのだが。というか、今更紹介なんかいらないか。『ビブリア古書堂の事件手帖』は日本のライトノベルレーベルから派生した、より一般向けの体裁をとったメディアワークス文庫から発刊されているシリーズ。
ビブリア古書堂の事件手帖以前はなかなかめぼしいヒットもなかったように思うけれど、こうしてビブリア古書堂の事件手帖が狙い通りに一般向け(普段ライトノベルなんか読まない人)に大ヒットして、「大人まで含めた幅広い一般層に売っていく」メディアワークス文庫を考えた人も胸をほっとなでおろしたか大満足といったところだろう。
本に関することにはひたすら熱く語るが普段は人見知りなおしとやかな美女という、あまりにも、あまりにも狙い過ぎな女性がヒロインだ。いや、これは言っておかねばならない。僕のようなただただ根暗に本を読むような人間は、昔からこうした読書好きの女性ヒロインにはかたっぱしからころっとやられてくるものなのだ。
うん……だから意地でも読まん! と思っていたのだけど、Kindle版が出ていたから、しかも安くなっていたから買って読んだらやっぱりころっとやられてしまった。これはもう虫が灯りに集まっていくようなもので、しょうがないことなんだ……。
それに対する相方役はむかしのトラウマから本を読むと冷や汗が出て読めないという大男。ただ気の良い男で頭はよくないが話はちゃんと聞く。ただし物語開始時点では無職だが。そういえばサンフランシスコの本屋の物語も、無職から古本屋に雇ってもらう話だったな。話の導入としてはやりやすいのだろう。
で、この本が読めないって設定が良い。主人公は本が読めない。でもそこに何か楽しそうなことが潜んでいることは知っている。だから熱心に語る本好き美女の話をちゃんときく(下心が9割だと思うが)。そして本好き美女が本を語れば読者はそれを自然となるほどと受け入れていくことが出来る。古き良きホームズとワトソンの関係がビブリア古書堂にはあるのだ。
実は話もミステリィ仕立てで進む。人は死なないけれど。本書が扱うのは「古書」である。つまり一度人の手にわたって、何らかの事情で手放されてきた本たちである。だからこそ「古書」には、本それ自体が持っている意味以外にも、そこまで流れ着いてきた「人の思い」が込められているのである。ビブリア古書堂の美人さんが解き明かしていくのはそうした本にまつわる人の思いなのだ。
人の手を渡った古い本には、中身だけでなく本そのものにも物語がある。
そうして人の思いが解き明かされていくうちに、その人の思いが詰まった本の内容も開陳されていく。これがまた宮沢賢治や夏目漱石があれば、たんぽぽ娘のようなマイナ(だよね?)のSF小説まであり、こうした本や作者に関する細かいうんちくを読んでいくだけでもけっこう楽しめるものだ。
さらりと読める割に、よく練りこまれた満足度の高い物語。なかなかオススメ。毛嫌いしてすまなかった。
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
- 作者: 三上延
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ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
- 作者: 三上延
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ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
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