- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2001/04
- メディア: 新書
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対して橋本治はスタート地点が「わからない」状態から始まる。この本で繰り返し言われていることとは、「なんでも簡単に''そうか、わかった''と言えるような便利な正解は、もうすでにない」ということだ。とにかく橋本治は「わからない」を繰り返す。それはもうウザイぐらいに。大半の読者はこれをウザイと思うだろうし、クドイとも感じるだろう。しかしこれはほとんど意図的なもので、馬鹿相手には同じことを繰り返さなくてはならないと言っているようなものである。しかしそれは「わからない」ことを放棄してしまっている現代人には効果てきめんかもしれない。自分はいかに「わからない」を無視してきたかが、本書を読んでいてよくわかるのである。正解だけを求めて、一冊の本の中で言いたいことだけを抽出して、自分の中へ納める。それを正解とし、それ以外を排除していたのではないかと、『考える』きっかけになった。この本を読んでも「こうすればいいのだ」なんていう理解にはたどり着かない。ただ「なんだかよくわからなかった」感覚が残るだけである。その先へは自分で考えて進むしかない。そして内田樹と比較して面白いのはまさにその点だ。自分で考えるしかないことに気がつけたから、面白いと感じるようになったという、それだけの話。