基本読書

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朱色の研究/有栖川有栖

朱色の研究 (角川文庫)

朱色の研究 (角川文庫)

 うん、探偵役の火村先生が序盤から出ずっぱりというだけでスウェーデン館より好きだなぁ。事件やらトリックの方も恐ろしい安定感で非常に良いのだけれども、予想を超えてくるよさがないのでどうしてもキャラクターの方に面白さの重点を置いてしまう。前回も過去の事件が現在の事件に関係してくるパターンだったが、今回もである。まだ二作品しか読んでいないが一種の傾向なのだろうか。あとがきなどを読んでいると、作者の有栖川有栖も作中の有栖川有栖と似たような性格なんだろうなあと想像できてなんかほっとする。ついこの前のジャンプの一言コメントで、大石先生がジャンプ新年会であった漫画家さんたちはみんな主人公にそっくりでしたというものがあったが、さもありなんという感じ。相変わらず有栖川有栖と火村先生はラブラブだなぁ。なんかブリーチとかナルトに通じるものがある、このラブラブっぷりは。特にナルトかな。ナルトとサスケみたいな間柄・・・。火村が女にまるっきり興味を見せずに、有栖有栖ちょっとこっちきてくれ有栖頼む頼むとたいして凄くもない有栖川有栖に依存している。火村が有栖川有栖を呼ぶときだけ「アリス」とカタカナになっているところも非常に怪しい。そもそも色気っていうものが圧倒的に不足してるよ! 毎回美少女とか美女は出てくるけどレギュラーじゃないもん! 有栖やら火村と何かあるわけでもないしさー。

 火村先生の殺人衝動ネタはそそるものがあるなあ。何でだろう。これもブリーチとかナルトに関わってくる話だけど、どちらも抑えきれない力に飲まれるか、制御して強くなるかという順当な展開をおっている。大抵こういうのは他人には無いものという扱われ方で、それを使いこなす、もしくはやみくもに開放することによって人より強い力を得ることができる。火村先生の事件を追う原動力となっているのが殺人衝動のようなものだとすれば、この図式に当てはまるであろう。他にも殺人衝動ネタといえば星の数ほどある気がするけれど、代表的な所でいえば月姫とかか。ブリーチの虚化、九尾化と殺人衝動を名前変えただけのネタは数限りない。この辺分析してみたいところだが、まあそれも今後か。とてもまとめられそうにない。しかし何でこれが面白いのかなあ? ひとは誰にでも殺人衝動やらおさえられない衝動が自覚出来ていないだけで持っているので、半ば無意識的にそういったものを押さえて懸命に使いこなそうとしている主人公を見ると共感してしまうのだろうか。もっともらしいけれど。

 いかんいかん、キャラクターについて語ってるのはおかしいぞ。一応本の内容にも触れておかないと。今回の犯人が最高にイカス。いっけんヘタレキャラが実は犯人でしたーっていう展開が大好きなんだよな。展開というよりも、ヘタレだっていうのは実は演技だったんだぜぐへへふはははと突如豹変するキャラクターが好きなんだよなあ。たぶん叙述トリックのように今まで見えていた風景が一変するからだと分析できる。つまりこいつの本性はこの豹変した後であって、今までのヘタレは全部演技だったのだから叙述トリックと通じるものがある。しかも殺した動機は夕暮れのお告げときたもんだ。異邦人ってるぜ。ちなみにこれ、いほうじんってるぜ、もしくはカミュってるぜ、と読む。意味は理解不能だぜ! である。最後に必死にあれこれ言い訳する姿も素敵だ。って結局キャラ談義に。まあいいんだけど。