基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

『1つの定理を証明する99の方法』から『怒りの人類史』まで、最近読んでおもしろかったけれどブログで単独記事にできなかった本をまとめて紹介する

最近もいろいろ読んでいるけれど、紹介したいけどうまい感じの切り口が思いつかなかったり、おもしろいけど様々な理由で取り上げにくい本がたまってきたのでいったんそいつらを紹介してみようと思う。普段ブログには小説でもノンフィクションでも、5〜6冊読んで1冊取り上げるかどうかの割合になので、このブログの背景にはこれぐらいの本が存在しているんだな、というのもなんとなく感じてもらえれば。

科学探偵 シャーロック・ホームズ

科学探偵 シャーロック・ホームズ

最初に紹介したいのは、J・オブライエン 『科学探偵 シャーロック・ホームズ』。シャーロック・ホームズは初めての科学探偵という側面も持つ。ホームズの捜査における科学的な側面とはどこにあったのか、化け学の知識はどれぐらいあったのかを原典のエピソードに細かくあたりながら見ていく本で、けっこうおもしろい。

たとえばホームズが指紋を捜査に使ったのは全60編中何編で、筆跡鑑定を使ったのは何編のこのエピソードで……と。シャーロキアンらしい偏執さでホームズに迫っている。ドイルは後年、心霊主義に傾倒してそれに伴いホームズも科学から離れ、話的にも魅力が……という話だったり、批評的な観点から読んでもいいのだけれども、あまりページ数的には多くなく、記事にまとめきれるかなと思いスルーに。

『‟もしも″絶滅した生物が進化し続けたなら ifの地球生命史 』は土屋先生の本で、もしも三葉虫やスピノサウルスなど、絶滅したやつらが生き残って進化を続けていたらどんな姿形と生態になっていたのかを描き出していく。未知のクリーチャー・デザイン感もあって、二億年後の地球の生態系を描き出した『フューチャー・イズ・ワイルド』や、人類滅亡後の動物世界を描き出した『アフターマン』といった「未来の架空動物本」に連なるいい本。ただ、その生態や形態にはそこまで大きな飛躍はなくて、かなり堅実なところはSFファン的にはちょっと物足りないかも。

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宇根寛『地図づくりの現在形 地球を測り、図を描く』は、地図についての一冊。今や紙の地図を所持して読む人はほとんどいないと思うが、現在地図の形はカーナビからスマホまで幅広く点在するようになった。そんな時代における地図の在り方、作り方とは、について書いている本で、地図の歴史もしれておもしろい。

地図の作り方も時代と技術によって変化しているようだ。たとえば空中写真にうつっているものが建物か、道路か、河川か、田園かを深層学習を用いて自動で判定してくれるAIマッピングの技術であるとか。登山道のようなよくかわり、上空からの写真では捉えがたいものはもともと人が念入りに調査していたが、近年は登山者の多くがスマホのGPSログ機能を使って自分の工程を記録している。なので、「ヤマレコ」や「ヤマップ」など登山者の生きた道の記録が共有されていて、国土地理院はちゃんと定型を結んで利用しはじめているなど、魅力的なエピソードが多い。

バーバラ・H・ローゼンウェイン『怒りの人類史』は人類史において怒りがどのように扱われてきたのかを描き出す一冊。怒りを取り除こうとする仏教、怒りの感情が浮かび上がってきたらそれに抵抗するべきだと勧めるセネカのストア学派、怒りを認めて、理性的に分析し、怒りを軽蔑する道徳的態度を土台にするべきだとした新ストア主義者らなど、様々な怒りの立場・主張だけではなく、怒りを正当化できるケースは存在しないのかといった肯定的な意見まで幅広くみていく。なかなかおもしろかったけど、どこを切り取ったらいいかわからなくてブログの記事にはできなかった。長谷川修司『トポロジカル物質とは何か』これはおもしろいけど専門性が高すぎて書くのを断念した本。トポロジカル物質とは何なのかという話に至るまで本の8割を費やしていて、つまりそれぐらいの前提知識を必要としなければ入門的な理解にすら至れない、しかもそこまで読んでもわかったといっていいのか……? と疑問が湧いてくる。良い本なのは確かなので、興味があれば。
ヒトはなぜ自殺するのか

ヒトはなぜ自殺するのか

ジェシー・べリング『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』は自殺についての一冊。人がなぜ自殺をするのか? 進化論的に自殺する個体に淘汰圧は存在しないのか、単なる病の結果なのか、といった種レベルの視点から、個人が自殺をする時にどのような心理的段階を踏んでいくのかといった主観レベルの話まで。おもしろかったがテーマ的に慎重になる本なのと、著者の(自死願望の)実体験を交えて語られていくエッセイ的な本であることもあって、一本の記事にはしづらかったのでスルー。エッセイ要素が強いと軸を持って紹介したり切り口を見つけるのが難しくてスルーしがちになってしまう。無念。
1つの定理を証明する99の方法

1つの定理を証明する99の方法

フィリップ・オーディング『1つの定理を証明する99の方法』は、同じ場面を様々な文体で書き分けたレーモン・クノーの『文体練習』を着想元に、それを数学でやってみようとした一冊。最初の方の証明はまだ真面目だが、次第に実験的な証明、統計的な証明、確率的な証明、色による証明、聴覚による証明、矛盾による証明、対話による証明、など変な方向にねじまがっていく。聴覚による証明とか、楽譜が書いてあるからね。数学全然わからなくても読んだら楽しめるはず(楽譜だし)。すごくおもしろいんだけど紹介するとなったらどうすればいいのかがわからなかった。

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科学で大切なことは本と映画で学んだ

科学で大切なことは本と映画で学んだ

サイエンスライター・翻訳者である著者が本や映画の中に存在する科学についてざっくばらんに語る本が『科学で大切なことは本と映画で学んだ』。科学を本と映画で学んだと言ってもノンフィクションやドキュメンタリだけではなくて、ヴォネガットをはじめとしたSFや村上春樹の『1Q84』など、物語も多く含まれているのがおもしろい。ただ、ゆるいエッセイで、さっきも書いたけど紹介の仕方が難しい。

と、直近一週間で読んだ分でこれぐらいで、これ以外にもつまらなくはないけどおもしろくもないという微妙なラインでここに載せてすらいない本などもあるから、けっこう読んでいる。ほんとはおもしろかった本は全部紹介したいんだけれども……。