- 作者: クローディアグレイ,Claudia Gray,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2019/02/06
- メディア: 新書
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で、中身としてはオーソドックスでストレートな宇宙冒険譚×ボーイ・ミーツ・ガールといったかんじ。自分たちの星を守るために戦っている少女ノエミが、この宇宙にひとつしかない超高性能で人間と同じように豊かな感情を持ち、自己判断を下せる人型ロボットであるアベルと出会って、最初はいがみ合っていた二人だけれども、「円環宇宙」で起こっている戦争の終結に向けて冒険を重ねるうちに、お互いのことを信頼し合うようになり、ロマンスなんかもあったりなかったりして──といった流れで、特筆して「ここが飛び抜けておもしろい!」というところはないが、キャラクタも世界観も全体的に練り込まれていてどの要素もシンプルに楽しませてくれる。
たとえば、科学技術の発展によって環境が汚染され苦しくなっている地球と、そこからワームホールで繋がっていて自然豊か、代わりに科学技術からは極力背を向けて宗教をよりどころにして生きているジェネシス星(ノエミがいるほう)の対立と、その志向の違いゆえにジェネシス星は戦争では劣勢にたっている──とか。戦争にはもう勝てそうにないから、ワームホールを閉じればよくね? と戦争に勝つためではなくて「いかにしてワームホールを閉じるのか?」が焦点になっているところとか。
地球と4つの植民惑星が存在するこの「円環宇宙」を次々と巡っていくド真ん中な冒険譚であるところとか、人型ロボットアベルの指揮権がノエミに移行し、甲斐甲斐しくノエミのことを守り、指示に従うお嬢様×執事物(しかも途中でアベルの開発者が出てきて指揮権のはざまで揺れ動き──という葛藤などがある)としての完成度も高い。邦題の付け方からして「ラノベとか好きな人に手にとってもらいたい!」という感じだとおもうけれども、まあなんかそんなような本です。