- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1982/09
- メディア: 文庫
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なんというか…
さすがに十一巻目ともなると、段々書くことが無くなってまいりますな…。同じように全巻レビューした水滸伝や三国志ではこういう事もなかったのですが、やはり山場があるか、ないかではこう、熱量というものも違ってまいりますし、そういう意味じゃあ100巻を前提とされた長丁場のグイン・サーガでは、途中こういうところが出てきてしまうのも仕方ないのですが。100巻書くというのはそれはそれは書く方からしても、読む方からしても相当な長丁場ですし、書く方も100巻で書くと宣言してしまった以上情けない所は見せられないでしょうし(特に栗本薫だし)だからこそ書けるのならばあれも、これもとガンガン詰め込んでいってしまうんでしょう。できるだけ短く短く終わらせようとして、十九巻になってしまった水滸伝とは話の密度が違うのも、さもありなんといったところで。
スカール
スカールの表紙、とっても格好いいですね。草原の民全員に惚れられているそうです、憎いですね。全身黒一色の変態野郎のくせして、しかも他人に黒をつけさせないという徹底ぶり! 流水先生がこの世界にいたら、たぶん猛烈に抗議して殺されていたでしょうね。しかしこのスカール氏。当時読んでいたら何も思わなかったでしょうが、数十年の時を超えた自分には、こやつはコードギアスのオレンジ君にそっくりだなあ…という感想を呼び起させるのであります。なんたる不運でしょうか、凄い男なのにビジュアルがオレンジとかぶっているばっかりにスカール像とでもいうべきものがゆがんできました。これは悲しい。
栗本薫の理想の口説かれ方
前半60ページは、イシュトヴァーントリンダのラブラブっぷりがはじけております。まあそれは置いといて。その時の口説き文句…というか口説き方が、ナリスがアムネリスを恋に落としたのと全くおんなじ方法なんですよね。ナリスの時はクリスタルの光輝くすっごい綺麗なテレポーテーション装置を見せて度肝を抜かせ、イシュトヴァーンはリンダに素晴らしい夕暮れをプレゼント。偶然とは違いますまい。まあ偶然でも別にいいんですけどね。そして仮にこの、『二人っきりでソの人だけが知っている特別に綺麗なものを見せる』という口説きの必殺テクが、女性全員に通用するものならば非常に勉強になるのですが、栗本薫さんの場合・・・、いや、多くは語りますまい…
グイン、イシュトヴァーン、リンダ、レムス、スニの別れの場面は非常に感動的でした。なんていうんでしょうねこれ。えーと、今まで一緒に旅してきた仲間が、冒険を追え、ちりぢりになっていく。そういう展開は非常に好きであります。指輪物語でも、ベニー松山の隣り合わせの灰と青春など、冒険ファンタジーものの王道といえるでしょうか。非常に良かったです