基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

カラフル/森絵都

あらすじ
死んだが、抽選にあたって、人生をもう一回やりなおさせてもらったが、魂を入れてもらった身体はなかなかひどい状況だという話。

感想 ネタバレ無

いやいや、しかしこれはなんだ。思ったよりずっと面白かったな。物凄い簡単な文章でまるでライトノベルのようだと思ったが。あれだな、だがカラフルというタイトルなのに、カバーがまっ黄色なのはどういうことなのかと、読み終わった時に思わず突っ込んでしまった。何でやねん。黄色と白と黒しか使われないじゃないか。

批判しようと思ったら氷菓の批判がそのまま当てはまるような気もするのだが、面白かったと感じるのはこれ単に、相性の問題なのだろうか。

それにしても重い話がポンポンと飛び出てくる物の、なんとも軽いタッチで次々とかわしていくのはある種気持ちいいものがある。星々のように、いちいち真に受けて暗くなっていく展開も好きだけれども、こっちも好きだ。

ひとつ問題点としては、最終的に、結局人間みんないい人なんだよ、というような、そんなノリで終わる作品を、作品としては受け入れられてもなかなか現実的には受け入れられない心情になってきた。

簡単にというつもりはないが、改心するシーンなどがあるだけで、どうにも反抗心がむくむくと起き上がってきてしまう。人間そんなに簡単に改心したりしねーよ、と。

それでも面白かった事には変わりがない。一気に読んでしまった。最後のオチはなんだかどっかで見たことのあるような、ふーんというような平凡さをもっていたけれど、それ以外ないというような、気持ちのいいオチだ。

ネタバレ有

お母さんが、そんな簡単に今までの事を悔やんだりして、あなたの気持ちがわからなかったーなんていって改心するのは、白けたといえば白けた。
そういう意味では最後まで変わらなかったひろかなどのキャラクターはよかったといえなくもないが、何かひろかはひろかで怖いもんだ。まぁこんな人格破綻したような人間じゃないと、売春なんてテーマどん底まで暗くなるしかないのだろうけれども。

「・・・いろんな絵の具を持っているんだ、きれいな色も、汚い色も。この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷っている。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。」

ときには目のくらむほどカラフルなあの世界。
あの極彩色の渦にもどろう。
あそこでみんなと一緒に色まみれになって生きていこう。
たとえそれがなんのためだかわからなくても──。


主人公の特性というか、抱えている悩みみたいなのは、本来誰にだって当てはまるものだから、普遍的すぎる。主人公だけの悩み、みたいに書かれている部分があるけれど、誰だってもってる悩みだ。

要約してしまうといろんな人間がいて、強そうに見える人間も弱そうに見える人間もみんなみんな悩みとかを持ってるんだよ、というような事を言っていたような。それにしても上みたいに、こんなにカラフルを強調してるのに何で表紙がまっ黄色なんだよ、ありえないだろーもっとカラフルな表紙にしろよ!

短いから、人間が薄っぺらく思えてしまうのも、しょうがない事だろう。ひろかとか、ここに書いてある事だけを読めばただのおかしい女だし、唱子もまるでストーカーだし。

何故生きてるのか、なんて常日頃から考えなきゃいけないぐらいなら死んだ方がましだ、なんて考えている。ゲームをやっている時に、ふと、何で自分は大切な時間を使ってクリアに何十時間もかかるようなゲームをやっているのだろうと考えが浮かんでいつまでも消えない時があるが、そんな事を考えてしまったゲームは即座にやめてしまう。

ゲームに限らず小説でも漫画でも勉強でも何でも同じだ。何でこんな事やってるんだろう、という問いはそのまま何故生きているのか、という問いに直結している。

なんでこんな時間をかけてブログを書いているんだろう、なんて考えがおかしい。
本質的にいえば全て無意味だ。人の記憶に残る事を、なんていう綺麗事は通用しない。遺伝子だって子供が生まれたとしても二分の一、その子供だと四分の一、五世代も離れたら自分の遺伝子なんてほとんどなくなってしまう。
小説を書いても、何をしても後世に名が残ったとしても、それは人の世だけの話だ。名が残るといっても、すでにそれは自分ではなくて、ミームだ。情報的模倣子としての存在しか残っていない。

ただ書きたいから書いている。なぜ生きているのか、なんて関係ない、そんな疑問を感じる余地もないほど熱中して、生きてるんだから。

たまに考える事はもちろんある。が、いつだって長続きしない。生きていて良かった、というような出来事があるから。

何故こんなことをしているのか、なんて事が頭にのぼらないほど夢中になって生きればいいのだ。思ったら死ね、極論だとそうなる。

森博嗣の言葉を引用すれば

 おそらく、プラスが不足している人は、1つのマイナスが消えても、すぐに新しいマイナスを見つけてきて、落ち込んでしまうだろう。

 夫婦仲が悪く、仕事も上手くいかなくて、借金は増え、子供たちもにも見放され、友達もいない、信頼できる人は死んでしまい、どん底の状態だ、という場合に、夫婦仲を戻す、仕事を上手くいかせる、借金をしない、子供たちに戻ってきてもらう、友達を作り、新たに信頼できる人を探す、というようなことをすべて実行するなんて到底不可能だ。だから、もう駄目だ、と思い詰めている。そういう人が、たとえば、子犬を一匹飼うだけで、一時的にでも問題が解決するかもしれない。この「一時的」が大事である。僕は、生きるということは、そういうものだと感じている。

面白い。カラフル/森絵都