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プチクリ!―好き=才能!

プチクリ!―好き=才能!

プチクリ!―好き=才能!

 岡田斗司夫プチクリ!―好き=才能!』メーカー/出版社: 幻冬舎 は全てのクリエイター志望者必見の一冊。日本には多くのクリエイター志望者で溢れかえっています。小説家だったり、漫画家だったり、映画監督だったり。しかし現実に夢をかなえられる人は本当に極少数です。そして実際にプロのクリエイターになってから感じるのは窮屈な生きずらさだといいます。そのあたりが、プロがプロ志望者に向かってこの業界はつらいぞ! と伝える原因になっているのでしょう。

 プロクリエイターとは言わずもがな、小説だけを書いたり、漫画だけを書いたりする人です。とにかくそれだけやる人達ですね。どこかの本でプロとアマの違いは、それについてどれだけ考え続けているかだ、と書いていました。さらには評価され続けなければいけないというのもプロクリエイターの絶対条件です。なにしろそれでお金をもらっているわけですから、使えない存在になってしまったらそれで終わりです。

 それに対して自分の好きなことを好きなときに好きなだけ発表するクリエイター、それが「プチクリ」です。プロのクリエイターが常にそれをやっていなければいけないのとは違って、プチクリは自分の好きなことだけをやっていればいいのです。お金がもらえるかどうかなんて関係ない、小説を書いたり漫画を描いたり詩を書いたりガーデニングをしたり、とにかく何でもいいのです。つらかったらヤメればいいのです。多くのクリエイター志望の人が勘違いしているのは、クリエイターになるためにはプロにならなければいけないという思い込みです。今はニコニコ動画でアップできたり、はたまたブログだってあります。表現の場は無数にあって、その中でわざわざ窮屈なプロクリエイターを目指す必要はないのでは? そんな内容。

岡田斗司夫「プチクリ」公式ページより

★「プチクリ」目次

はじめに

第一章 プチクリにチャレンジしてみませんか?

誰もが楽しそうな世界
もっとも輝いているクリエイター
小さくても美味しいトマト
プチでも立派なクリエイター
「プロはつまらない」その理由
プロだってプチクリしてる
プチクリは今すぐできる! 誰でもなれる

第二章 あなたの才能見つけます

一番欲しいのは才能
あなたの「興味がないこと」は何ですか?
これが才能です
「わかる」ってスゴいことなんだ!
「好きなこと」を書き出してみよう
「才能埋蔵マップ」って?
才能は、マップを書けばすぐわかる
いざ才能発掘!
あなたのプチクリネタをどんどん増やそう

第三章 表現するのがプチクリです

「好き」はこう表現する!
バイオリン好きのSさんの話
あなたにしかできないプチクリはきっとある
スイーツだってプチクリネタ
あなたの部屋を「博物館」にする方法
続けるコツは「楽しむこと」
演奏しないミュージシャン
バリエーションはあなたの気持ちの数だけある
表現とは「のろける」ことだったんです

第四章 表現力を伸ばそう

才能を引き出す簡単な方法
ありあまる才能は邪魔になる
才能のあるなしは重要ではない
コントロール力は奇蹟を生む
大事なのは、続けること
いますぐマンガ家と名乗りなさい
決意と自覚こそが最も必要
あなたもクリエイターになりました
見えてくる新しい世界
まずは形から入ってみる
世界で唯一の人になる

第五章 これが私のプチクリ

「好き」という気持ちを伝えたい!
プロになれるか、なれないか
プチクリに目覚めた頃
歓声と拍手からのはじまり
やりたいことはなにひとつやめられなかった
気がつけばプチ社長
またもや転機が……
プチ社長を辞めた理由
好きなときに、好きなことをしたい
私がもしプチクリでなかったら
大きなことも小さなこともできる
プチクリの心地よさ
好きなことさえあれば大丈夫

おわりに

 プロの辛さは岡田斗司夫の実際の経験を少しかじるだけで感じ取れます。本書では岡田斗司夫が大学を中退し、SFショップを経営しガイナックスを設立し辞めるまでの経歴が簡単に書かれていますが、とても生き辛い。ガイナックスでアニメを作ったら、次は何を作るのだ早く作れとせっつかれ、ゲームが作りたいといったらうるさいばかアニメ創れボケとののしられ、ゲームを強引に作って大成功させたら次はゲームを早く作れアニメも作れとののしられ、なんとも悲惨なありさまです。最終的に岡田斗司夫は自分のやりたいことができずに、ガイナックスを退社してしまいました。実際には何も仕事をしない岡田斗司夫に対して辞めてくれ、という依頼が行った結果らしいですが、その前から辞めようとは思っていたのでしょう。

 才能についての話が特に面白かったです。岡田斗司夫いわく、好きだと思うことは全て才能である──らしい。
岡田斗司夫対談

飯島
うわ、まさに今お伺いしたことだ!「好きなことを仕事にしている人はいいな」って言う人に「やればいいじゃん」って言うと、「そんなのができるのは、才能がある人だけだよ」って必ず答えますよね。
岡田
それは才能というものを間違って捉えてるんです。だって、才能がないってどういう状態か説明できます?
飯島
仕事で言えば、納品ができないとか・・・?
岡田
それは、ノルマが達せられないとか結果が出せないってことでしょう。才能がないっていうのとは違うんです。実は才能がないっていうのは、"分からないこと"なんですよ。
たとえば、僕は絵がまったく分からないんです。画集は1冊も持ってないし、絵を観てもどれがいいかなんて、全然分からないです。これは僕が絵に対して、まったく才能がないってことなんです。でも一方で、世の中には「いい絵だ」「この絵が好き」っていう人がいる。この好きっていうのが、才能なんです。でもみんな「好き=才能がある」ってことを知らない。才能というのは表現できて、人を驚かせるものだって思ってるんですけど、違うんです。「分からない=才能がない」「分かる(好き)=才能がある」で、その断絶はすごく大きいんです。実は「分かる」と「出来る」の差はそんなにないんですよ。

 小説が好きな人は小説の才能がある。漫画が好きな人は漫画の才能がある。ひょっとしたらその才能は小説を書いたり、漫画を描いたりする才能じゃないかもしれません。批評する才能かもしれないし、はたまた別の才能かもしれない。ただ好きである以上才能はある。そんなこといったら日本人はほとんど漫画の才能があることになるじゃないか! というかもしれませんが、実際に日本人はほとんど漫画の才能があるんですよ。少なくとも他国に比べれば平均値がずっと上だ。こんなに多くの人間が絵を描く国が、Pixivにあんなに絵が投稿される国があると思いますか?

 誰もが才能を持っています。だったら後はそれをクリエイティブな形に反応して、人々に向けて差し出すだけです。ネットでもいいですし、友人でもいいです。そうしたらすでにあなたもプチクリです。飽きたら辞めればいいんです。プロじゃないんですから。幾つもそうやって飽きたりやったりを繰り返しているうちに、また新しい好きなことが増えていきます。プチクリは楽しい生き方なんですね。無理なことなんて何にもしなくていい、ただ好きなことだけやっていればいい。プロにならなければ、といって切羽つまり、焦っている人たちにこそ読んでもらいたい、と思いました。