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横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力

横井軍平氏が、自分で作ってきたゲームを年代順に一つずつ製作秘話などを語っていくスタイルの本書。凄く面白かったです。何よりこういう「アイデア勝負」の業界人は、常に新しいアイデアが世間に受けるかどうかで結構神経過敏になっている例が、インタビューなどを読んでいると見受けられるのですけれども、これほどまでに大ヒット作品を生みだしてきた横井軍平氏にはそういった「焦り」が感じられないのが個人的には凄く驚きでした。

横井軍平氏の説明を軽くしておきましょうか。氏はまだゲームを創る前の、花札制作会社だった任天堂に就職して、「ウルトラハンド」「光線銃」「ゲーム&ウォッチ」「ゲームボーイ」を作った、今のゲームの基礎を作り上げた人物といっても過言ではない凄い人です。ちなみに誰もが当たり前のように享受しているゲームの十字キーを発明したのもこの横井軍平氏。これが意外と浸透しきっていると気が付かないんですが、十字キーというのは手元を見なくてもどちらの方向を押しているのかが分かると言う意味で、画期的なんですよね。本人はそんな大した発明だとは思っていなかったみたいで、インタビューでも特許を出願する際に「名前はどうしましょうか」と聞かれて「ほな、おまえの名前にしとけよ」と答えるぐらいのいい加減さ。それが今となってはどのゲーム機にも採用されているのだから、驚きでした(二回目)

なぜ横井軍平氏にはアイデア勝負の世界の中で「焦り」があまり感じられないのかの話に戻りましょう。恐らくそれは、ゲーム作りにおいての、「これなら大丈夫だ」という、一貫した哲学を持っていたからだろうと思いました。少し引用すると、この部分がその哲学にあたります。「私はものをかんがえるときに、世界にひとつしかない、世界で初めてというものを創るのが、私の哲学です。それはどうしてかというと、競合がない、競争がないからです」

決して人真似では作らないと。世の中には他よりたくさん売る為に、海外の安い労働力を使って、よそよりも安くすることによって競争に打ち勝とうとしますけれども、「絶対的なアイデアさえあれば」そんな事をしなくても、売れるんだと。で、どうやったら新しい物が出来るのかの哲学が、かの有名な「枯れた技術の水平思考」。もう古びてしまった技術を、発想を新たに付け加えることによってまったく別の商品として売り出す。それによって、常に新しい物を作り続けてきたわけですが、まあそれでもこの伝説的なヒットを出し続けてきたあたり、「天才なんだなぁ」と、本書を読んでいたら思わざるをえませんでした。なにしろほとんどの商品を「思いつき」で作っちゃうんですからね。

目次
はじめに 牧野武文
第1章 アイデア玩具の時代 1967-1980
ウルトラハンド ウルトラマシン ラブテスター エレコンガ NBブロッククレーター レフティRX タイムショック チリトリー テンビリオン
第2章 光線銃とそのファミリー 1970-1985
光線銃SP レーザークレー ワイルドガンマン バトルシャーク、スカイホーク ダックハント 光線電話TL ブロックとジャイロ
第3章 ゲーム&ウオッチの発明 1980-1983
ゲーム&ウォッチ ドンキーコング 十字キー コンピュータ麻雀
第4章 ゲームボーイ以降 1989-1996
ゲームボーイ ゲームボーイのソフトウェア バーチャルボーイ ゲームボーイポケット
第5章 横井軍平の哲学 1997-20XX
横井軍平の生い立ち これからクリエイターを目指す人に 「売れる商品」を創るには 横井軍平のこれから
解説 ブルボン小林
横井軍平作品年表

横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力

横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力