ジャック・ボドゥ氏による海外のSFガイド。
わざわざ「海外の」とつけたのは、そのまま文字通り日本のSFがいっそ奇妙に感じられるほどにいい落とされているからであって、日本のSFにつかっている僕からすれば実に不思議な光景である。この本が書かれた時期がそれほど古いということでもあるまい。
あるいは、日本SFが翻訳され始めたのがごくごく最近で、まだまだ点数もあまり多くない(のかしらん?)ことも理由かもしれない。読書メーターのひと言感想で作家の円城塔さんは『要するに、日本SFなるものは存在してさえいないのだ。』と書いているけれど、皮肉な感じ。存在はしている。しかしその存在はSF文学史というものを描いた時に、無視しても構わないぐらい小さいということか。
一応下に目次を。流れをざっと説明しておくと、最初にSFの定義をざっくばらんに、次にジャンルの起源としてエドガー・アラン・ポー・などに触れながらSFの創設の父ジュール・ヴェルヌに繋がっていく。第二章からは主要国ごとにSFがどう産まれ、どのような過程を経て現在に至るかをざっと解説していく。第三章ではSFの主要テーマとして、宇宙時間機械などに分けて作品の分類/傾向/をわけていく。
常に読書ガイドも一行か二行かでかなり多岐にわたって書かれており、面白そうなSFを見つけるのに一役買ってくれる。多すぎてめまいがしてしまうぐらいかも。普通のSFファンならば、自分があまりにもSFを読んでいないことを知って愕然とするだろう(僕はした。べつに積極的に読む気はまったくないが。)
日本SFがまったく言い落とされている点に目をつむれば(これはもう日本で勝手にやるしかない)まとまった素晴らしいガイドだと思う。SFの魅力を教えてくれる文章も素敵だ。たとえばこんな風に。
SFは、どういわれようと、つねにどこかへのチケットである。モーリス・ルナールを敷衍するならば、このジャンルは人びとを未知の世界へと送りこむのだ。*1
われわれの文明に入りこむであろう変化、あるいは、すでに文明を根底から覆すような影響を与えている変化を反映させることができるのは「普通小説」作品ではなく、SF作品だけなのである。そして、二つの未知のもの、つまり人類の未来と宇宙の謎を、フィクションという形式を通じて絶えず問題にできるのもSFだけなのである。*2
目次
はじめに ジャンルの誕生と定義
定義の素描
SF、想像の文学
ひとつの定義から別の定義へ
センス・オブ・ワンダー
第1章 ジャンルの起源
前史
先駆者たち
SFジャンル創設の父
第2章 SFの地理学
アメリカにおけるSF
イギリスにおけるSF
フランスにおけるSF
他の国々のSF
第3章 SFの主要テーマ
宇宙
時間
機械
異世界、異次元
改造人間)
結び SFがはらむ問題点
SFと文学
サイエンスとサイエンス・フィクション
SFとファンタジー
- 作者: ジャックボドゥ,新島進
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2011/02/18
- メディア: 新書
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