あまりに美しい、誰もがその存在を強烈に意識せざるを得ないような類の個人がいたとしたら──当人も、周りの人たちも多かれ少なかれその力に影響されるだろう。本書は森博嗣氏による最新長編だがまあ概ねそういう話であったとぼかしながら最低限の説明を試みてみる。本書についてはそう多く書かずに、まあ軽く読み終えた時の印象を書くぐらいにしておこう。
端的にいえばたいへん面白く読んだ。説明は丁寧で客観的であり非常にすっきりして、シンプルである。かといって読んでいる間はそうでもなく、ずいぶんとあーでもないこーでもないと揺れ動くことになるだろう。プロット的な面でも、心情的な面でも。
そうした不安定な状態がとても素晴らしく、素敵なところだ。氏の長編の中では今までないタイプの作品で(まあ新シリーズや単発ものかつ、講談社以外の場合は大抵そうなのだが)そうした振れ幅の大きさが魅力でもある。たとえば今回は舞台がフランスだ。それだけでけっこうわくわくしてしまう。いったいどのようにフランスで起こる物語を書くのか?
楽しく、またすっきりとした良い一冊だった。これだからファンが辞められない。※なんと凄いことに発売と同日にKindle版が出ているみたいです。わお。これが当たり前になってほしい。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/06/27
- メディア: 単行本
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