MAMA/紅玉いづき

MAMA (電撃文庫)

　最初の200ページほどが『MAMA』で、残りの80ページがMAMAの後日談的な『AND』という二種類の物語で構成されている。まさか二つに分かれているとは思いもよらないので、突然物語が終わった時はやや唐突に感じたのも確かだがそれ以外は特に問題もなく。それにしても相変わらず真っ直ぐな物語を書く人だなあという感想を、やはり持つ。この真っ直ぐさは訴えかけとしては素直に心を打つ。その反面粗があった場合に、真っ直ぐな、わかりやすい話だけに即座に批判されやすい。

　特に、この作者の場合一作目『ミミズクと夜の王』の人気がかなりあったために、感想もおのずと二作品の対比という形になってしまう。いくつか感想を見たがそのほとんどがミミズクと夜の王より〜面白かったつまらなかったの二択だ。全体的な感想としては『ミミズクと夜の王』の方が面白かった。そんな意見が多いけれど、個人的にはどっちも同じぐらいだと思う。同じような話なので、ファーストインプレッションの差でどっちを先に読んだかで印象が変わってくる。対比することに特に意味はない、というのが感想。この人の作品、前作も含めてだが一つの話に出てくるキャラクターが極端に少ない。それは恐らく、自分自身しか書くことができないからで、他人になりすますことができないのだろう。だから、紅玉いづきのように、愛とか友情とか、綺麗なものが好きな人は、とことん好きになってハマることができると思う。ヒネくれてる人間にはとことん合わないだろうなー。そんな人は読んじゃあいかんよな。毒だよ。

　まあ、なんか色々突っ込みどころもあったけど一つあげるとしたら、主人公の二つ名天国の耳（ヘブンズイヤー）とかいうところだな。何でも聞きとって、異国の言葉も理解するっていう凄い翻訳こんにゃくなんだけどそれどう考えても地獄の耳（ヘルイヤー）だよねえ。何で天国なんだろう。不思議だ。