基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ハローサマー、グッドバイ/マイケル・コーニィ

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

 すっきりさっぱりブラウンアイズチャン! 訳者どっかで名前聞いたことあるなと思ったらイーガンの本を翻訳している人のようだ。いい訳だと思う。表紙のブラウンアイズは腕輪しとるなあ。恋愛小説である。トライアングラー。三角関係。ブラウンアイズよりもリボンの方を圧倒的に気に入ってしまい、いけ! そこだ! ドローヴ浮気しろ浮気! とやきもきしながら読み進めたが、結局ブラウンアイズ一筋というへたれ男ドローヴ。お前が男らしくお前ら二人とも俺が面倒みてやる! というようなでかい男だったらリボンもあんな悲惨な目にあわなくてすんだかもしれないのに! もしくは凄まじいカリスマ制を発揮して、俺がこの星を救ってみせる! とかなんとかいって爆弾もって太陽に突っ込んでいけばよかったのに。それでみんなが、あいつのおかげでこの星は救われたんだー! ブラウンアイズとリボンはショボーンで毎年墓参りをしていたら、3年後の命日にどこからともなく昔の名残をのこしたある人物が・・! ってお前これダイの大冒険しかりアビスしかりうたわれるものしかりの超王道展開やないかい・・・!
 
 いやーそれにしても面白かった。最初の100ページぐらいはひょっとしたらあまり面白くないかもしれないなとあまり乗り気じゃなかったのだが、段々緊迫していく空気に、どんどんラブラブになっていくブラウンアイズについでにリボンまでひっかけておきながら、何か自信満々な俺すげー的主観がいらつくものの、それなりに行動力もあるし女の子たちが惚れるのもわからんでもない。途中で出てきたシルヴァージャックという船乗りは、自分が提供した船が海に出たら沈むことがわかっているのに子供たちを止めなかったところで株があがったのだが(ライ麦畑でつかまえて、的な本当に危険な時じゃないと助けないぞな教育方針かと思った)本当に子供たちのことなんかどうでもよかったらしくてピンチに助けに来てくれなかった。これじゃあライ麦畑で見放して、だよ。

 最後いきなり惑星氷河期ネタが来るとは予想だにしていなかったので相当めんくらった。そういえば、地球が壊滅するっていうし重要な人間は地下シェルターに入るとかアホなこといっているから俺たちは宇宙船でもつくって宇宙に飛び出すしかねえ! という立場の人間が主人公で書かれたSFは結構あるけれども、政府のシェルターに入れる側の視点の物語を読んだのは初めてだな。まあもっともそれはメインというよりも、ブラウンアイズとの別れを演出するためのギミックの一つなのだけど。途中読んでいる時は、オチは三つのうちどちらかだと思った。1.超かっこよくて頭がいいドローヴ君は誰もが助かる超迷案を思いついて外に抜け出してブラウンアイズちゃんと仲良くくらす。2.ドローヴ君は40年の歳月をあなぐらで暮らし、出てきたらブラウンアイズちゃんは死んでいる。現実は非情である。3.ドローヴ君は超人的な力で持ってあなぐらを抜け出し、ブラウンアイズちゃんと再会するも凍えて二人とも死ぬ、現実は非情である。
おれがマルをつけたいのは答え1だが期待は出来ない…
いきがった子供のドローヴ君ごときがアメリカンコミック・ヒーローのように名案を思い付いて『待ってました!』と間一髪助けてくれるってわけにはいかねーゼ。だが実際は1だったのだから恐れ入る。しかも心の底から納得できるオチで、読んでいて思わず感動してしまった。こんなにきれいに落ちている作品を読んだのは久しぶりだ。