基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ハートロッカーをみたよ

おもしろかったー! これは大大大傑作。イラク戦争を舞台にした映画はすでにありますが、イラク戦争の中でも「最も死亡率が高い」といわれる爆弾処理班をテーマに撮ったのはこのハートロッカーが初めてでしょう。派手な銃撃戦はなく、いつ命が奪われるかわからない極限の状況下で、自分の技術を頼りに爆弾処理を行う男達がえがかれています。その心理描写、映画なので間の取り方ですが、それが絶妙で、「この状況下で、わたしだったら何を考えているのだろう……」と考えることができるように時間があけられていて、うまく誘導させられていたように感じました。あと、凄くシビアな現実がえがかれていてよかったです。最後まで観たら、きっと気持ちが良い余韻と同時に、やるせない気持ちも感じるだろうと思います。戦争は、まだ終わってないんだ。

一瞬一瞬、次に何が起こるのかまったく予想がつかない映画でした。爆弾処理班として、防護スーツに身を包み爆弾に向かって歩いて行く場面が何度もあるのですが、彼らの間ではその歩みを“Lonely Walk Toward…(…に向かう孤独な歩き)”と言われているといいます。わずかなミスが洒落抜きで命取りになりかねず、しかも自分自身がミスしなくても、誰か別の人間が少しでも関与(たとえば携帯電話を使っただけでも爆発してしまう)しただけで爆発してしまう。しかも、故意に爆発させようとする奴もいるんだから、解除に向かって歩くというよりかはほとんど死にに行く為に歩いているようなもんです。わたしだったらそんなこと絶対にやりたくない。

絶対にやりたくないといってもしかしそれは必要な作業でもある。やたらめったら町中に爆弾を放置しておくわけには当然いかないので。そこで出てくるのが、クライシスジャンキーな主人公。彼は爆弾処理における緊張感の方が、自分の命よりも大事だと考えているふしがあって、必要もないのにわざわざ危険な行為をおかしたりする。たとえば、爆弾を遠くからボタンをポチっと押して爆破するだけの簡単なお仕事なのに、なぜか「手袋を忘れた」といって車に乗って、爆弾の近くにまで行って喜んで手をふったりする。わたしの目から見れば完全な狂人であるし、そんな彼と一緒に仕事、しかも命を預け合う仕事をしなければいけないチームの人達を見ていると『ぐぬぬ!』とうなってしまう

そうやって最も危険な任務を、誰よりも率先してやるその姿勢は、自分勝手、爆弾処理『班』のチームワークを乱すものでもあるのですが、同時にそれは『これが限度だ』と示す赤信号にもなっている。イラク戦争の中で最も危険な爆弾を解除する緊張感の中でしか生を実感できない男は、だから戦争の最前線を体現しているのかもしれない。ここが、イラク戦争の最前線だ、わたしはそう思いながらこの映画を見ていた。それは終わり方を見てもなんだか、実感してしまう。ネタバレになるけれど、最後の最後で日常に戻った主人公が、また危険を求めて戦場に戻ってきてしまい、映画がまるで最初に巻き戻ったかのような、円環構造をとっているのはこの終わっていない戦争を象徴しているかのようでなんかキタ。