基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2014オールタイム・ベストSF(検討中)

ハヤカワ・オンライン|早川書房のミステリ・SF・ノンフィクション:新着ニュース

早川がオールタイム・ベストSFアンケートというものをやっている。今まで一回も選んだことがなかったのでこの機会に一度選んでおこう。順位付けと五作に絞るのが難しくていったんやめようかとおもっていたが全部同点、また全部埋めなくてもいいというので、ひとまず選んでみた。

ルールは要点だけまとめるとこうだろうか。「国内で発表されたものに限る」「シリーズものの場合、シリーズに含まれる長篇およびシリーズ自体のどちらも独立した長篇とみなす」もちろん全部うめなくてもよく、ベスト3でもいいし海外長編とか短編とか、選ばなくてもいい。まあそうはいっても枠が用意されているとついつい考えてみたくなるもので今回は一応全部埋めておいた。

応募はメールでも可だ。締め切りは25日らしいので投票を考えている人はお早めにね。さて、そのまま応募すると忘れてしまいそうなのでブログにも一応残しておく。まだ順位も決めていない上に、五作品に選びきれていないところがあるのでまだ仮リストだけど。まだこれから先思い出すかもしれないし。

以下の6部門にご投票ください。
1、国内長篇ベスト5
2、国内短篇ベスト5
3、国内作家ベスト5
4、海外長篇ベスト5
5、海外短篇ベスト5
6、海外作家ベスト5

1、国内長篇ベスト5

火星三部作(あなたの魂に安らぎあれ、帝王の殻、膚の下) by 神林長平
・グラン・ヴァカンス by 飛浩隆
日本沈没 or 時の流れの果てに by 小松左京
⇒どっちかを選ぶのは無理だ。
・ハーモニー by 伊藤計劃
⇒これを入れるかどうかなあ、微妙だなあ……
⇒マインド・イーター by 水見稜 を個人的に入れたいなあ。
・天冥の標シリーズ by 小川一水

「面白い」長編というのはいくらでもある。笑って、泣いて、あるいは鬱屈した気分になって、なんらかの意味で楽しめるものは。でもそこを超えてくる作品というものもこの世にはあって、上にあげたベスト群はそうした作品。火星三部作、というか『膚の下』は順位をつけるとしても1番の作品。小松左京飛浩隆神林長平は日本最大級の「日本に生まれてよかった」案件だ。この三人の文章の作品を日本語で読めるんだから、こんなに嬉しいことはない。

2、国内短篇ベスト5

・これはペンです by 円城塔
・酔歩する男 by 小林泰三
・ラギッド・ガール by 飛浩隆
・おれはミサイル by 秋山瑞人
・太陽の簒奪者 by 野尻抱介

短編は飛浩隆のラギッド・ガールが突き抜けていい。一文一文石に彫りつけたかの如くのピンと張り詰めた文章で、極々短い文章なのに、この短編を読むだけで1時間以上かかるぐらいだ。読みなおしてもその文章の歪みなさと、その文章がみせてくる情景には圧倒されるものがある。間違いなく国内のSFでは最高水準だと思う。次点は円城塔で、これはもう鉄板。文章のうまさみたいなものは訓練可能なのは「整えるところ」までで「刺せる」かどうかは天分の領域だと思うけれど、円城塔の文章はこれはもう紛れも無く「刺さる」。

「これはペンです」は円城塔が問い続けている無限回廊のような問いかけがもっとも如実にあらわれている短編だと思う。文章がいくらうまかろうがその描写しているものが牛が排泄をする光景だったりしたらなんにも面白くないが(いや、円城塔村上春樹といった作家だったらそれすらもうまく描いてみせるかもしれないが)、実質文体は装飾であり本質は「どこに目を向けているのか」である。「これはペンです」は「目を向けた先」と「その表現」が一致した、本当に凄い短編だった。「これはペンです」に芥川賞が贈られなかったのは今をもって残念でならない。

3、国内作家ベスト5

神林長平
小松左京
飛浩隆
小川一水
筒井康隆

長編ベストに筒井康隆作品を入れられなかったけど作家ベストに入れないわけにはいかない。正直言って作品単体でいうと長編であげたものにくらべると「SFとしては」選べなかったのだけど、その圧倒的に縦横無尽な作品群を思うと飛び抜けて異常な作家である。あとは順当な結果に。冲方丁円城塔伊藤計劃といった作家群は大好きな作家群ではあるけれども、泣く泣く除外。

4、海外長篇ベスト5

・輝くもの天より堕ち by ティプトリージュニア
・歴史研究家シリーズ(ドゥームズデイ・ブック犬は勘定に入れません、ブラックアウト、オールクリア) by コニー・ウィリス
・火星年代記 by レイ・ブラッドベリ
スローターハウス5 by カート・ヴォネガット
・竜の卵 by ロバート・L・フォワード

どの作品も個人的な思い入れが強い作品。客観的にいってどうか、というの海外長編ベストではほとんど考えなかった。結局、みんなばらばらの作品傾向になってしまったな。アーサー・C・クラークとかどれも好きなんだけど、どの作品も革新的すぎたかあるいはハードに描写しすぎたせいで陳腐化したところとあとから来た作家が踏襲してアップデートをかけていった作品ばかりで、イメージがどんどん薄れていってしまったかもしれない。ハインラインとかも同様の傾向がある。ハイペリオンを入れようかどうか迷った。しかし、コニー・ウィリスを除けば、古いものばかりだなあ。

5、海外短篇ベスト5

たったひとつの冴えたやりかた」/ティプトリージュニア
・あなたの人生の物語/テッド・チャン
・ボーダー・ガード/グレッグ・イーガン
・デス博士の島その他の物語/ジーン・ウルフ
・塵戦/グレッグ・ベア

どれもメジャー所になってしまってイーガンだけちょっとズラしてしまった。いやあ、これ好きなんだよね、ボーダー・ガード。たったひとつの冴えたやりかたは今読むと別になんてことのないありふれた短編という評価になってしまいそうなんだけど、でもあのスピード感とまとめ方は凄いし、何よりはじめて読んだ時の興奮が未だに忘れられない。デス博士の島の〜は選ばざるをえない卑怯な短編。長編組とほとんどかぶってないな。

6、海外作家ベスト5

コニー・ウィリス
グレッグ・イーガン
ティプトリージュニア
レイ・ブラッドベリ
スタニスワフ・レム

これまた意外性もなにもないけどまあいいよね。スタニスワフ・レムは長編にも短編にも入れていないけど全体的な傾向として好きな作家なのだ。ミエヴィルとかバチガルピとか、新しい作家についてはどうも「もうちょっとまとうかな」という気持ちになってしまう。

まとめ

「選択肢の中からいくつかを選抜すること」、選抜の過程それ自体が「その人が何を評価するのか」という感性の表現になっていると思う。だから集計されて、大勢の感性が均されてしまった後の結果、何が何位だったという情報には興味がない(企画全否定だな)。「あの人が何を選んだのか」という方が興味がある。

だからこうやってメールに書いてひっそりと投票しておけばいいものを公表しているので、これを読んだ人で投票しようと思っている人はブログに書くかTwitterに書くか、こっそりとメールで教えてくれると嬉しい。⇒huyukiitoichi@gmail.com

わーい、ありがとう! ⇒2014オールタイム・ベストSFに投票したぜ - すべてはゼロから始めるためにティム・プラットって読んだことないな。

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