いやーえがったですよ。シャーロック・ホームズ像というものを、わたしも原作読んだことないくせにいっちょまえに持っていたんですが実際に映像として現れたのはまったくの別物。え、これはどうなの? 本当のシャーロックホームズなの? どこから映画設定なの? と多少戸惑うものの、どうもWikipediaとかで調べて見た限りでは、監督によって解釈されたホームズではあるものの、基本的には原作に忠実な設定にしたがっているんだそうです。。マッチョで、相手をボッコボコに殴り飛ばしながら突き進んでいくんですよ、このホームズ。わたしのイメージだと、安楽椅子に座ってパイプとか吸いながら「ワトソンくん、飯はまだかね」とか言ってそうなイメージだったんですけどね。実際は、「うわわわ、ワトソンくん、たすけてくれーおうちでたくないよー」とかそんな感じ。想像よりもずっとダメで、そして想像よりもずっとマッチョで何でもパンチで解決しようとしていた。恐ろしい男だホームズ。そんなに野蛮な男だったとは。
そういうわけで「僕たちなりにホームズの原点だと確信したところへ彼を戻そうとした」と語る監督のホームズ像は、直感的に動く戦いの達人であったのだろう。とにかくもめごとが起こり、そのたびにド派手なアクションで切り抜ける。巻き込まれてばかりかと思いきや、地下闘技場でマッチョな男と裸で殴り合ったりもする。もちろんホームズもマッチョなのだ。彼はその類稀なる観察能力によって、相手の動きを完全に予測し、パンチを連続で叩き込む。ダメージの量さえも彼の予測の範囲内だ。予測をしている、という演出として突然時間軸がブレて、ホームズが予想している未来の映像がスロウで挿入される。そのシミュレーションが終わった時に、実際にそれを行動に移すホームズのかっちょよさといったら! そしてそれだけの観察眼を持っているがゆえに、ほとんど家から出る必要が無いことからの引きこもり設定もなるほど、見事につながっている。ワトソンが部屋に入ってカーテンを開けた時に見える太陽から必死こいて逃げ惑うホームズの場面など、情けなくてとても笑えた。
そう、非常に笑える映画になっている。ホームズとワトソンの関係性は完全に「ボケとツッコミ」であるし、出てくるキャラクターは敵を除いて非常にお茶目で魅力的なキャラクターになっている。さらに本来のシャーロック・ホームズの焦点である謎、ミステリィとしての側面も、当然あるし、武闘派であるホームズとワトソンのアクションシーンも見ものだ。どこかひとつ、「ここが一番おもしろかった!」と言える場所はないけれど(個人的なことを言えば、地下闘技場でホームズがマッチョと殴り合う場面は最高の出来だった。何度も観たいぐらい)ドラマと、ミステリィと、ユーモアと、最後にアクションの相乗効果で素晴らしいエンターテイメントになっていたと思う。シャーロック・ホームズという言ってしまえば無難な題材を、ここまでエンターテイメントとして昇華して見せたのはなかなかスゴイのではないか。