著ビル・カポダイ&リン・ジャクソンという二人のピクサー信者によって書かれたピクサーの解体本。ピクサーとは言うまでもないけれど、トイストーリー、ニモ、バグズライフなどなどを作ってきたアニメーション制作会社であり、いかにしてピクサーが独創性あふれるアニメ作品を作ってきたか、どんな環境でピクサーアニメは生まれてきたのか、その原理原則が晒される。
僕は正直言ってピクサーのアニメをトイストーリーぐらいしかまともに見たことがないのですが、ここに書かれているようなピクサーの原理原則はどれも頷けて、また大変面白いものでした。その原理原則とはひとことで言ってしまえば「子供であれ」というひと言に集約されてしまうのではないかと思います。
子どもであることの条件についてウォルト・ディズニーの発言には、こんなものがある。
「子どもであることの条件? それは、ユーモアのセンスを忘れないことだ。心のなかに、ずっと持ち続けている何かがあることだ。心の余裕がなくて、笑えなくなったりしないことだ」本書232p
子どもであることが、創造的な発想に繋がり、子供であることが、楽しく仕事をする生活に繋がり、子供であることが、失敗を恐れないチャレンジ精神を生みだし、もうめんどくさいのでまとめてしまえば、およそどんな業務でも必要な「創造性」を発揮できるようになる。
社員を子どもとして存在させるためには、上からギチギチのルールで縛りつけてしまってはいけない。その為の環境作りが、やはりピクサーは素晴らしいと感じた。たとえば基本的にピクサーの社員は相談などをする際に、上下関係を気にすることはないという。
もちろん意思決定を下す上部組織は存在するけれども、それでコミュニケーションが断絶するわけではない。問題解決のためなら上から下まで全ての社員が平等に接触できる。そして、短期的な安さ、効率性、回転数、どれも多くの企業が追い求めている物だが、には興味を示さない。ただ良いものを、クォリティの高いものをと心がける。
それは簡潔なモットー、「品質こそが最高のビジネスプランだ」という言葉に凝縮されている。この言葉がただ単に無意味な理念に終わっていないことは、世にでた数多くのピクサー作品を見れば一目瞭然だろう。本書を読んでいたら思わずピクサーで働きたくなってしまった。お茶くみぐらいしかできそうにないけど……!

- 作者: ビル・カポダイ,リン・ジャクソン,早野依子
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2010/07/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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