2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧
本作は最初にこれから語られるショッピングモールと都市の関係について概観を示し、2章と3章でショッピングモールの起原とその後の歴史、4章で現在のショッピングモールを示すというオーソドックスな構成であまり突飛なところもありませんが、堅実で言っ…
今、滅茶苦茶に広い宇宙のどこかで、人間が死んだり生きたりしている間もまるで関係をもたず、予想もつかない形で展開を続ける意識体が存在していたら──そしてそれが我々の太陽系にやってきて全く異なるそれぞれの目的を果たし始めたら、それに人間が巻き込…
いまさら説明するのも野暮なほど有名になってしまった感があるが、今は亡き伊藤計劃が書いた30枚ほどの遺稿『屍者の帝国』をその盟友である円城塔が物語を書き継ぎ、完成させたものが本書である。本書は出版される敬意そのものが極上の物語であって、物語…
内田樹先生の現時点での最新刊。内田樹論の文体論を超えて、コミュニケーション論の総括とも言える内容で、とても素晴らしかった。とても素晴らしく、だからこそ誠意を込めてこの本について説明する文章を書きたかったので、読み終えてすぐに文章を書くこと…
人間の行動は予測できるのかと言えば、できないという人の意見が大半だろう。人間には物理現象がみせる決まったパターンは存在せず、思いつきで飲みにいったり、ふと思いついたことで行動を変えたりといった自由意志によるランダムネスが混ざるからだ、と。…
あまりにもひどすぎる(褒め言葉)。『ビアンカ・オーバースタディ』はあの筒井康隆が書いた、当然ながら初めてのライトノベル。読み始める前は筒井康隆せんせも、もう77歳だ。とてもパワーが残っている年齢ではない。それにライトノベルを書く意図もよくわ…
ダンガンロンパというのは、2010年に発売された1と、今年の7月26日に発売された2を合わせたPSP専用アドベンジャーゲームのことだ。1と2の前日譚であるダンガンロンパ・ゼロを合わせた3つの作品を、ここではダンガンロンパ・サーガと読んでいる。…
内田樹先生の人参と鞭戦略による教育が失敗するという着想元はここだったのかという元ネタ的発見。「機会平等」によって誰しもが「努力すれば」平等に扱われる日本社会において、そもそもの「努力する才能」の部分に「出身階層」による「スタート時点におけ…
『学力と階層』という、学力における階層差が存在するのかを分析した本を読みながら自分が受けてきた教育について考えていた。小学校のときは楽しかったような気がするが、中学高校と上がるにつれて嫌で嫌でしかたがないものになり、なんとかして避けるべき…
いやはや大変いいものを読ませていただきました。10年に一度クラスのごちそうですよ(コニー・ウィリスの史学部シリーズは、30年で長編が3冊しか出ていない為)。本書『ブラックアウト』はSF作家として数々の著名作『航路』『犬は勘定に入れません』『ドゥーム…
いやはやこんな面白いものがあったとは。誰もがゲームをつくれる時代が、もうすぐそこまできているのかもしれないなと感じさせる一冊でした。enchant.jsとはHTML5+JavaScriptベースのゲームエンジンで、すべてのOS、スマートフォンで動作するアプリケーショ…
僕が読んでる二人の映画評のひとが二人共「ダークナイトライジング(笑)」みたいな感じだったからおそるおそる観たけど、これぐらいならぜんぜんいいよ! でも変なとこもいっぱいあるよねえ。僕はビギンズも観てないようなにわかファンなので正直、真剣に観て…
いつもだるいだるいとブログで書いている著者であることを知っているのでこの本も途中でだるくなって文が突然終わりを告げるのではないかと期待して読み始めたけどそんなことはなかった。なんか普通に構成もしっかりしていて、価値ある本にしようと感じられ…
本書は作家のポール・セローがアフリカをカイロからケープタウンまで、飛行機を使わずにバスと鉄道を駆使して横断する旅行記なのだが、その密度に圧倒された。観光ツアーなどで安全な道、安全な食べ物、計画されつくしたパッケージングされた「なんちゃって…
『ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」』。著者はGoogleでソーシャルメディアの研究を主導し、現在Facebookに勤めているという、ソーシャルメディア畑の中の人です。GoogleからFacebookには人材がどんど…
森博嗣さんの直近の著作に『常識にとらわれない100の講義』の中の一講義に「文系の人は、もの凄くデジタルだな、と思う」という話がある。これは森博嗣さんの著作の中でも割合繰り返し語られている話で、もう何度も読んだことがあるのだけど、その度に頷くこ…
まったく異なる文化について知ることは楽しい。人生に対する考え方や、自分が人間としての常識だと思って当たり前のことがさまざまな違った道のひとつでしかないことを教えてくれる。本書はピダハンという特殊なアマゾンの一部族についての分析の本だ。彼ら…
村上春樹さんのエッセイ。このシリーズ、大好きなんですよね。エッセイはお題が自由なだけに、書く方は結構難しいんじゃないかなって思うんですけど、村上春樹さんの書くエッセイは自然体のように見えるどうでもいいような内容で、でも読むとなんとなくいい…
よく「なんでもっと未来に生まれて来なかったんだろう」と考える。そしたら火星にいけたかもしれないし、ひょっとしたらもっと遠くまでいけたかもしれないし、いま・ここでは想像もできないような状況に立ち会えたかもしれないのにと。22世紀まで生きてド…