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納得度の高いランキングが並ぶ、ベストSF2017──『SFが読みたい! 2018年版』

SFが読みたい!2018年版

SFが読みたい!2018年版

はい、今年も『SFが読みたい! 2018年版』が出ました。僕は今年もベストSF海外篇で30作品のガイド+海外SF総括+海外SFランク外の注目作+「あの物語はいまどうなってるの?──人気大河シリーズの現在」で《ウィッチャー》シリーズの紹介を1ページ担当しております。いま文字数カウントしたら1万5千字ぐらい書いている。

30作品もガイドを書くのは大変なんですが面白い作品ならばそう苦にはなりませぬ。というわけで今回の海外篇、また日本篇についてもめっぽう納得度の高い+個人的な感覚とそうズレていないランキングになっていて嬉しかったなあと思います(納得度が低い=個人的な感覚とズレていたからといって悪いことはなにもないが)。

本の構成としては概ね昨年と変わらず、日本篇、海外篇それぞれで作家・ライター陣のアンケートによって決定したたランキング30作品が発表され、それぞれ一位の作家によるコメントが載り、サブジャンル別ベスト10(海外文学とかノンフィクションとかSFゲームとか)があり、作家や出版社の2018年の刊行予定が載り、先にも書いたように「あの物語はいまどうなってるの?──人気大河シリーズの現在」がありとだいたいそんな感じです。バーナード嬢、早川さんの二大(?)SFマンガもあります。

以下、ランキングの結果に全部触れるわけではないけれども、一位とか目をついた作品について軽く感想を書いていきます。

日本篇

昨年の「読みたい」では、鏡明☓大森望☓冬木糸一と、あとSFマガジン編集長の塩澤さんで振り返り座談会をやって載せっていたのですけれども、そこで上がった議題の一つが「ベスト10に」早川の本が一冊も入ってないじゃん! というのと、再開したSFコンテストの受賞者らの作品がベストの上位に(質の割には)入ってないねという話があったのだけれども、今回は見事、小川哲さんの『ゲームの王国』が二位に入っている。これももちろん質があってこそのもので特段いうことはないのだけれども。
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一位こそ逃したとはいえ、正直一位の飛浩隆『自生の夢』は刊行された瞬間から「もうこれが投票に入ってくるSFランキングはこれが一位だよね……」的存在なので実質一位といっても過言ではないのでは(そんなことあるか)。他、ベスト10に早川の本もちゃんと2冊(『裏世界ピクニック』『BLAME! THE ANTHOLOGY』)入っており、安全安泰。飛さんはBLAMEにも傑作を入れているのでまあすごいですね……。
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個人的な偏愛を入れると吉田エン『世界の終わりの壁際で』、黒石迩守(本書の中で一箇所、黒岩と誤字が残っているのを発見してしまった)『ヒュレーの海』はもっと上位に入ってほしかったけれども僕も投票できなかったので何もいう資格ナシ。

あと吉上亮『PSYCHO-PASS GENESIS』も、神林先生の新刊(『フォマルハウトの三つの燭台』『オーバーロードの街』)も、もっと──と言い始めるとキリがないけれども。トレンドとしてあげられているのは、Web小説発SFが二作上位にランクインしていることで(『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』『横浜駅SF』)『JKハルは異世界で娼婦になった』も出たし早川☓Web小説の今後の流れに期待したいところ(とはいえ後発だし、無理して駄作を出版する必要もないわけだけど)。

海外篇

今回、特にベスト10は本当に傑作揃いで、not for meなケースは当然存在するのだけれども、ガイドを読んでもらったうえで、「おっこれは」と思える作品があれば何を読んでも存分に楽しめると思います。個人的な偏愛としてはなんといってもアダム・ロバーツ『ジャック・グラス伝 宇宙的殺人者』なんだけど、ロボットSFなら『巨神計画』、超スーパーハードSFならピーター・ワッツ『エコープラクシア 反響動作』、グレッグ・イーガン『アロウズ・オブ・タイム』というか〈直交三部作〉。
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短篇集ならケン・リュウ『母の記憶に』を買っておけばハズレってことはありえないし、なんといってもクリストファー・プリースト『隣接界』はさまざまなジャンルを越境し描写の魔力に酔いしれているうちに最後まで連れて行かれるド傑作。その二つの訳者として関わっている古沢さん(母の〜は共訳)は今回は大フィーバーだとSFが読みたいの海外SF総括原稿にも書いたけれども、訳者としての実力に加えて単純に”何の作家・作品を訳すのか”という”眼”の確かさの結果だと個人的には思う。ま、もちろん運もありますが(飛浩隆と同じ年に本を出してしまう日本作家と同じく)。
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新人なら魔術☓科学☓中東なSFファンタジィの快作G・ウィロー・ウィルソン『無限の書』や、現代の科学技術の最先端をきちんと踏まえた上でトランスヒューマンからポスト・ヒューマンへの移行期を描き出すケレン味たっぷりなラメズ・ナム『ネクサス』、アメリカで第二次南北戦争が起こったら──という未来をリアルに描き出す『アメリカン・ウォー』あたりは本当におもしろいので是非。特に後者二作はめちゃくちゃおもしろいのにランキングでも下位の方なので注目して欲しいところです。

それ以外

それ以外とくくると雑だが。各社の刊行予定では東京創元社が凄そう。高山羽根子さんの初長篇はめちゃくちゃ楽しみだし、宮内悠介『超動く家にて』も早くよみたい。ゲームSF傑作選『スタートボタンを押してください』も早く出ろ。早川はウィリスの新作を早く。あとヴォネガット(ヴェネガットに誤字ってるけど)全短篇も……。

個人の予定だと飛浩隆さんが果たして本当に出すのかわからないが『零號琴』を予告している。これはもう予告ホームランのようなもので、出したらカッコイイが出さなくても別に何も思わない(ヤジは飛ばすかもしれない)アレ。あと黒石さんの二作目が読めそうで嬉しい。これも予告ホームランかもしれないが。そもそも書き終わっていたとしても全ては出版されるまで予告ホームランのようなものなのかもしれない。

おわりに

それ以外では、間違いなく2018年は《天冥の標》の年になると思うので、備えようと思います。じゃあそんなところで。

隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

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