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大震災の後で人生について語るということ

これは橘玲総集編ですね。震災や異常な自殺率といったブラック・スワン(起こりえないと考えられていたことが起こることの比喩)が現れた時、未曾有の危機に対していかに自分の資産を分散して守りぬくか。突き詰めて考えれば今日本社会に蔓延している問題というのは経済の問題です。ならば僕達は自身の財産を他者(国)に頼らず、自分で守りぬかねばならないでしょう。その為には個人のリスクを国家のリスクから切り離さなければならない。

本書『大震災の後で人生について語るということ』を乱暴に要約すると僕達が金を稼ぐ方法はふたつしかなくて①身体で働いて稼ぐ ②資産を投資して利子や配当金を得る しかありません。この2つを分散させなければいけないっていう話。1で言えば「クビになったり会社が倒産した時に他の会社に移れないような人間になるな」っていうことだし2は「日本市場だけじゃなくて海外市場まで視野に入れて幅広く投資しろ」っていうそれだけの話です。

もちろんそれが簡単にできれば苦労は誰もしないっていう話ですが。でも難しいからといって、資産を一箇所に集中させておくのは危険だっていうのは震災があったし、それ以前からもわかってきていたことでしょう。もはや国家は永遠に破綻しない存在ではないし、年金に代表される社会保障制度に頼っていられる状態じゃないんだから。しかし今日本や世界で起こっているのは少なくとも個人からしてみれば主にお金があればどうにか乗り切っているリスクだ。

ならばお金をなくしてしまう選択はできる限り少なくしなければならない。本書が提案しているのは①人的資本を分散させる方法と②金融資産を分散させる方法の二つで他には著者が今まで避けてきたという国策への指摘もある。当然実践の難しいものも当然多いけれど、それは裏を返せばそれだけ具体的な提案だということだ。知らなかったではすまされない時代になってきているんだなあと思った。以下簡単なまとめ。
それじゃあ最初に①身体で働いて稼ぐことはどうやって分散させたらいいんでしょう。分散も何も会社に勤めているとそれだけで自分の人的資本はすべてその一つの会社に一極集中していることになりますので大変危険です。簡単に生涯年収三億モデルで計算してみると入社したばかりのサラリーマンの人的資本は一億三五〇〇万円です。

これは一年後に一万円もらえるからといってその約束上の一万円には実質一万円以下の価値しかないことを考えてもらえればわかりますが、ようするに未来にもらえる予定のお金は現在価値に換算するとだいぶ下がります。今まではこの人的資本のすべてを会社に委ねることが会社の利益を最大化してひいては自分の利益も最大化する手段でしたけど誰もが知っているように今はそんなことありません。

年功序列(だから若い時は低賃金)や退職金制度などによって自身の人的資本を満額受け取るためには「一つの会社に長くいることが最適」というかそれしかないのでみんながこの一極投資をしていたわけですけど、今や途中でクビになることが珍しくなってしまいました。

特別な能力のない中高年サラリーマンは恐ろしいことに、労働市場流動性がないこの日本では、途中で会社を追い出されるとこの人的資本が0になってしまいます。キャリアを積み直せず人的資本は0になりしかもお決まりの住宅ローンなどを組んでいたりすると……。住宅の価値があがっていればいいのですが、下落していた場合が問題です。

投資は基本的にリスクを分散させる為に、1000万の資金があったら300 300 400と言った風にばらけさせるのが普通ですが住宅ローンは非常に高額な為大抵の場合金融資産は不動産に一極集中してしまいます。人的資本が一極集中しているだけでも危ないのに金融資産まで一極集中していて、しかも価値が下落していた場合一気に経済的な基盤が失われます。

で、肝心のじゃあどうすればいいねんという話ですけどこれ難しいですね。基本的に労働市場流動性がないことが問題なのでまずそこを何とかしなければなりませぬ。本書では社員を自由に解雇できるようにすると失業率が下がるという統計調査から解雇自由にすべきとしています。他には定年制の廃止、同一労働同一賃金法なども労働市場流動性を高めるために提案されています。

あとは当然個人でなんとか出来る部分。まあ書くと簡単な話ですけどスペシャリストとして評判を高め(ここ重要)他社や他の業種でも必要とされる人材になることです。実際やるのは難しいでしょうけどまあそうも言っていられません。まあ要するに「一つの会社に人的資本のすべてを集めるべきではない」というだけの話です。

めんどくさくなってきたから②資産を投資して利子や配当金を得るをどうやって分散させるのかっていうのは明日ここに続きを書こう……。もしくは書かないかもしれないので簡単に書いておくとマイホームは基本的に買うな、資産を円だけで管理するなっていう二つに集約される漢字仮名。

マイホーム買うなっていうのは、バブル以降土地の値段が下がっている(まあ今は都市部に関しては下げ止まりらしいけど)っていう事があるし、そもそも不動産は非常に高いのでお金をいっぱい持っている人ならいいけど資産全部を合わせた5倍とかのレバレッジをかけて一極投資するには元からリスクが高すぎるっていう話。

資産を円だけで管理するなっていうのは今でもなく円高円安といった変動するリスクがあるからでそもそも国家が破綻する可能性があるから。

たとえば資本金8400万円あってそのうち7200万円がマイホーム(不動産)で残りの1200万円が外貨預金だとする。仮に最初1ドル=120円だとすると10万ドルになるけれど、もし1ドル80円などになってしまったら外貨預金の価値は800万円になって400万円の損が発生しているように見える。

でもこれをドル建てで評価すると7200万円の不動産は60万ドルに。10万ドルと合わせて70万ドル持っていることになる。その後同様に1ドル=80円になったとすると不動産の価値は90万ドルになって総資産なんと100万ドルになります。円資産で換算すると400万円も損益が出ていますが、仮に海外に移住するという選択肢を持っていると資産が四割以上増える計算になります。

まあもちろん実際にアメリカに移住するなんて言う選択肢を持てる人が多くいるはずはないので机上の空論かもしれませんが、でもこのように分散して資産を持っているとたとえば超円安になって1ドル240円になった時などは10万ドルの外貨預金は2400万円になって元値の倍になるわけです。どっちも極端な例ですけど「もし万が一誰も考えつかなかった危機的状況に陥っても」なんとかやっていけるような態勢ではあるわけです。

本書で繰り返し訴えかけられるのは「想定外のリスク(ブラック・スワン)に対処するためには最大限経済的なリスクを分散させなければならない」ということです。その為に大きく分けて人的資本の分散と金融資産の分散(大きく分ければお金を稼ぐ方法はこの二つしかないから)をまとめてみました。自分の復習にはなりましたけど、他の人はこれだけ読んでもよくわからないと思うので一読を推奨。

大震災の後で人生について語るということ

大震災の後で人生について語るということ