何屋なのか知らないけれど大森望さんの書かれた十年間約1000冊のSFレビュー本という、あるいみトンデモ本。1ジャンルに特化したレビュー本としては珠玉の出来である。2001年から2010年までのSFが収録されており、それぞれ★5つ評価が行われている。最後には推薦作100と著者別索引まであるのだからもう言うことはない。素晴らしい。
何より大森望さんの凄味とはSFを飲み尽くしてきたかのごとくの読書量、懐の広さであり、新刊を読めば過去の膨大なSF史の中のどのあたりに位置する作品なのかと自分一人で当てはめることができるところである。ウィザードリィでちまちまと手作りマップを作成していくようなそんな地道さと根気と熱中となんかそういう物がある。
2001年から2010年である。この10年でSFは多くの傑作をそれこそ絶え間なく生み出し続けていて、こういう形で10年を振り返るとああそういえばこんなのもあったなあ、あ、これは気になってたけど結局読んでない奴だこういう評価なんだふ〜〜む〜〜、僕はこれはこうだったけど大森さん的にはこうなのかあと、
こんなように過去を振り返り、過去を発掘し、過去を違う視点から眺め直すのが楽しかった。過去を眺め直すとはいうけれど、21世紀はまだ始まったばかりだ。このまま大森さんには脳みそだけになってでも、長生きしてもらって22世紀に21世紀SF10000を出してもらいたい。
ブックガイドなのでいろいろ僕も読みたい本が見つかった。そういうところはページの端を折っておいたので以下に書名と著者名のみメモしておく。
著者名/書名
古川日出男/サウンドトラック
ニール・スティーヴンスン/ダイヤモンド・エイジ
酒見賢一/陋巷に在り
トールキン/終わらざりし物語
スタニスワフ・レム/高い城・文学エッセイ
浅倉久志/ぼくがカンガルーに出会ったころ
吾妻ひでお/うつうつひでお日記
上橋菜穂子/獣の奏者
桜庭一樹/赤朽葉家の伝説
シモンズ/イリアム・オリュンポス
鏡明/二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分
ピンチョン/逆光
12冊か。1000冊もレビューされたのに案外少ない。まあそんなに読んでもいられないしね。そういえば酒見賢一は泣き虫弱虫諸葛孔明の第三部の発売が決まったらしい。嬉しい。来年はウィリスの新作も楽しみだしいい年になりそうだ。来年といえば、いつも年越しは寒くて外に出るのがおっくうだしちょうど休みだしで普段あまり取り掛かれない大作を読むことにしている。この年越し本を何にするのかを決めるのが毎年楽しいのだが、今年はピンチョンの『逆光』にしようと計画中。
- 作者: 大森望
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/12/07
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 18回
- この商品を含むブログ (28件) を見る