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エネルギーを選びなおす (岩波新書) by 小澤祥司

良書。エネルギーというのはないと生活が維持できない。それをいかにして持続的に活用できる形にしていくのかはどこの国でも最重要課題である。特に日本では現状原発の件もあるしね。

本書で面白かったのはまさに「選びなおす」という点であって、原発問題からかエネルギーのうち「電気」にしか焦点が当たっていない現状を憂いているところにある。憂いているというか、もっといろいろあるだろ? 森林だってあるし、風力だって水力だってあるしさあと多様なエネルギー戦略を紹介してくれる。国におけるエネルギー消費において、電気はそれほど多いわけではないからだ。

大量生産、大量消費、大量廃棄が一般的になっている現在だがその過程でムダになっているエネルギーは多い。エネルギーは実際に使える形への変換や送付にエネルギーロスがどうしても発生する上に、実際にパソコンやテレビといった電気機具は恐ろしく効率の悪い変換しか現状のところできない。たとえば白熱電球など電気のエネルギーのうち6%しか光に変換できていないのだ。実際に使われるエネルギーは投入されたエネルギー量に比べると三分の一程度しかないという。

省エネといえばこの残った三分の一、投入したエネルギーのうち33%をなんとか節約しましょうという話だが他に考えるべきところがいくらでもあることがわかるだろう。いくらこまめに電気を消したり、ストーブを消したりシてもせいぜい33%のうちの数パーセントを削減できるぐらいだ。そもそも大量に投入しているエネルギーを減らせという意味でもあるし、三分の二の消失しているエネルギーをなんとか使える形で効率よく運用することだって目的とすべきだろう。

これから先世界的に人口はしばらく増えるわ、かといって資源はいつかはなくなるわでエネルギー確保は競争が激しくなっていくだろう。自然エネルギーの効率のいい取得ができるようになればいいが、乗り越えなければいけない技術的課題はまだまだ多い。そこに至るまでに省エネルギー、機器・発電効率の効率化、廃熱の利用といった「エネルギーをうまく回す仕組み」をつくりあげていくことができれば必要なエネルギー供給は四割程度に減らすことも不可能ではないと本書ではいう。

そもそも大量生産大量消費といったムダが多すぎる仕組みを変更すべきだなんだのと考えるべきポイントはいくらでもあるけれど、大雑把にわけると次の3つだろう。1.根本的な必要エネルギーを減少させる策。2.最終消費へと至るまでの変換時のロスを出来る限り少なくする策。3.最終的なアウトプットとしてのエネルギーを減少させる策。これにプラスして自然エネルギーなどの持続可能なエネルギーを補助的に、次第にメインへと据えて活用していく何百年単位先を見据えた「絵」を書けるかどうかが重要だ。

視点をできるかぎり広くとることが最終的に一番効率がいいシステムを作り上げるためには必要不可欠だ。現状利権や省庁の違いなどつまらない問題で難しいのが残念でならないが、一度大きな視点で捉え直すには良い一冊だった。

エネルギーを選びなおす (岩波新書)

エネルギーを選びなおす (岩波新書)