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ただただ美しいゲーム──『ELDEN RING』

【PS4】ELDEN RING

【PS4】ELDEN RING

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『ELDEN RING』をクリアした。すべてのボスを倒したり、何周もしたりしたわけではないが(本作には周回要素が存在する)、とにかくラスボスを倒しエンディングが流れた。文句がないわけではないが、素晴らしいゲームだった。やり終えた時はやったやった! といったきゃぴきゃぴした喜びよりも、人生史に残るゲームがまた一本増えた……というしみじみとした、静かな感慨が湧いてくるようなゲームであった。

宮崎英高氏の作るゲームにはいつも明確な思想というか、「このゲームはこれが肝なんだ!」という強い意志を感じるのだが、本作もその例に漏れない作品だ。アクションゲームとしての骨子には従来のフロムソフトウェアーダークソウル的なスタイルを引き継ぎながらも、世界観的には新鮮で(世界的なファンタジィ・SF作家ジョージ・R・R・マーティンの力も関わっているのだろう)、新たな境地をみせてもらった。

個人的に、ダークソウルやブラッドボーンなどの暗い世界観と雰囲気が苦手だった(プレイ済みではある)。今回オープンワールド(公式ではオープンフィールド)化し、世界観としては「黄金時代の過ぎ去った、次の時代の在り方を求めている世界」である。

そのため、旧来のダクソ的な雰囲気を残したフィールドもあれば、『SEKIRO』の色鮮やかな風景を思わせるようなフィールドあり、SF感のある場所も、王道ファンタジィらしい場所もあり……と、未知の領域を探索しに走り回っているだけでも楽しい、大好きな作品となってくれた。本当に、広大なマップのどこに行っても世界観の奥行きを感じさせるオブジェクトが転がっていて、いったいどうやってこうしたデザインを徹底できたのか……と驚くばかりであった。間違いなく、人生史に残る作品だ。

マップを走り回っていくだけで楽しい

オープンワールドゲームではその広大なマップをどのようにして隅から隅まで探索してもらうのか? というのが重要なテーマとなるが、『ELDEN RING』の場合は「強い敵(とそいつが落とす装備)を求めて」というのがその答えになる。行ったことがないマップを適当に馬で走っていると数分に一回ぐらいのハイペースでボスが急襲してきたり、まだ見ぬ未探索ダンジョン・フィールドが見つかったりする。

マップを普通に歩いているだけなのにドラゴンがいて道を塞いでいたり、巨人が歩いていたり、馬に乗った黒い騎士が橋の真ん中で歩いていたり、ヤバいやつらがいくらでも見つかる。そうした敵に挑んでもいいし、走り抜けて逃げても良い。挑んだ場合は、勝てば強い武器などの報酬が得られるのは間違いない──色彩が鮮やかに切り替わるマップをただただ走っていくだけで、数々の脅威と好奇心が刺激される。

一回だけ戦ってみるか……と軽い気持ちで戦いだしてみたら7割ぐらい削れたところで負けて、なにくそっと意地が出てきて何回も再戦をしたくなったりもする。正直、そうした戦いのときに頭にあるのは相手を倒していい装備が欲しいとかではなく「ただただ強いこいつを倒してえ」という悟空的な闘争心のみであり、そうした戦いを繰り広げていくうちに無限に時間が溶けてゆく。結局こいつには勝てん……と無念の撤退をしても、装備を整えレベルが上がると回避など何もしなくても勝てるようになっているので、強くなった後に俺TUEEE系主人公の気分を味わうことも可能である。

世界には膨大な未知とまだみぬ強敵があって、マップを眺め、遺跡や廃墟のようなマークを発見し、ここにはいったい何がいるのだろう……とかけていくと、必ず期待に沿うなにかがいる──あるいは、ある。そうした繰り返しが、RPGの本質的とさえいえる「手探りの探索の楽しみ」と「発見と踏破の喜び」に繋がっていく。

難易度調整の自由さ

個人的に本作のゲームとしてよかった点が、難易度調整が個々人でいろいろとカスタマイズできる点にあった。たとえば、最もわかりやすい難易度調整は同じく人間の協力者を呼び出すマルチプレイで、自分がどれほど弱かったとしても、強い人を呼び寄せればその人が倒してくれる(呼び寄せた人が死んでしまうこともあるだろうが)。

そのほかに、「遺灰」と呼ばれる協力者的なNPCを呼び出すシステムがあり、これが何十種類もあるので、強い遺灰を駆使すればぐっと攻略が楽になる。他にも、特別な攻撃を可能にする「戦技」(おなじみの要素である攻撃をタイミングよく弾いて反撃を行うパリィも今回は戦技のひとつ)もぶっ壊れと言われるほど強いものもあれば弱いものもあり、ネームドのNPCを呼び出すシステムもあり──と、RPGとらしい「自分自身を強化する」以外にも、攻略を楽にする要素が多様に用意されている。

「ぶっ壊れ」と言われ先日のアップデートでナーフされた要素(たとえば自分自身のコピーを生成する写し身という遺灰や、霜踏みという戦技)もあるが、攻略に有効な要素はたくさんの動画が上がっているので、調べればボスなどもそう苦労しないだろう。僕はまず最初の何戦かはいわゆる「ぶっ壊れ」系の要素は使わず、10戦を超えてまったく勝てる気がしなくなってきたら縛りをゆるめていく──という形でやっていたが、このように自分で難易度調整ができる自由さも本作はかなり気に入っている。

と、そんな感じで本作はイージーモードなどは存在しない代わりに勝手な難易度調整の自由度は高いので、難しいゲームなんでしょ? と思う人でもわりと気軽に手を出していいと思う。最悪(人間の)協力者をオンラインで呼び続けて全ボス倒してもらってもかまわんのだ。

配信を楽しむ

個人的にダクソやSEKIROをプレイしてきたのは、それがARPGとしておもしろいのはもちろんのことだが、これらのゲームで配信している人たちが非常に多いので、自分自身もプレイして配信をより楽しみたいという気持ちが大きかった。

実際、この手のゲームは自分がまったくやらない状態で配信をみて、配信者がなすすべもなく敵ボスにやられひとつのボスで2時間3時間と沼っていくことを楽しむこともできるが、自分がプレイしているとおもしろさはより増す。ああ、このボスは本当に発狂しそうなぐらいきつかったな……というボスで、配信者が同じように苦しんで「こんなんどうやって避けるんだよ! 避けれねえだろがい!!」と叫んでいると、「そうだよな、こいつは強いんだ」とにやにやが止まらなくなる。『ELDEN RING』もたくさんの人たちが実況をしていて、プレイしている最中も今もそうした人たちがどのようなルートでマップを制覇し、ボスに苦しめられるのかを楽しんでいる。

ビルドは多彩で、いわゆる「攻略最強ビルド」にすれば難易度はある程度下がる。そうした最強ビルドに一直線で進んでいく配信者もいれば、縛っている配信者もおり、難易度調整の自由度の高さはそのまま配信を見ることで人それぞれの攻略スタイルをみることの楽しさに繋がっている。何人もの配信を追っかけているがみな攻略順はバラバラで、苦しむポイントも縛りも多様、とにかく今はそれを漁るのが楽しい。

おわりに

まだ一周目が終わったばかりなのでこれからもっと遊ぼうと思うが、とにかく一周終えて浮かんできた感想は「ただただ美しいゲーム」だった。風景が美しいのはもちろん、一部のボスは恐ろしい造形だけでなく、その攻撃方法がまた壮麗だ。ボスとしてはラダーン祭のラダーン戦が何よりも印象に残っているが、その後のイベント、またそのあとに訪れることになる都市を発見した時の興奮と美しさときたら──。

本作もまた多くを語らないゲームだ。UIがは簡素で、デフォルトの設定だとHPやFPといった最低限のUIさえも移動中は消え失せてしまう。NPCも決して多くを語らない、曖昧クソ野郎ばかり。そうしたシンプルさがまた本作の「意志」であり、洗練された美しさに繋がっている──単に不親切なだけとの境目は微妙なところだが──。

あのボスはマジでクソだった、このゲームから削除してくれとかドラゴンなど大型ボスの視点移動&移動の面倒さはクソすぎとかモブの強さじゃねえだろ!! とか序盤のマップ密度と終盤のマップ密度の差ぁ!! とかあのボスの祝福の位置はゴミすぎだろとか文句も湧いてくるといえば湧いてくるが、終わってみればすべてよし。深い余韻を残す良いゲームだ。プレイ中の皆様はがんばってください。