『Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore』はRobin Sloanによって書かれ、2012年の10月に発売された小説。
どこで評判を知ったのだか忘れてしまったのだが、売れに売れまくっている本で、英語の読書メーターみたいなサイトの感想には「まるで村上みたいだ!」というコメントがついていた。村上なのか……それに売れまくっているのなら読んでみようかな、本屋の話みたいだし、と思って手にとってみたのだが、これが結構面白かった。*1
失職中のクレイという男が、職を探して日々を過ごしているところに、Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstoreという本屋が張り紙で職を募集しているのを発見する。中に入って、まさにそのPenumbraさんと出会い、職を申し込み、採用される。24時間営業の古本屋なんて日本にもそうないだろうが、夜勤で、ほとんど客がこない時間帯の店番を任されるので(当然一人)なんだか異常に暇そうだ(だが羨ましい)
で、まあいろいろある。かわいいGoogle勤務のハッカーな女の子がバス待ちで訪ねてきていい感じの関係になったりする。テクノロジーはどんどん進んで今やKindleで容易く本が買える時代である。日本よりも米国の方がその状況は進展している。テクノロジーの進歩と、変わらない古臭い本屋。変わっていくものもあれば変わらないものもある。そうしたことを郷愁とか抜きにしてプロットの中に強引に組み込んで魅せていくことになる。
なんかそんな感じで、しんみりとした筆致で進んでいくのかとおもいきや黒のローブを着て集まる怪しい集団は出てくるわ、そいつらが秘匿していて暗号化されていて、解読したら不死を手に入れられるとする謎の本が出てくるわで「え、え、そういう話なの??」と途中で驚いてしまった。暗号を解読していく過程、不死を追い求めるミステリィの部分は歴史的事実を元にしている点や秘密結社が関わってくることなどがダヴィンチ・コードを彷彿とさせる。
Googleという場所も重要になる。そもそも主人公であるクレイも元の職はウェブデザイナーであって、そこそこのプログラミング能力は持っているのだが、Google勤務の彼女と連達、ときにはGoogleの社員たちに協力を仰いで暗号解読に勤しんでいく。日常的に使いこなされるテクノロジー(Google Map Skype スキャナ、3D化ソフトなどなど)、謎解きミステリィと、アドベンチャー、そしてノスタルジックな部分がごたまぜになっている。
しかしごたまぜになっていながらも、本を読むことへの愛、そして変わっていく環境と、それでも変わらないものがあることを本書は教えてくれる。
日本で古本屋といえば、今では『ビブリア古書堂』が大人気だが、本に対する熱い思いは米国だって変わらないのだ。紙の本を絶賛するわけでもない、Kindleを普通に受け入れられる人間ならば、本書の価値観にすんなり入っていって、存分に楽しむことができるだろう。the right book exactly,at exactly the right time
After that, walking fast down a dark lonely street. Quick steps and hard breathing.
all wonder and need. A bell above a door and the tinkle it makes.A Clerk and a ladder and warm golden light. and then:the right book exactly, at exactly the right time.
Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore
- 作者: Robin Sloan
- 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux (T)
- 発売日: 2012/10/02
- メディア: ハードカバー
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