基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

終わりなき戦い ジョー・ホールドマン


あらすじ

戦いがおわんねぇー


感想 ネタバレ無

基本的にマンデラという大戦を最初から最後まで経験した人間を中心にすえて話を展開していく。

作者がまえがきに書いてあるとおりに、戦争の内容、小道具その他全ては現代とは似ても似つかないSF的要素で塗り固められている反面、精神的な面では、戦争経験者である作者のなまなましい感覚が描写されている。

フィクションという楽しみを併せ持ちながら、戦争体験者の悲惨なエッセイを読んだ気にもさせてくれるところが凄い。しかもそれを意図的にやろうとするとなかなかバランスというものが厳しいのではないかと思うが、そのあたり、意図してやったような意図してやっていないような、まぁ面白いことに変わりはない。

序盤はなんかだらだらとして進まなかったような気がする。というか200ページぐらい読んで放置していたのだが、後半から面白いとの指摘を受けて読んだらこれがびっくり面白かった。Dクラッカーズ以来の衝撃といえるだろう。

原因がよくわからないのだが、少しだけ分析すると多分前半の描写のほとんどが訓練シーンだったからだな。いきなりドラゴンボールでゴクウが重力10倍の中で修行してるシーンをみせられた感じだったのかも知れん。

人がなかなか死ななくなった未来の社会制度の話とか、割とどっかで見たような設定も多いがなかなか面白い。どうも傾向がかたよるのは、その結論に容易にいきつくからだろうか。



ネタバレ有

マンデラ二等兵から始まり、マンデラ少佐で終わるまでに何百年もたっているのを考えると感慨深いものを読み終わった時に感じる。一世代のみにも関わらず長大なグラース・サーガになっている。(グラース・サーガの意味わかんないで使ってる)

「今夜は、音をたてずに人を殺す八つの方法を教授する」


この文で始まるわけだが、この始まり方はなかなかの名作であるといってもいいかもしれない。冒頭を全部書くのは意味がないからしないが、戦争の最中にあって、しかも精神的にひどい状態であることが冒頭の三行で伝わってくる。
いきなりセックス描写が大量にあるが、それは最後まで続く。何か書こうと思ったけど文庫版の解説の人と同じようなことしか書けそうにないので自重。

この本の中では、人が死ななくなった結果、人口増大が抑えきれなくなり、自殺者は推奨されるようになり、同性愛も推奨されるようになる。さらにそれでも人口が抑えられなくなると70歳以上の人間に関して、レベル1〜3まで振り分けられ今までの社会貢献度が高い人間は治療が受けられ反対にふつうに生きてきた人間は治療が受けられないという事態に陥る。
同性愛が推奨されるようになる世界というのは、同性愛者にとってみればやった!という感じだろうが異性愛者はどうだろうか。 
と思ったが異性愛者はこれまで道理に異性を愛せばいいわけで何の問題もない。
結果的に遺伝子改造かなんかでほとんどの人類が同性愛者になってしまうわけだが、こうなってしまうともうどうでもいいだろう。異常な人間しかいないところに正常な人間が迷い込んだら異常なのは正常な人間なのだ理論だ。

しかしこの社会制度というのは、オーソドックスすぎるというものだろう。ゆえにこのオーソドックスさを未来SF社会制度基礎理論としよう(適当)

高校の生物の時間に習った昔ながらの実験は、どういうやつだったろう? 一匹のプラナリアに迷路の中を泳ぐ方法を教える。そしてそいつをすりつぶし、泳ぎ方を知らない別のプラナリアに喰わせる。なんと! そのプラナリアも迷路を泳げるようになるのだ。
おれはまずーい少将を口いっぱい頬ばらされた。


げぇぇぇー!まじかよものすげーなプラナリア・・・・。ちょっと調べてみたけれど、上の実験のことは書いてないなぁ。ネットでちょろっと調べただけだが。
しかしここでその例を持ってくるのはなかなかすごいな。リアルに想像してしまう。
プラナリア食ったらプラナリアの知識増えるって能力漫画ににたようなのがよく出現するが元祖はプラナリアだったとは。

エピローグ
メアリイゲイはマンデラを待ち続け、二人ははれて結婚して子供も産みましためでたしめでたし。

しかしこのエピローグ、都合がよすぎだろうといってしまえばそれまでだが、まぁハリウッド版のパトラッシュも物凄い勢いでハッピーエンドに改編されるこの世の中、マンデラはこの先ひとりっきりで過ごしましたーなんていう終わり方じゃあ締まらないというところか。
あまりにも救いがなさすぎるからな。報われない物語には一筋に救済を。