基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ものづくりSFという分類があるなあと思った話

雑記。ものづくりSFという分類がありえるなあと『深紅の碑文』を読んでいて思った。まだまだ読み途中なのだけど、作中で子供たちが小型の衛星を地球周回軌道に乗せるミニロケットというとんでもないシロモノをつくる場面がある。設計と、費用と、発射場と、ミスったときのフォローなども含めて段取りを進めていきついにこれは成功する。それは当然問題のない描写だ。なにもひっかからなかった。深紅の碑文という大物語の中に存在するひとつのサブエピソードだからだ。ちなみにまだ読み途中だけど既に傑作の予感。

ただこれを読んでいる時に、成功する段取りを整える⇒結果(成功にせよ失敗にせよ)という描写とはまったく違った、設計⇒試行⇒修正⇒試行⇒修正⇒試行……といった感じで延々とものづくりの描写を続けていくSFもあるなと思った。それはたとえば『この正解の分からない混沌が、私は好きだった。──『富士学校まめたん研究分室』 by 芝村裕吏 - 基本読書』だし『魂の駆動体 神林長平 - 基本読書』だったりする。

人間の構成物質が60kgの人間を対象にしたとき水39.6kg、タンパク質9.6kg、脂質8.1kg、灯質0.3kg、無機質2.4kgでできているからといってそれを集めたら手のひらをぱんと地面にあてて人間を錬成できるわけではなく、材料や状況を整えてもそこには度重なる失敗のステップがある。現代で大人がやっても失敗ばかりだ。大人の遊びの本気『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた: 実録なつのロケット団』 by あさりよしとお - 基本読書 

だからなんだというつもりもなく、記事名通り、あるなあと思っただけで。しかしそうした設計をして、それを実際に現実に現出させ活用できるまでの苦闘を書いた作品が好きで、たくさん読みたいなあと思った。僕が宇宙開発系や探査機の本ばかり漁ってしまうのも、そうした未知の分野へのものづくりの面白さに惹かれ続けているからかもしれない

なのでなんかこう、架空の機械だかなんだかをつくろうとしていくハードSF的なノリの失敗だらけのものづくりSFとかありませんかね。贅沢をいうようだが谷甲州的なのはちょっと違うような気がするんだよなあ。だいぶ近くはあるんだけど。