- 作者: 立川談春
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/11
- メディア: ハードカバー
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師弟関係は恋愛関係のようなものである、とどこかに書いてあった。そうなのだろうなあ、と読んでいて思う。だって、ここで語られている立川談志は、きらきら輝きすぎているもの。ほら、恋愛に熱中している人が恋人のことを話すときのあの温度差、ああいうものを感じてしまうのだけれども、それが全然いやらしくない。恋愛からいやらしさを抜いたのが師弟愛なのかもしれない。
読んでいて驚いたのは、「何十年も前の話をよくこんなに生き生きと、記憶を確かに持っていられるな」ということだった。たくさんの会話が出てくる。逸話が出てくる。名言が出てくる。当然一言一句同じということはないだろう。いや、ひょっとしたら一言一句同じなのかもしれない。あるいは、一言も喋っていないことだらけなのかもしれない。そっちの方が可能性としてはありそうである。しかし彼らは落語家なわけで、であるならば当然自分の身の回りに起こった出来事は、何度も何度も語るだろう。偏見かもしれないが。どこで読んだか忘れたけれど、何かを物語ると人間はそれについてよく記憶しておけるという。つまりなぜ人間が物語を作るか、物語るかと言えばそれは記憶するためなのだ。ひたすら喋っている、身の回りの出来事を周りの人間に話しまくっている彼らは、必然的にガンガン記憶していくだろう。当然話しまくるということは、途中ではしょったり、足りない部分を付け加えたりしていくことであって、元あったものとはまったくの別物であることを意識しなくてはならない。ただ、過去ってのはそういうものだよね、っていう話でもある。