龍盤七朝 ケルベロス 壱 (メディアワークス文庫 ふ 1-1)
- 作者: 古橋秀之,藤城陽
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/12/16
- メディア: 文庫
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さて、題名に入っているケルベロスとは割と有名なので説明の必要もないかもしれませんが、ギリシャ神話における冥界の番犬であり、普通は三つの頭を持った犬として書かれます。この物語は基本的には「復讐劇」のようなのですが、その復讐をする側としてこのケルベロスが誕生するまでを書いたのがこの第一巻になります。ネタバレになるのであまり多くは語れませんが、いやー面白い。素晴らしい。まだプロローグもいいところなのですが(だって、復讐劇なのに復讐する側のメンツがととのってないんだもん)敵の圧倒的強大さがいい。物語を面白くするかつまらなくするかは、主人公よりもむしろ「敵」にかかっているといいます。これは別に明確な人間を表している訳ではなく、障害とかで表しても同じだと思います。しかし、それはなぜか? なぜ「敵」がうまく描かれていることが、物語の面白さにかかわってくるのか? 恐らくそれは、「敵」が世界観そのものだからです。主人公たちは「敵」を打倒せんがために「物語」を進めていきますが、その為「物語を進める」と考えたときに、作中で行われることはほとんどすべて「敵を打倒する為の手段」になりかわってしまいます。主人公たちは自動的にそこへ向かっていくわけで、苦難も喜びも「敵」ありきです(言い切っていいのか?)。まあなんかそんな感じで敵はきっと大事だよ、とぼくは思いますね。よくわかってないけど。
話が横道にそれまくりましたけども、本書は敵が凄い! まったく勝てそうな気がしない! 龍盤七朝という名前が示す通りにこの世界には七つの王国があるわけですが、その七国をたった一人の男が蹂躙する! この敵は「怪物」とか「人外」と評されるのですが、もうそんなもんじゃないですね。たとえるならスーパーサイヤ人5ぐらいの悟空vs子供悟空みたいな強さの隔たりがあります。勝てない! その勝てない! と読者に思わせる描写にこそ真骨頂というか「ドM」というか…があるのですがそれは読まないとわからぬ。しかし、敵に勝てない、とはいってもまあこれは復讐劇であってからに、復讐とは論理が通じぬ道であります。だから勝てない相手に必死に食らいついて行こうとする。そこが面白いでござる。しかし復讐劇というのは割と結末のパターンが少ないような気がしますね。1.復讐を果たす、終わり、ちゃんちゃん。2.復讐が果たせない、みんな不幸になる。ちゃんちゃん。 ってそんな適当な! そこで終わりかい! まあでも、よくしらないですけど復讐劇ってわりとみんな悲劇で終わるような気がしますね。ガン×ソードなんか、復讐を果たしてハッピーな感じでしたけど、あれは特殊ケースかなあ。ま、何にしろこの物語、ちゃんと続きが出てくれることを祈っております。