基本読書

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小飼弾の 「仕組み」進化論

小飼弾の 「仕組み」進化論

小飼弾の 「仕組み」進化論

 最近小飼弾がらみの本をいっぱい読んでこれで自分も今日から・・・なんだ、ツツイストとか、ハルキストみたいな単語が出てきてほしかったんですけど。コガイスト…? 今日からコガイスト冬木糸一です。ってんなことはどうでもよくて、最初の150ページはあくびが出そうなぐらいつまらなかったですが、最後の50ページは面白かったです。僕はビジネス本とか成功本とかをあまり読まないのですが、それは読んでも実践できないからです。その理由も個人的にははっきりしていて、だから読んでも仕方がない。そして本書の前半部の内容はまさに『実践できない内容』をあなた達の成功のためにご教授してあげましょうという話。しかし、後半部の50ページになって話が別の段階に飛んだ。そこまでは自分たちの社会、会社についてずっと語っていたのですが突然遺伝子の話になった。それだけで面白くなった理由としては充分だ。

目次

Part0 仕組み作りが仕事になる
●仕組み化が進んだ社会
・高度に進化した仕組みがあなたのクビを絞める!
●仕組みづくりを仕事にするための「新20%ルール」
・生き残るために必要なのは“本当の”20%ルール

Part1 仕組みの仕組み 仕組みを作る前に知っておきたいこと
●仕組みはどんなふうにできているのか
・あらゆる仕組みは、「テコ」と「奴隷」でできている
・見えないテコ=公式が仕事を効率化する
●身近にある「テコ」と「奴隷」を使った仕組み
・ディズニーランドのサービスの秘密は、マニュアル=テコにある
・テコの力をコントロールできるFXの仕組み

Part2 仕組みを作り直す 目の前の仕事を20%の力でこなす仕組み
プログラマーに学ぶ「仕組み作り」の基本
プログラマーの三大美徳「怠慢」「短気」「傲慢」
・同じ作業の重複を嫌がる「怠慢」
・先回りして仕組みを作る「短気」
・プロ意識から仕組みのメンテナンスを容易にする「傲慢」
●日常業務を仕組み化してみよう
・仕事を定量化する
・事例1 無駄な繰り返しを減らす仕組みを考える
・事例2 すべての記録を保存して再利用

Part3 仕組みを使う 仕組みのコストとテストを考える
●仕組みは使ってなんぼ
・何回使えば元がとれるか
・残りの80%で遊ばなければならない理由
●「使わないでなんぼ」な仕組み

Part4 仕組みを合わせる チームで仕組み合うために
●仕組みを合わせる基本ルール
・仕組みの中のボトルネックを見つける
・生き残るためには安全性の高い並列的な仕組みに
●上手に仕組みを合わせる
・次の工程を見せて自分の役割を理解させる
・仕組みの位相・タイミングを合わせる
・泥縄的なマニュアル=最新のマニュアル
●安全に“仕組み合う”ための仕組み
・非常時に力を発揮するために「緊張しなくてよい」状況を示す
・保守担当者には、金銭的なモチベーションも必要
・意識させずに安全性を高める「自動化」と「自働化
・リーダーの笑顔は義務である
・問題は自分よりふたつ上のレイヤーで考える
・コミュニケーションコストを減らす「モックアップ

Part5 仕組みと生物 「新しい仕組み」を作るヒント
●生き残りの名人「生物」という仕組みに学ぶ
・どうやって生き残るかを考えるときが来た
・生き残るコツは、「生物」にあり
・突然変異を誘発するブレインストーミング
●生き残るための仕組みを作る
・レッド・オーシャンの隙間のブルー・オーシャンを狙え
・隙間を見つけるには、「遠くを見過ぎない」こと
・仕掛品をたくさん作り、最後の1ピースを待つ

Part6 仕組みの未来
●「リソース重視」の仕組み作りが格差をなくす
・持てる者と持たざる者のギャップ
●新しい仕組み作りへリソースを投じよう
・あなたは本当に働いているのか
・怠け者のアリが社会を豊かにする
・“ending concern”やオープンソース   ──Amazonより

 さすが小飼弾氏の本は目次がしっかりしている。面白くなってきた、といったのはPart5の『仕組みと生物 「新しい仕組み」を作るヒント』からです。参考になった点を書いておくと、この部分。

夢を現実化する方法

P196

 あと1ピースがあれば実現できるというところまで、物事を具体化しておき、必要なピースが出てきたら、すかさず拾いにいく。

 たとえばもし店を始めたいと思っているなら、どんな店にするかまず考える。その場合予算や、その他多くのことで無理が生じていることがわかるでしょう。しかしそれでも徹底的に何がダメなのかリストアップする。その時は確かに足りないかもしれませんが、時間が経つことで手に入るかもしれない。たとえば融資してくれる人だったり、立地スペースがあいたり。もし条件がそろっても、そこまでで準備していなかったらすべてはパーです。

格差問題の本質

 格差問題についても触れられています。100人の村で例えると、今までは100人が競争して、上位10人が仕組みを創り90人をドレイにモノを作り出していました。そして90人のドレイに賃金を与えて、モノを売る。それが元々の構造です。しかし現代では仕組みが進化して、100人が生きるために必要なモノを生み出すのに100人も必要なくなってしまった。仕組みを作り、生産するのに10人で足りてしまう、そんな状況が今です。そのせいで、残りの90人は働く必要が無くなり、必然的に給料ももらえないせいでモノが買えない。これが格差問題の本質というわけです。その状況を改善するために残りの90人も仕組みを作る側にまわらないといけない。今は生産効率を重視する社会構造で、とにかく何でもいいからモノを作って、売って、売れなかったらゴミ箱行きが常識になっていますが
P206

 これからの社会は、これまでの生産効率重視から、「リソース効率重視」とでも言うべき価値観へ転換する必要が出てくるでしょう。「作れるものをどれだけ作るか」ではなく「使えるものをどれだけ有効に使うか」がより重要になってきます。

 リソース効率重視とは、すでに存在するヒトやモノという資源を無駄無く使い過剰在庫を抱えない方針です。不要な製品を作らないことを徹底することで、人々の働く時間は減ってくるかもしれません。その一つの形で最近ホリエモンのブログで取り上げられたことでも有名ですが、『ベーシックインカム』があるでしょう。ベーシックインカムとは、あらゆる個人に対して一定額、無条件で給付する制度です。あの叩かれまくった定額給付金の凄いバージョンとでも考えればわかりやすいかと。本書でもオマケ的にベーシックインカムの利点が語られています。ただ欠点には全く触れられていないので良いのかどうかよくわかりません。財源がどうやったら確保できるのか、とか実際給付するとしたらいくらぐらいになるのか、とか問題はすぐに思いつきますが。でも面白そうですよね。わかりやすいですし。しかしここで言っている未来の社会はこうなる論、ほとんど全部先日読んだばかりの『ぼくたちの洗脳社会』岡田斗司夫 の本に書いてあったことです。しかもこれ、15年前に発売された本なのですが…。これから先は時間があまる社会になる。無駄な生産をしなくなり、そのせいで今までのような会社の形態は少なくなる。これからはプロジェクトを立ち上げて、そのために会社を作り、プロジェクトが終わったら解散が一般になる。そしてみんな好きなプロジェクトに参加するようになる。ううむ、岡田斗司夫が凄いというよりも、考えればみんなその点にたどり着くんですな…。

 もうずいぶん日本も経済が安定した状態が続いて、そうすると起こってくるのは仕組みの先鋭化だ。研究者の研究がどんどん先ぼそったものになってきているのはよく言われる事だが、これは企業にも当てはまっていて現在超分業社会になっているといえないだろうか。そうすると個々の仕事しか見えなくなり、全体を通して〜〜という視点がなくなる。要するに未来へのビジョンなどといったものが立てられなくなる、自分のことしかわからないからそんなもの立てようがない。全体のビジョンが見えないと『ああしてやろう』などといった冒険心が育たない。そうすると会社は特に核反応もおかさずに段々先細っていく。

 小飼弾氏はモノを余らせないために人間は働く必要が無くってくるといったが、ひょっとしたらこれから先はモノを余らせない=モノを作らないではなく、モノを余らせない=余ったものを全部リサイクしてまたモノにする。になって、リサイクルさせるための人員が必要になってくるのではないかとなんとなく思った。リサイクル過剰社会である。

『これこれこうすればうまくいく』系の本が役に立たないわけ。

 僕が成功本を読んでも実践できないのは、それが一方的に教えられることだからです。教わってちゃだめなんですよ。自分から学びに行かないと。本を読むのは学びに行くというよりかは、授業を聴講していることに近い。聴講しているだけじゃだめなんですよ。たとえば何かの分野にて成長するために、師を選ぶのは正しいことでしょう。ただその場合の師が有効に機能するのは、教わる側が『先生、教えてください!』と自分から質問した場合、もしくは師を見て技術を盗む場合、師がその人物の状況を把握して、その人物に対して的確なアドバイスを送った場合。成功本は一方的に上から、どんな人間に対しても『これこれこうすればうまくいく』と言ってくるだけです。そんなものが、うまくいくはずがない。

 本を読めと親に言われて本を読んでいる子どもと、自発的に本を読んでいる子供、どちらがより飲みこみが速いかといえば間違いなく自発的に本を読んでいる子供です。成功本も同じです。小飼弾氏の言う通りに、仕組みを作れ! といわれてはいはいと仕組みを作ってみる人間と、誰に言われるでもなく自分で考えて、仕組みを作る側に回ってやる! と決意した人間とでは天と地ほどの差がある。小飼弾氏は間違いなく、誰に言われるまでもなく仕組みを作ろうと自分で決意した人間です。あるいは今までの読書の蓄積があって、仕組みを作ることを思いついたのかもしれません。そしてそれを人に教えようとしている。無意味だ! 無意味すぎる!