この前作のスティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼンが面白かったので読んでみました。著者自身が語っている本書について少しだけ引用。
『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション―人生・仕事・世界を変える7つの法則』はスティーブ・ジョブズの伝記ではない。世界を根底から変えるアイデアをスティーブ・ジョブズが次々と生み出せるのはなぜなのか、その法則を明らかにする──読者のみなさんが活用し、自分の可能性を拓くことができる法則を。仕事や人生においてずばぬけた成功が得られるガイドブックだと思ってもらえばいいだろう。
スティーブ・ジョブズといえば現在では超有名なiPhoneを創造した男でありマイクロソフトを時価総額でも抜いたところであるノリにノっているアップルの偉い人。一方で「イノベーション」とはよくわかんないんだけど革新的な発明、世界を一変させてしまうようなアイディアのことでしょうか。iPhoneやiPad、さらにはiTunesなどのアップル製品を見ていれば、どういうことかは想像しやすいかと思います。
率直な感想を書くと別にそんなおもんなかったなあ。もちろん良い点も悪い点もあると思います。
悪い点は、アメリカだかどこだかの潮流なのか知りませんが「やたらとエピソードを交えて法則を語りたがる」ってとこ。『プレゼン』の方は法則が18個あったんだけど、この『イノベーション』は7つしかなくて、1つの法則につき2章かけてじっくり説明してくれています。じっくり、なんだけど、すっげえくどい。おんなじようなエピソードで同じこと繰り返し説明されてもフーンって感じですね。
あとは最初の方で「イノベーションを必死で起こそうと仕組みや流儀を確立しようとしている人」に対してのジョブズの返答「クールじゃない人が必死にクールになろうとしているって感じだ」とか「みんなでお勉強しようとか、イノベーション5つのルールを会社中に展示しようとか、そんなことを我々は考えないんだ」といっているのだが、本書にはこのジョブズの言葉が最後までまとわりついていた感じ。
イノベーションの法則なんて語っても寒くなるだけだよな、と僕などは思う。もちろん本書に書かれているジョブズを見ての法則はとても素晴らしいものなのだけど。
良い点と悪い点は表裏一体だ。豊富なエピソードは読んでいるととても頭に入ってくる。ずっと頭に残るのはデータに裏打ちされた抜き身の事実よりかも、豊富で感動的で印象的なエピソードの方だ。あともちろんジョブズのエピソードはどれも印象的ですっごい面白いしね。本当に奇跡的な名言とエピソードがあるものだ。
ナイキの社長に就任したマーク・パーカーがジョブズに電話をもらった時のエピソードとか、僕は結構好きだ。
「何かアドバイスをいただけますか?」
「じゃあ、ひとつだけ。ナイキには世界をリードする製品があるよね。誰もが欲しくてたまらない製品、ぼーっとなるほど美しい製品が。でも、お粗末なものも山のようにつくっている。お粗末なものは一掃し、いいものに集中すべきだよ」
ジョブズは一度アップルを追われており、11年後に戻ることになるのだがその際のアップルは末期的状況だった。ジョブズがそこから打った手は、350もに膨れ上がったアップルの製品をたったの4つに絞ることだった。このエピソードの凄いところは、誰もがこの話をきいて「それだ」と思うところにあるのではないかと思う。
「それこそが正しい道だ」と思うにも関わらず、現実にはそれを実行するにはなかなか至らない、ように自分を見ていると思う。自分にとって本当に重要で価値があるものにリソースを集中する、そんな単純なことがなかなかできない。「本当に重要で価値があるもの」が何なのか、よくわからないからだろうか?
僕がこのようなイノベーションの法則をあまり好きではないのは、こいう物は「人生を懸けても良いと思える物だけに人生を集中しろ」みたいな事を言ってくるのだ。「人生を懸けても良いものを探す方法」は教えてくれない。本当はそこが一番重要なところだが、それは人に教えられてなんとかなる個所ではない。ごく個人的なことだからだ。そしてそれさえわかってしまえば、もう「法則」なんていらない。
だったらそもそも「成功の法則」なんて必要ない、と僕は思う。まあ話がズレズレなので元に戻すと、他にもジョブズのエピソードというか名言で好きな物がまだあるので引用しておこう。顧客がどんなものを望んでいるのかを調査するような人たちを雇わない理由について語った場面です。
大衆文化がどうこうという話じゃないし、人々をだますという話でもない。欲しくないものを欲しいと思わせるという話でもない。僕らは、まず、自分が欲しいものは何なのかを把握する。そして、同じものを多くの人も欲しがるかどうか、きちんと考えることがアップルは得意なのだと僕は思う。僕らはそのプロなんだ。だから、次にブレークするのは何だと思う?って社外の人に尋ねたりしない。ヘンリー・フォードも同じことを言ったらしいよ。「何が欲しいかと顧客に尋ねていたら、『足が速い馬』と言われたはずだ」ってね
まあ特に説明はしないけど、まったく、といったところ。何人かの人にアンケートをとってすぐに考え付くようなことならとっくにこの世に溢れているでしょう。こういうことが言えて、実際に行動にうつして、iPhoneやiPadを作り、製品をそぎ落とし、出来の悪い製品に「ノー」と言い続けることが出来る。僕はそういうスティーブ・ジョブズをすげえと思う。
書くことが無くなってしまった。最近思いつきでだらだら書き過ぎてしまう。ジョブズにならって、僕もシンプルにしなければなるまい。その為には「伝えたいこと」を明確にしなくてはならないが、いやはや、そんなものあるかなあ? 今後のテーマですね。ではでは。
- 作者: カーマイン・ガロ,外村仁 解説,井口耕二
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