僕は経済学専門だが馬鹿な学生だったので学校にいる間はほとんど経済のことがわからなかった。というか経済学と一応関係しているので関連単位として認められますよ、というなんだかよくわからない心理学とか哲学とか、実のところまったく経済と関係がない単位ばかりとって卒業したのだった。まあそれはそれでなかなかおもしろかったんだけど、経済って本を読んでいると結構面白いんですよねえ。
この記事は雑記ではなく本についてであります。『もうダマされないための経済学講義』と『本当の経済の話をしよう』の二冊。どちらも若田部昌澄さんが関わっている方で、前者が経済学史を中心にして経済学を学ぼうという基本編。後者がフリーライターの栗原さんを生徒役にして行われた現在の経済問題をといていく応用編となっている。この二冊、論考が明快で面白かったのです。オススメだよ。
どちらにも共通しているのは「ダマされない」とか「本当の」というワードに現れているだろう。ようするに経済とはなんか騙されそうで本当の部分が隠れているような気がする、怪しいものなのだという価値観だ。そのような価値観を振り払うために、二冊は書かれている。どういうことか。『もうダマされないための経済学抗議』では、経済学が難しいのは経済的な考え方に多くの人が違和感を持ってしまうからではないかといっています。
たとえば「見えざる手」という考え方がありますよね。アダム・スミスが使った言葉で、市場経済では物のやり取りなどがそれ以外の手段より望ましい結果がもたらされることだと理解されます。まあこの辺ちょっとした言葉の違いで大きく意味が変わってしまうので難しいんですけど。『経済学の考え方では、歴史のなかにロジックを見出します*1』
まあ要するに経済学の考え方は現実の事象などからロジックだけを抜き出して語ることも多いのです。『つまり「見えざる手」という概念が正しければ、歴史上のどこかで「見えざる手」が働いているはずだと、経済学は想定するわけですね。けれども、普通の人にはなかなか「見えざる手」は見えません。*2』
これは本書に書いてあることとはちょっと違うかもしれないのだけど、経済学がなんかよくわからない理由について僕なりの結論。経済学は基本的に、記号なのだから、言ってしまえば机上の空論とさえもいえるかもしれない。
たとえば市場原理主義という、市場への不要な政府の介入を排し、市場原理を極力活用した経済運営を行うことが一番無駄がなく配分もスムーズにいって効率がいいという立場がある。反対に政府の力を強くして、保護を手厚くするべきだという人もいる。普通だったらどっちがいいか試してみればそれですむ話だがそうそう簡単に出来る話でもない。
「じゃあやって試してみればいいじゃん」ができないから有効な反論もできないままいろんな主義者が主張を戦わせて、経済学者がいうことは本当に一致しない。権威と呼ばれる人達同士でも意見は割れに割れているさまをみていれば、「経済学に本当のことなんてなにもないのではないか??」と思ってしまうのも無理は無いだろう。
でもそうじゃないんだよ、経済学にはちゃんと骨子があるんだよ、ということを教えてくれる本はいっぱいある。『レモンをお金にかえる法―経済学入門の巻』とか『クルーグマン教授の経済入門』とか。そしてこの二冊も基本的にはそういう本だ。経済についての基本的な考え方を教えてくれる。
経済学の基本、骨子とは何かといえば、それは4つある。一つはインセンティブ。それからトレード・オフとトレードで2つめと3つめ。4つめはマネーだ。どちらの本もこの4つを基本として話を展開している。トレードとトレード・オフって何が違うんだとか、マネーだけじゃわからんとかあるだろうが、まあ読めばわかる。
経済学がよくわからないと思っている人にこそ読んでもらいたい本だ。何もわからないと思っていると周囲は真っ暗だが、「あ、これはわかるかも」という火種があると周囲を探ることができる。『何が言いたいかというと、「普通の人が経済学を学ぶ意義」は、社会の動きやメカニズうを読むための知的なツールを手に入れられることにある、ということ。*3』ということ。オススメ。
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