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真紅の戦場: 最強戦士の誕生 by ジェイアラン

二十三世紀を舞台にして人間が装甲服を着込んでめちゃくちゃに殺しあう! ずびーんぎゃしゃーん、ずどどどどっどどガーーン! うぎゃーーー! やられたーーーー!! ってそんな描写は軽くないが。真紅の戦場とはともかく、最強戦士の誕生って書名が直球すぎるやろ! と読む前は思っていたけど読み終えたらうん……まさに真紅の戦場で、最強戦士の誕生でしたね……と納得させられてしまうような話である。

舞台背景を一応説明しておくと、2062年にすげえ戦争がはじまって結果的に人類の75%が消滅、地球上には8つの国家だけが残った。この国家も当然疲弊しつくし、地球上での戦闘は条約によって禁止されたのであった。しかし話はそこで終わりではなく、地球上がダメなら宇宙で戦争だ! とばかりに人類は宇宙に飛び出し、そしたらなんかワープホールが見つかって(もしくは先に見つかってたんだっけな? 前後関係がちょっと曖昧だ)人類は285の惑星と衛星に広がり、第三次辺境戦争と呼称される戦いを進出した宙域のほとんどで繰り広げている。どんだけ戦争大好きなんやねんという感じだけど主人公はそんな世界でどん底の生活を送っているところを海兵隊に拾われ、宇宙を駆けずり回りながら一人の戦闘員として、また指揮官としてめきめきとその頭角を表していくことになる。

本作を特徴づける点はいくらでもあると思うが、中でも特筆すべきなのは「描写の徹底的な細かさ」だろう。何しろ本作において今上に書いたような世界背景が説明されるのは物語も半分を過ぎたあたりからなのだ。それまで主人公はいきなり軌道上から装甲服を着て戦場に降下されるシーンから始まって身体のほとんどをふっとばされるまで延々と戦い詰めである。で、この冒頭の射出シークエンスだけで12ページも使っていて、それがめちゃくちゃかっこいいんだよね。ちょっと一部を引用してみようか。

「射出三十秒前。生命補助機能を海兵隊装甲服に移管します」
 ヴァイザーが自動的に下がって閉じ、地球標準大気に合わせた<<ガダルカナル>>の船内空気が戦闘行動中に警戒心と耐久力を最大化するよう調整された、酸素の豊富な気体に換気された。装甲服は百パーセントの機能を引き出され、深宇宙空間でもおれを生かしつづけることができる。
 装甲服が密閉され、耐爆シールドがヴァイザーを覆うと、射出ベイ内の音は何も聞こえなくなった。もちろん訓練を受けているので、ヴァイザーが閉じた五秒後には、大気圏突入時の高熱を遮断するため、装甲服が特殊な泡に包まれる。あとはハッチが開くのを待つだけだ。

とこんなかんじで延々と描写が続いていく。もちろんこれは戦場にたどり着いてからはより臨場感を増して語られていくことになる。もちろん未来だから素敵機能満載なわけだけど、兵器は兵器で進化しているわけで、もうどっかんどっかん。核は平気で爆発するわ、身体は簡単に千切れ飛ぶ。でも臓器も身体機能もまた生やせる程度には回復技術も進歩しているから安心よ(ただしめちゃくちゃキツイ)と、「宇宙を広がってめちゃくちゃ規模のデカイ世界で、最強の戦士が誕生して戦場を蹂躙していくさまを描こうぜー!」というシンプルなコンセプトがこれでもかと発揮されている一冊だ。

ちなみにこれはシリーズ物であって、前日譚である短篇集まで入れるとすでに12冊も出ている。すごい。2012年にはじまって、2013年は長編4本短篇集2本と日本のラノベ作家でもそんなに書く奴は一握りだぞと思う量を執筆している。しかもそれ以外のシリーズを二冊出しているからね2013年は。日本でも西尾維新さんなどは一日二万文字書くとかいうが、英語でもそんなに書ける人間がいるもんだな。もちろんタイミングがズレて前に書いた物がどっと出る、などの事情もあるだろうけれど訳者あとがきによると(訳者が読んだ著者ブログによると)昔に書いたものを放出したわけじゃなく書いているのは事実らしい。

何はともあれ楽しみなシリーズがはじまったものだ。

真紅の戦場: 最強戦士の誕生 (ハヤカワ文庫SF)

真紅の戦場: 最強戦士の誕生 (ハヤカワ文庫SF)