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地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?/久繁哲之介

地方の荒廃は最近よく話題にのぼる。地方活性化の為に多くの活動が行われていることも話題にのぼるけれども、どの程度成功しているかなどの実態は伝え聞いてくるだけではよくわからない。本書「地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?」を読めばそれがわかる。

目次

第1章 大型商業施設への依存が地方を衰退させる
第2章 成功事例の安易な模倣が地方を衰退させる
第3章 間違いだらけの「前提」が地方を衰退させる
第4章 間違いだらけの「地方自治と土建工学」が地方を衰退させる
第5章 「地域再生の罠」を解き明かす
第6章 市民と地域が豊かになる「7つのビジョン」
第7章 食のB級グルメ化・ブランド化をスローフードに進化させる―提言1
第8章 街中の低未利用地に交流を促すスポーツクラブを創る―提言2
第9章 公的支援は交流を促す公益空間に集中する―提言3

なぜ地方から人がいなくなり、店は消え荒野のようになっていくのか。といえばそれはシンプルに「もう誰も需要と供給のシステムに縛られた商店街を必要としていないから」といえそうだ。

考えてみれば当然のことで、大型店やネット商店がひしめくような現状、細々とした個人商店が生き残っていく為には何か強烈なウリがなくてはならない。少なくとも、「物を売る」という点で個人商店が大型店、ネット商店に対抗して勝てるはずが無い。

勝てないのならば、どうやって生き残っていけばいいのか。

別の場所で勝てばよい、と本書では言う。別の場所とはどこか。たとえば、つい先日終わったばかりのコミックマーケット。三日間で五十六万人もの人を集めることが出来るのは何故なのか。

「創る人が楽しみ」「買う人が楽しみ」そしてそこに「同好の士との交流」が生まれるからだ。

ネットが出始めてばかりの頃から今までずっと、ネットによって人は離れていても繋がることが出来る、地方にいても問題なく生活できるという考え方が広まっているけれども、アレはどうも何か問題を間違えているような気がしないでもない。

僕らはたぶん、相手と「面と向かって」交流したいのだと思う。そしてスカイプやメッセンジャーで「擬似的な交流」が生まれやすくなったとしても、あくまでもそれが擬似的ですぎない以上「本物の交流への志向」が生まれているのじゃあないか。

商店街の再生を考えるのならば、ネット商店や大型の販売店が効率化を進めて行った先に捨てざるを得なかった物。つまり人同士の交流、同好の士もしくは同じ地域の市民の憩いの場としてのコミュニティが必要とされている、と言えそうだ。

もし方針を誤って、「物を売る」点において大型販売店やネット商店と張り合おうとした時に、結果的に誰からも必要とされずに多額な金を使うだけ使って一瞬で潰れることになる。その不幸な事例が本書にはたくさん載っていて、恐ろしくなった。(特に僕の実家がひどかったのだ!)

地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)

地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)