- 作者: 田口ランディ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/02/28
- メディア: 文庫
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文章力がある作家でもある。しかしそもそも文章力が何かといえば、それは「考える力」である。よくある「あなたの文章を劇的に向上させる××の法則」系のエントリーの、←これを多用しろとか繰り返しを避けろとか、短く区切れとか、ああいうのは全部文章力とはなんの関係もない。文章能力向上系のエントリを書くような人間はたぶんほとんど「自分は文章を生業としている人間で、つまりは文章が上手い」ってことを自慢したいだけなんじゃないかな、いや書いたことないから知らないんですけどね。また基本的にこういう文章術ってのは、「他人に読まれることが必要」で、「どうしたら他人が読みやすくなるか」だけを問題にしてるようなのね。でも文章の目的ってのは「伝わっていく状態」だけが大事なんじゃなくて「何が伝わっていくか」てのも重要なわけ。わかりやすい文章というのは、誰にとって分かりやすくなければいけないのかというと、それは当然書き手にとってなわけ。自分は書きたい、書かずにはいられない、それは何故かっていったら、自分のことを知りたいから。自分のことを知るために、その自分をわかってくれる他人を自分の外側に設定するという行為が書くということなんじゃないの。書き手にとって最初の読者は、まずそれを見ている自分自身だし、何を自分が書いているかわからないで、文章が書けるはずがない。
文章力ってのは、見た目を綺麗にとりつくろうことじゃなく「読んじゃう」文章を書くことじゃないかな。どうやったら「読んじゃうのか」っていったら、やっぱり伝えたいことがよく考えられていないと。まず考えたことがあって、自分で整理したいことがあって、つまりは自分をいかに表現するかだよね。書くことによって自分がわかる、いったい、その行為によってどれだけ自分がわかるのか。そういうことのレベルの問題だと思うな。で、田口ランディさんはそれが凄い。一体何を考えて、何を思っているのか結構赤裸々に書いてしまうし、伝わってしまう。このさらけ出し方はそうそううまくいかない。嫌味にならず、重くなりすぎず、絶妙のバランス感覚。家族についても結構赤裸々に語っていて(ランディさんの家族、結構悲惨なのよね)いい。男なんてあんまり自分の家庭について話さないからね。話してもたぶん凄く歪曲するか、ちょっとしか喋らないか、とにかくありのまま話したりしないね。たぶん男はみんな内弁慶だから恥ずかしいんだろうけど。そんなこんなで凄く面白い一冊。心の清涼剤