基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

女子大生会計士の事件簿 山田真哉

あらすじ
一つひとつの話が独立している。短編集としても成立。
監査ファイル1
裏金の話
監査ファイル2
金を詐欺的にぶんどられようとするのを、阻止する話
監査ファイル3
商品のシール千枚集めたら十万円などという愚かな作戦を行って破滅しそうな会社を救う話
監査ファイル4
恋は盲目、という話
監査ファイル5
SFC(特別目的会社)の話



感想 ネタバレ無


タイトルからして、会計士があなたを、犯人です!と推理していく話かと思っていたら全然違った。ミステリー的な要素はあるけれど、別にミステリーというわけではないなぁ。

特に最初の3つの話は、よくまとまってはいるものの、やはり小説というよりもビジネス書よりの小説という感じである。なんというかこぎれいにまとまりすぎていて、まるで進研ゼミについてくる漫画を読んでいるような感覚であった。

それか教科書についてくるおにーさんとおねーさんが会話してわかりやすく解説してくれます、というヤツか。

というか元々そっちを想定して書いているのだろうから、小説的な要素を求めるのはあまり適切ではないのかもしれない。場面描写もほとんどないし、ほぼ会話だけで進められる。ただ、4つめと5つめはある程度小説としても楽しめる内容になっていたように感じた。これが進化したというのかはたまたちょっとした方針の転換というのかはわからないけれども、これはこれでなかなか面白い。

何より重要なのは、思いのほかわかりやすいという事。別にじっくり読んだわけでもないのに、なんだかわかったような気にさせられてしまう。ワトスンを彷彿とさせる柿本と、十分な能力をもった萌実のホームズのような二人の伝統的な関係は解説という点でいえばこれ以上ない組み合わせだろう。



ネタバレ有


監査ファイル1
裏金はどうやって作られるのか、という話。
今回は通信費という名目で切手を大量に買って、それを別の場所でそのまま売り払って裏金を作るーというやり方であったが、これもなかなか奥が深そうな話である。意外と盲点という点を探せば簡単に出来るもんだ、裏金・・・・。

監査ファイル2
債務保証、商法の話。
なんかよく理解出来なかったけど(さっき理解できたって書いたのは嘘か)理解出来なかったというよりも書くにはちょっとめんどくさい・・・からスルーだな。うまい話には罠がある、ということで。

「今回は私の完敗だ。それにしても、お前は一体何者なのだ?」
帰り際、和気さんは萌さんに言った。
「えっ私? 私はただのかわいい女子大生よ」


お前は一体何者なのだ?なんていうセリフが現実に飛び出すような場面はいったいどんな場面なのだろうと想像せずにはいられない。しかしこの女子大生という設定に何か意味はあるのだろうか・・・? 別に女子大生じゃなくてもいいとおもうのだが・・・

監査ファイル3
商品のシール千枚集めたら十万円などという愚かな作戦を行って破滅しそうな会社を救う話 なんだが千枚集めた人間が千二百人も現れてしまい、一億二千万も払わなくてはいけなくなってしまう話。
なんか冗談でしたー☆とかいって逃げたくなるような話だが、実際そうもいかないのだろうか。千二百人もいたら法的に訴えられそうだしな。

監査ファイル4
社長に惚れた男が売上が落ちたら社長が悲しむと思い無理やり売上をあげていた話。
しかしこれもまたある意味ベタベタな話やな。しかし小説的に楽しめるようになっていた、そうすると会計的な要素が印象に残らないのは、なんとも難しい話だと思う。具体的に会計的な要素を書くと、ペーパーカンパニーをいくつか作っておいて、そのペーパーカンパニーに家具を売りまた買い戻すという手法で売上高の水増しを行うというそんな話

監査ファイル5
これは会計的な面白さがよく出ていた話だったように思う。
銀行借入のない無借金経営をしている事が評価されて株価があがっている会社が、実はSFC(特別目的会社)を利用して借金をしているという話
SFCが銀行からお金を借り、そのお金を本社に渡し、また本社から借金した分をSFCに渡す、と。かなり簡単にしてしまえる話だ。