中国の方のオタク的な反応をまとめている「日中文化交流」と書いてオタ活動と読むを書籍化したもの。何度かはてぶがついたりしていて読んだことがあったのですが、まとめてテーマ別に読めるのはやっぱり嬉しいですね。しかも合間にはさまる著者の百元籠羊さんのコラムがまた中国の文化を知る上でかなり面白いです。
近いようで遠い国、というのが正直な中国に対する感覚で、距離としては近いのに習慣、考え方、要するに文化的な知識というのがかなり欠けているんですよね。なんとなく海賊版が横行していて、国への忠義が熱くて、でかくて、なんか怖い、みたいな印象でしょうか。そういった意味ではアメリカの方が文化への理解度はある方でしょう。
本書は「萌え」に邁進するオタ中国人を通して中国人を見ることで、「なんだ、中国人も日本人と同じじゃないか」という「共感」と「なるほど、そういう風に感じるのか」という「文化の違い」の比較としてかなり面白いと思います。たとえば中国ではたとえ海賊版だとしても、えろい場面はほとんどカットされてしまうそうなんですよね。
しずかちゃんのお風呂からエヴァンゲリオンの綾波の裸まで、際限なく改変されてしまう為に作品の重要な部分まで削除されてしまうことがあるそうです。なんでそこまでするのかというと、『中国では子供や大学進学前の学生同士の恋愛は「早恋」と言われ、学生にとって害毒であり、心身の健康を害し、勉強を妨げ、常軌を逸した行為を促しやすく、犯罪を誘発する可能性があるということでハッキリとした「悪」として扱われています。』
だそうです。えーそこまでする必要あるのーと思うわけですが、どうも本気のようですね。中国の親は子供に対してちょっと日本の基準からすると常軌を逸したレベルでキツイのだと本書の説明からはよくわかってきます。またそういう過度な保護から自分たちの同年代が恋愛する日本のコンテンツが、中国のオタク達の心を強く捉えるようになったのではという分析は納得です。
また非常に頷いたのが、中国ではクリエイターが育たないと言う話。コピーが当たり前という文化の元では、どんなに作品を作ってもあっさりコピーされて使われてしまう。あるいは他人に自分の作品として発表されてしまう。作品のクォリティも海賊版と競わなければならない。こんな状況でオリジナルなコンテンツを創ろうという人間はいないのではないかというのです。
ただ、現在中国では同人イベントが盛んになってきており、オリジナルなコンテンツを作る人もかなり増えてきているらしいんですよね。彼ら彼女らの数がこれから次第に増えて行くことによって、やっと「0からオリジナルのコンテンツを創る側」としての個々の自覚が芽生えていくのかもしれません。
面白い一冊でした。もちろんブログを読んでもいいと思うけれど、上に書いたような、たぶん本書書き下ろしであろうコラムが読めるのも大変お得で面白いです。中国と日本の文化を知る為に。
目次
★オタ中国人も驚愕するリアルサイズの「ガンダム」
★カットや修正、それでも見たい「新世紀エヴァンゲリオン」
★大好きだけど、振り回されるのもキツイ「涼宮ハルヒの憂鬱」
★日本の学校生活のお約束を中国の若者に刻み込んだ「ときめきメモリアル」
★サザエさんの長寿番組っぷりはオタ中国人の想像の遥か彼方
★念願のオタク聖地「秋葉原行き」、しかし直前で不安になったりも
★「日本鬼子」オタ中国人へ侵攻開始・・・
- 作者: 百元籠羊
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2011/01/24
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 129回
- この商品を含むブログ (12件) を見る