基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

カフカ寓話集/フランツ・カフカ

あらすじ
寓話集

感想 ネタバレ無

カフカ面白いなぁ。

短いのだと、一ページにも満たないのがいくつかあるのだが、どれもが面白い。意味がわからないのもたくさんある。でも面白い。

長編の一部を抜き出したかのように、途中で突然話が終わるのもあれば、ちゃんと終わるのもある。一番長い短編で50Pぐらいか。あとはほとんど、5Pぐらいで終わるものばかりでサクサク読み進められる。

なんというか、ヘッセのように主題を全面に押し出して、深いテーマ性と文章で読ませるというよりも、心の中の闇を書いたというか。自分の内部に深く沈みこんでいくような作品ばかりだ。

だから格言のようなものも、ほとんどなく、ただ淡々と人の黒さというか、そういうものを書いていくだけといった感覚で読んでいた。星新一でも読むような感覚で。

一見ファンタジーのような、虫が人間のように喋ったりなどの内容も、人の精神の動きを、わかりやすく他の動物の行為にたとえて書いているだけで、その本質は自分との対話だろう。

何より、文章がキレイだ。すっきりしている。訳のおかげかもしれない。読んでいて何の苦もない。自然と入り込んでいける。なにものにも阻害されることなく、読んでいて、ああ、そうなんだな、と納得できるような、そんな文章だ。

ほとんどの作品に、会話があまり出てこない。ほとんど地の文だ。だけれど、止まることなく読み続ける事が出来る。気がついたら読み終わっている。そんな感じ。

ネタバレ有

ある学会報告は、人間並みの知能を獲得した猿の話だが、猿がクールにふるまって学会報告をするなど、それだけでシュールだ。
それも、猿以外全くセリフとして出てこないので、完全に独白である。あまりにも落ち着いていて、さるが語っているなどと全く想像できないが、いったんでも想像すると笑いそうになる。

どんな深い内容があるかはともかくとして、シュールだ。笑える。何か読み方が違うような気がする。

文章があまりにもうまくて、いつかまたちょっと思い返す時のために、ここに全部書き記しておきたいぐらいなのだけれども、そんな事したら速効で消されてしまうし、かといって一部を書き記すにしても一体全体どこを抜擢しろというのか。
あまりにも全体として統一されているがゆえに、一部を抜き出すというのが非常に難しい。

メシアの到来

 メシアはやってくるだろう──信仰に対する徹底した個人主義が実現した暁には、もはやだれひとり、その実現を阻害せず、だれもが疎外を容赦しない。つまるところ墓が開く暁にやってくる。個人主義の手本を実際に示して見せ、かつは個人のなかの仲介者を復活させるという象徴において示す点で、これはキリスト教の説くところでもあるはずだ。

 メシアはやってくるだろう──もはや必要なくなったときに。到来の日より一日遅れてやってくる。最後の日ではなく、とどのつまり、いまわのきわにやってくる。


要するに、もうどうしようもなくなったときにやぁ助けに来たよ、とやってくるわけですね、死んじゃえ

というかやはりこれは買わなければならないだろう。またいつかフラっと読みたくなるに違いないのだ。図書館で借りてきて満足しているようではだめなのだ。
短いというのもいい。すぐに読み終わる事が出来る。
おもえば昔から、いい本は短かったような気がしなくもない。
と思ったが全然そんなことなかった。
でも星の王子様は良かったな。

巣穴
まるっきり強迫観念に取りつかれた人間の話にしか思えない。これもまた独白でずっと続くわけだけれど、何もかもが恐ろしくて、どんなに入念に準備してもまだ恐ろしいという強迫観念にとりつかれた精神病者の話としてしか読めなかった。あるいは別の人は別の読み方があるかもしれない。
その読み方があったら、聞いてみたいものだ。本当に多種多様な読み方があると思う。
広いのか、それとも深いのか。
どちらかはわからないが・・・。語り合いたいものだなぁ。

なんというか、どの作品も語りたいのだけれども、いざ語ろうとすると、はてさて、どうやって語ったものかと首をかしげてしまうような作品ばかりだ。これはこうだ!という明確な答えなんて、もちろん本に関してはほとんどないのだけれども、それにしてもカフカのとらえどころのなさというのはひどい。
何か書いたら、書いたはしから全部うそっぱちになっていってしまうような、そんな非情さがある。

何でも書きたいけど、書けない。たとえば小さな女だが、変身や他のカフカの作品にみられるように、何とかっていうのかしらないけど(なんか難しい用語があったような気がする)何でこうなっているのか、というのが全く説明されていないものの、小さな女がある男の事を病的なほどに嫌っているというのがわかる。

これについて嫌いっていう感情が生まれてくるっていうことは、好きになる可能性もある、少なくとも全く眼中にないよりはマシだ、ひょっとしたら小さな女というのは、男というのが好きなのではないか、というような考え方も出来るし、はたまた美術作品が人に感動を与える作り方、たとえばある一点、目立つ部分を常識では考えられないぐらいに強調して他人に見せるやり方、をマネしているように、嫌いという感情を爆発させたらどうなるか、という事を単に書いているだけだというような見方もできるような気がする。

なんというか、説明がほとんどなされていないうえに、突然終わるので謎しか残らないといった感じなのだ。だから何でも解釈できる。

つまりこの他の作品についても何か書けない。書きたくない。