2015年9月に冬木糸一が書いたり、読んだりしたもののまとめ記事となります。
近況──これから一年ぐらいかけてやりたいこと。
特に代わり映えのしない日々。故に、書くことがない。それだけではあれなので普段やっていることにプラスしてこれから半年〜一年の間ぐらいにやりたいことリストでもここに書いてみようか。
- ハヤカワ文庫補完計画全レビューを完走し、追記のエッセイを書き上げ、電子書籍として発売して300冊売る。
- 結月ゆかりの現代SF入門を完結させる。
- 非予定調和型エンタメについての文章を書き、電子書籍として発売して売る。
- 洋書で読んでない長篇・ノンフィクションをいっぱい読む
- 興味がある分野の翻訳を行う
下にいくほど優先順位が下がる。ハヤカワ文庫補完計画全レビューはいよいよ半分を超えて完走はできるでしょうというところ。追記のエッセイも書いているけれど、全体として良い内容になりそう。今回の目標冊数は300冊(500円,750円とだんだん値上げさせていく予定)で、このブログの宣伝だけで売るにはちと厳しい冊数ではあるので今回は多少売り方を考えています。
本として売り出す前の助走期間で「こんなことやってます」「いずれ本にします」「企画を募集します」と認知を事前にあげられるだけあげておこうというだけのことですが。早川書房公式アカウントにまで補足されてちょっとうれしかったり。助走をつけていって、発売したあとは中に入っているエッセイなんかをちょこちょこブログで公開しながら回転あげていけば300冊ぐらいならいけるんじゃないかなあと。
電子書籍をどうやって売るのかというのはいろいろ手段があるわけだけれども、結局「何冊売りたいのか」から逆算して考えるのが自分としてはわかりやすくて好きだ。極端な話100万DLしてもらいたいと思ったら電子書籍の普及から始めないといけないだろう。先日又吉直樹さんの『火花』が10万DL超えたと言ってニュースになっていたが、ようは今のところトップがそこなのだ。あれだけ話題になって10万DLなんだだから──と逆算して考えていくことになる。
話題を電子書籍から少し外すと、世の中宣伝に金をかけすぎてゴミみたいなものを必死になって売ろうとしているなと思うことが多い。宣伝に金をかければかけるほど、必死になればなるほど「そんなに売れてないんだな」と思ってしまう。というより、宣伝と効果の明確な相関が見えないままみんな霧の中で大声で自分たちの宣伝を叫んでいる状況が(インターネット広告はまだマシだが)ずっと続いているんだろう。
ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学
- 作者: アレックス・ペントランド,矢野和男,小林啓倫
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2015/09/17
- メディア: 単行本
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「300冊売りたい」とかいう低い目標にたいして長々とする話ではないけれど、最終的には1000、2000といった数をコンスタントに、定期的に出して買ってもらえる小規模ファンコミュニティの形がありえるのではないかという5年〜10年をかけた実験の最初の一手と個人的には捉えている。
人の話を聞いているとメルマガとかサロン的な内容が主流になっていくような気もするけど、公開された形でやりたいんだよね。やりたいことの最後部に「翻訳」も入っているけれど、もう今後は職業翻訳家はペイしなくなってくるであろう翻訳も、電子書籍などの形でなんとか成立させたいし。「1年ぐらいかけてやりたいこと」の話じゃなくなってきたけれどまあそんな感じだ。
ハヤカワ文庫補完計画全レビュー、希望エッセイ募集
そうだ。ここでは書いていなかったので書いておくと、「ハヤカワ文庫補完計画全レビュー」という企画をこのブログでやっております。ハヤカワ文庫補完計画とは早川書房がやっている70周年キャンペーンの一つで、過去の名作・傑作で絶版になってしまっているものを復刊したり、新訳で出しなおしたりを70点やりましょうというものです。それの全レビューをやろうということですね。
最終的に完走できたら電子書籍本にしようと思っているのですが、そこに追記する電子書籍書き下ろしのエッセイ(全レビューはすべてブログで公開するので)で何か「これが知りたい」とか「これを書いてほしい」ということがあればTwitterなり、このブログのコメント欄なりでご連絡いただければ検討いたします※ハヤカワ文庫補完計画70冊の中で最低の1冊は? など。応募してくださった方には豪華特典が……特にありません。ちなみに現時点でほぼ決定しているリスト(エッセイのみ)はこちら。
- はじめに
- なぜはじめようと思ったのか
- 新しい古典が持つ力
- SF、ミステリなどジャンル毎に分け、どんな作品があるのか、何が注目なのかを示すジャンルガイド
- ジャンンル横断的に読むこと
- QA 1.本の読み方、読書術などのある程度網羅的な内容
- ハヤカワ文庫補完計画全レビューを終えて
注目のフィクション
前置きが長くなってしまったけれども2015年9月で注目の新刊といえばもうこれは『ブロの道』以外ない。ロシアの現代作家として著名なウラジミール・ソローキンによる氷三部作のうちの第一作。世界の創世を担った二万三千の光が、1900年前半の地球では人間の中でそうとは知らずにばらばらに暮らしている。あるとき彼らのうちの一人、ブロが凍りに触れることで覚醒し、世界に散らばる二万三千の同類を覚醒させ新たな宇宙の創世を目指すのであった──。
- 作者: ウラジーミル・ソローキン,松下隆志
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/09/28
- メディア: 単行本
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注目のノンフィクション
- 作者: ロジャー・イーカーチ,樋口幸子,片柳佐智子,三宅真砂子
- 出版社/メーカー: インターシフト
- 発売日: 2015/01/24
- メディア: 単行本
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暗くなったらすることがなく、寝るのが早いので人々は基本的に分割睡眠となり、第一の眠りと第二の眠りの間で勉強をする、本を読むなどの時間が入ることになった。今からは想像もつかないほど覆しようのない夜が与えた影響は大きい。その歴史を本書は膨大な量の市井の人々の日記などから丹念に立ち上げていく。圧巻の一作だ。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
注目のフィクション──次点組
そのほかも注目作が目白押しだ。中でも面白かったのは2022年にフランス大統領選でイスラーム系の人物が勝利を飾り、イスラーム政権が誕生し国が一変してしまう状況を描いたミシェル・ウェルベックの『服従』。
- 作者: ミシェルウエルベック,佐藤優,大塚桃
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/09/11
- メディア: 単行本
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- 作者: 會川昇,團夢見,原作=BONES・會川昇
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/09/17
- メディア: 文庫
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注目のノンフィクション──次点組
実をいうとこの9月はめちゃくちゃノンフィクションが面白かった月で年間ベスト級のノンフィクションを4冊も読んでいる。一冊は『失われた夜の歴史』だが、次の三冊もべらぼうにそれぞれまったく違った意味で面白い。
- 作者: アシュリー・バンス,斎藤栄一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/09/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 花村太郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/09/09
- メディア: 文庫
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ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望
- 作者: エヴァン・オズノス,笠井亮平
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2015/07/28
- メディア: 単行本
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何より面白いのは「実態」と同時にそんな圧制下で暮らす人々や、場合によっては逮捕される危険性の中で果敢にジャーナリズム活動を行う人々の苦闘がまるで極上のストーリーのように読み取れるところだ。それでいて無条件の「圧政に立ち向かうヒーロー」としてでなく、外部からみると中国政府に立ち向かう人々をヒーローに見立ててしまうことの危険性も視点として内包している。
アニメ・マンガ・ライトノベル
監獄学園が(アニメは全部はみていないものの)アニメ・マンガ共に面白かった。正直、これはかなり凄い。超常現象は何も起こらないにもかかわらず生きるか死ぬかレベルの緊迫したやりとりが続いていって、しかもそれが「バカバカしい」と笑い飛ばせないレベルで緻密に構築されている。
とてつもない高い演出能力(マンガ)なのはいいんだが話が進むにつれてゴールがどこにも見えないし、監獄学園=脱獄という軸もブレてきてだんだん綻んできているがそれはそれとして演出能力はまったく衰えていないので面白い。マンガがすばらしすぎるのでアニメは厳しいんだけど食らいついているどころか一部分に関しては凌駕していて水島努スゲーと思いました。
ほかはまったくみてない。ガッチャマンクラウズ・インサイト、シャーロット、あたりはなんとかしてみたいなあと思うしだいである。どっちも賛否両論といったところだけど。
これから読む本
『ソーシャル物理学』は半分ぐらい読んだけれども、けっこう面白い。デカイ本は『SATELLITE』といって、人工衛星からのみたさまざまな地上の姿をおさめた写真集だ。これはぺらぺらとめくっているだけで楽しい。こういうのは見ていると「行った気」になるんじゃなくて行きたくなるから困ったところだ。
- 作者: 佐藤健寿
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2015/09/18
- メディア: 大型本
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