基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

僕がアップルで学んだこと 環境を整えれば人が変わる、組織が変わる

最近インサイドアップルという「スティーブ・ジョブズ」だけに注目したわけではなく、アップルそのものに注目した本を読みました。でもあれは全然インサイドアップルじゃない……公式取材もまったくないし外からみた視点しかないんだもの……。でも本書は実際にアップルで学んでいた方の内容なのでこちらのほうが余程インサイドアップル。

それも、スティーブ・ジョブズの話もほとんど出てこない! ジョブズがいない、アップル冬の時代の話も結構ある。そういう「本当のインサイドアップル」話が読みたかったんだ! それに単なるアップル暴露話でもなく、「アップルという環境」の話になっているので、正直いってそこが一番読みたかった! と喝采をあげましたね(心の中で)。

ジョブズがいない時代の、アップルは本当に惨憺たる有様だったようです。社内のコミュニケーションの質は本当に笑えるレベルにまで低下していたといいます。会社の機密事項はもれっぱなしで、『自分が関わっていない別のプロジェクトを知ろうと思ったらマック専門誌を買って読んだ方が正しい情報が得られるくらいでした(p025)』

昼まで会社に来ない人がいたり社内にペットを持ち込むことが容認されていたことから犬と遊んでいるのか仕事をしているのか分からない人もいたという(そんな状況は傍から見ている分には楽しそうだけど)。

で、ここからいかにしてアップルが現在のアップルになっていくのか、という話になっていきます。ココらへんの流れはどんなアップル本にも出てきて、僕もその度に読んでいたのでもはや食傷気味です。が、本書が一番、充実とまでは言わないですけどシンプルに要点がまとめられていてよかった。

ようするに、「いかに無駄なことをやらないか」ってことなんですよね。製品の開発から組織構成、仕事のやり方まで「シンプルにしろ」でも同じですが。で、いかにして無駄を減らし全てをシンプルにするか、といったことを考えた時に、一番大事なのは最も初めの部分である「製品コンセプト」なのです。

 売れる製品やサービスを創るうえで最も集中するべきところは、まず明快な製品コンセプトを定義することと、そのコンセプトを満たす「これ以外はあり得ない」というような優れたデザインを生み出し、それを崩さずに製品化にたどり着くことです。

読めばまあ当たり前の話です。が、今まではどうにも「シンプルにせよ」というところだけが頭に入ってきていて、「何から?」という思考が抜けていたなあ。誤ったコンセプトに基づいて物事が進んでいったら、いかに途中で優れた開発が行われようが、アフターサービスが行われようが、無意味ですからね。

ただ、コンセプトを決める前にも、まだ決めることがあります。現代において技術の進歩は当たり前で、もうこれ以上の高機能を誰もが求めなくなってきている状態で、「他社と同じような物を出す」のは「価格競争=体力勝負」でしかなくなりつつあります。牛丼チェーンなんかがまさに筆頭ですが。

ならばコンセプトを決める前に必要なのは、「いかに価格競争をしなくて済むか=他がやっていないことをやるか」という現状認識、戦況把握です。そして戦況を把握する際に、自分(たち)の得意な分野、不得意な分野を把握する。まあ戦況把握の一種ですね、の必要がある。

そこから初めて、コンセプトを立て、そこをキッチリ創りこむことで、下流工程での無駄が発生しにくくなるのでしょう。ただシンプルにしろといってもダメで、「どこが上流なのかを認識して、そこから徹底してシンプルにしていく」ことが必要なんだ。

そういえばガンダムの富野監督もコンテ主義だと言っていたしな! 撮影に入ってしまえばどうしようもない問題でも、デスクワークであれば、ひとりのスタッフの労力でも改善が可能だから絶対にコンテの段階で関係者が検討する機会を設けることで完成作品のリスクをひくくするのだ!

で、いい製品を創ることで、社員の士気は上がり会社の雰囲気はよくなり良い人材が入ってくる循環にも入る可能性が出てくるのだろう。それもすべては上流工程でキッチリやっていった上での話です。

というようなところに僕はうーむと唸りましたが他にも色々書いてあったので気になるようなら読むべし。