基本読書

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大人の遊びの本気『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた: 実録なつのロケット団』 by あさりよしとお

大人が本気で遊ぶとこうなるんだぜ!! という見本。著者のあさりよしとお氏は漫画家で、なつのロケット団は衛星エンジニアである野田篤司を中心として発足したグループ。あの堀江貴文さんやSF作家の笹本祐一さんが所属している。目的は宇宙にいく! そのためにはロケットを創る必要がある! ということでロケットをつくるためにまずエンジンから作ろうぜ、ほぼゼロから自作しようという熱い男たちの集団である。

僕はもともとSFや宇宙ネタが好きだったから野田篤司さんや笹本祐一さんがめちゃくちゃ楽しそうになんだか変なグループでロケットを作っているらしいというのは知っていたが、その内実はほとんど知らなかった。本書を読んで「うわあ、こんな楽しそうなことやっていたのかあ!!!」と初めて気がついたのだ。というわけで本書はグループの一員であるあさりよしとお氏が書いた「なつのロケット団奮闘記」である。

もうねー、本気も本気、楽しくて仕方がない、という喜びが製作記のはしばしから伝わってきて読んでいて嬉しくなってきてしまう。液体窒素とエタノールを混合させ燃焼させる。ゴオオオオオオオ!!と炎が吹き上がって燃えればやったー!! と歓声をあげ、問題が発生すればなんでだなんでだと解決策をみんなで考えていく。手探り状態で未知へと突入していく楽しさに満ち溢れているのだ。

本だけじゃなくて、なつのロケット団のメンバーのTwitterなんかを見てもめちゃくちゃ楽しいのが明らか。とにかく楽しく貪欲に向き合っている。しかしエンジンから自作なんてうまくいきっこない、と思ってしまうが、着々と失敗に立ち向かい、エンジンの制作を進めついにロケットの打ち上げ実験の成功までこぎつけているのだから凄まじい。SNS株式会社公式サイト : 小型液体燃料ロケット「すずかぜ」打上実験に成功

大人の遊びなんて、時間がない、家族が〜といって散り散りになる世の中だが、1997年になつのロケット団の原型がスタートして以後、堀江貴文さんの逮捕なども経ながらよくもここまで着実に進んできたものだ。そして大人が遊ぶとこれだけのことができるんだぞ!! という大人の意地を魅せつけている。日本の大人といえば毎日残業が〜とか仕事が〜といって全然楽しく見えないのが嫌なところだけど、金と能力を持った大人が集まればこんな楽しそうなことができるのだ。

 だが、この道にゴールがないことを我々は知っている。分かりやすい目印は、暫定の目標にすぎない。やるべきことは、ただひたすら前へ進むことだけだ。
 などと書くと悲壮な決意のようにも聞こえるが、実際は「ロケット作らない?」「やりましょう!」からこっち、ずーっと文化祭前夜のヒャッハーな高揚感が続いている

もちろんロケット制作においては本職のエンジニアである野田篤司さんがいたのは大きい。最初の方は野田篤司さんが中心となって計画を立て、技術的な設計をし、メンバを集め、と八面六臂の活躍だったことが本書でも語られる。僕は野田さんを直接見たことがあるけれども、ものすごくエネルギーに満ち溢れた博識な人で、考え方、発想の幅が広く見ているだけで圧倒されてしまう人だった。

普通実験に失敗して爆発炎上なんかしたらもうだめだーと諦めそうなものだけど、わくわくしながら原因究明にあたって改善を加えていこうとするメンバーばかりだ。本気になった大人ってのはすげえなってのを実感させてくれる一冊だった。

宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた: 実録なつのロケット団 (学研科学選書)

宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた: 実録なつのロケット団 (学研科学選書)