基本読書

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フロー体験 喜びの現象学

フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)

フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)

 端的に言ってしまえば本書は自己啓発書である。だが、『ただの自己啓発書』じゃない。「フロー体験 喜びの現象学」は『全てを総括する、ナンバーワンの自己啓発書』だ。それは今まで無根拠に、簡単で誰にでも理解できるが実践するのは難しいことをさあやってみよう! というだけだった自己啓発書とは違って、本書では『人はどういった時に幸福を感じるのか』から始まって、様々な分野の知識を総動員して、『楽しくなる』ためにはどうすればいいのかを検証していくからだ。

第1章 幸福の再来
第2章 意識の分析
第3章 楽しさと生活の質
第4章 フローの条件
第5章 身体のフロー
第6章 思考のフロー
第7章 フローとしての仕事
第8章 孤独と人間関係の楽しさ
第9章 カオスへの対応
第10章 意味の構成  ──Amazonより

 喜び、創造、生活への深い没入過程…そういった状況について本書では総括してフロー体験としています。どういった時にフロー体験に入れるかというと、達成する能力を必要とする明確な課題に注意を集中している時だといいます。達成すべき課題を目の前にした時、人は集中し最高の気分を味わいます。その中でも特に、『能力と課題の難易度がせめぎ合っている』状態では喜びが激しいのです。これはたとえばゲームやスポーツ、芸術活動の場合では比較的容易ですが、日常的な生活や仕事の場合は、興奮を呼び起こす事は稀です。本書の自己啓発的な部分はほとんどこの日常的な生活や仕事をどうやったら刺激的なものにできるかにあてられています。

 できるだけ多くのフロー体験を日常で経験することによって、その人の人生は幸福でありえる。そしてフロー体験とは、勝手に起きるものではなく自分の意識が起こすものなのである。金があっても不幸せな人がいるかと思えば、金がなくても幸せな人がいるのは何故か? 金があってもそれを使って偉大なる目標に取り組まないのならば金は無意味であり、金がなくとも目標を立て、それに向けて切磋琢磨しているならば幸福なのである。ゲームが楽しいからといって、ゲームが何十本もあればより幸せかといえばそうではない。何故ならゲームがたくさんあることが楽しいのではなく、ゲームに『集中』できる時間が楽しいのだ。ゲームがありすぎると、他のゲームに意識がいってしまい今プレイしている一本のゲームに集中できなくなる。集中できないと面白くない。ゲームが進まない、と悪循環である。

 今までの社会では明確にやることが決められていました。国を豊かにする、とにかく真面目に働いてお金をもらって家族を養って…。ルールが厳しく決められ、それ以外の選択を取るのは難しかった。しかし、今は違います。社会は豊かになって、割と適当にやっていてもご飯を食べていくことができるのが、現在の日本です。選択肢は広がり、昔よりは余程自由になりました。そんな中、今の若い日本人に求められているのは一元化された成功への道ではなく、自分の楽しみ…(目標といってもいいでしょう)を見出すこと。それは、言う事はたやすくても実現することは難しい。だれにでも理解できるのに、実際にやろうとすると環境や他の要素が壁となって立ちふさがる。ですが、不可能ではない。それを教えてくれる一冊でした。