基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

アフリカ―資本主義最後のフロンティア

地震で大変なことになっています。

本書『アフリカ―資本主義最後のフロンティア』はNHKで放映した番組の取材班によって書かれた一冊のようです。アフリカの各地、エチオピア、ウガンダ、ケニア、ジンバブエ、などなどに実際に赴き、長期にわたってのインタビュー、実地の声が書かれています。Twitterなどの個人メディアが盛り上がっている今でも、やっぱり、こういう長期かつ広範なパワーを使った取材は、マスコミの力を感じますね。当たり前の話ですが。

アフリカといって多くの人が何を思い浮かべるのはわかりませんが、僕は何にも思い浮かべませんでした(ひでえ)。アフリカっていう単語ぐらいしか知りません。まあ、貧困国があるんだろうな、よくわかんないけど、ぐらいでしたが、本書を読むと割と身近に感じられます。感じられというよりかは、あれかな、むしろ「世界は狭くなったな」とか「今までは関係の無かった場所が、密接に影響を与えるようになってきているんだな」って感じ。

それぐらい、アフリカという地域が資本主義経済に飲み込まれていっているのが、読んでいるとよくわかります。たとえば、テレビで有名なマサイ族が、今では携帯電話を使いこなしているようです。

「2日前、サバンナの真ん中で牛の放牧中に、突然ライオンに出くわしたんです。驚きましたが、とっさに携帯で仲間に助けを求めました。すると、村の男たちが総出で武器を持って駆けつけて、ライオンを追い払ってくれました。携帯電話がなかったら、牛は食べられていたでしょうね。本当に役にたっていますよ。」*1

うーむ凄い。有名な、アフリカかどこかの貧困国で、靴を売るとした時に、「こいつらみんな裸足で歩いているのに靴なんか必要とするわけないだろ」という冷めた見方と「誰も靴を履いてないなんて、凄い市場だ!」というむしろそこに市場を見出す見方の違いに着目した話がありますが。

「何もないからこそ巨大なビジネスチャンスがある」そういう視点でみるとアフリカは確かに「資本主義最後のフロンティア」なのですよね。実例として、第三章「中国企業アフリカ進出最前線」では、中国が国を挙げてアフリカに形態の中継基地を建てまくっているという状況がレポートされていて、アフリカがグローバル経済の波にのまれていることが実感できる。

また第四章「地下資源はアフリカを幸福にするのか」では、豊富な地下資源を有するアフリカが、豊かなアフリカに行く為にはどうすればいいのかを考える為の一項になっていると思います。地下資源があるなら苦には豊かになるのではないか、というのは短絡的な思考で、実際には「資源の呪い」とでも言うべき悲惨な状況に至ることがあります。

資源があっても国の取り分が少なく、搾取されるだけであったり、資源の取り分を上層部だけが独占しようとして汚職がはびこったり、それを羨んだ市民の反乱、紛争が起こったり。このような呪いに対抗する方法は、僕は基本的には一つしかないと思う。それは、他国に頼らずに、自分たちだけでなんとかやっていく方法を探ること。資源がなくなっても、他国が何らかの理由で資源を必要としなくなってもやっていけるようにすること。

これを実践しているのがボツワナのダイヤ産業。ボツワナは最初は単なる資源産出国として豊かになったが、今はそこから脱出しようとしている。具体的には、ダイヤの原石を研磨し、商品に加工するところまでを自国で行う事によって、ダイヤがなくなった時でもやっていけるだけの産業を自国に起こそうとしている。

「私たちは、"アフリカの資源"が他の地域に出て行く前に、"アフリカの国"によって流通して行くという仕組みを作りたかったんです。その思いは、我々の資源を取り戻そう、という言葉で説明できます」*2

最後に思い付いたことを書いておこう。

著者は、「がむしゃらに働いたお金を教育に使って、子供たちの未来を開いてやりたい」と語るアフリカの未来に希望を見るトラック運転手の言葉に対してちょっとうらやましく思った、とコメントしている。今の日本にはないものだからそう思ったのだろうが、しかし今の日本こそが、アフリカの人たちが希望を持って目指している姿だろう。

豊かになった先にあるのは、「豊かになったのはいいけど、そのあとは何を目指せばいいの……?」という当惑であるように、今の日本を見ていると思う。でもだからこそ、僕たちはアフリカの人たちが目指して良かったと思える態度をしめさなければならない、と思った。

ちなみに琥珀色の戯言のfujiponさんの記事を一秒だけちらっとみて面白そうだったので読みました! 記事はこれから読みます!アフリカ―資本主義最後のフロンティア - 琥珀色の戯言

アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)

アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)

*1:p.21

*2:p.170