基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ニューロマンサー

『ねじまき少女』の帯かなんかに「ニューロマンサー以来の衝撃!」って書いてあって、ニューロマンサー読んだことないから意味不明だったんです。で、ねじまき少女とっても面白かったのでこのニューロマンサーも読んでみました。

何が「以来の衝撃」なのかよくわからなかったけど、たぶん「賞を総なめにした」ことがニューロマンサー以来だったのかな。著者はウィリアム・ギブスン。過去に同著者の別の作品である『ディファレンス・エンジン』を読んだ時に、そのあまりの「何言ってるかさっぱりわからん」っぷりに根をあげて10Pで読むのをやめてしまったのですが、こっちは最後まで読めました。

正直、さっぱりわからんっぷりでは同じぐらいだったのですが……。このわかりにくさっていうのはかなりの部分意図的だと思うんですよね。でもその意図がどのようなものかっていうのが問題なわけで、たとえば「へいへい、これぐらいついてこれなきゃ困るぜ」って感じなのか、そもそもわかりやすいものをかけないのかっていう。

わかりにくさの一つはかなり描写がそぎ落とされているからであります。出てくる単語の意味や、場面が切り替わった事がほとんど説明されない為、わからない。しかしそのようにそぎ落とされた描写だからこそ、何か武骨なかっこよさっていうのが文章から出てくる。余計な物を語らない武士って感じでしょうか。

内容に関して少し説明を入れると、なんだかよくわかん電脳未来で、電脳空間にジャックイン(没入)して、データを盗んだりバレて神経を焼き殺されたり脳波がフラットになったり麻薬やりまくったりといった電脳バトルを千葉シティで(なんだと)繰り広げるのです。

これはかなり有名な話ですけれども、文体が凄いんですよね。没入って書いて横にルビで<ジャックイン>って書いてあるんですよ。没入だけだとなんかもっさりしている感じがあるけど、横にジャックインって書いてあるだけですげえかっこよくなる。正直実際に読んでみると衝撃でしたね。たぶんカタカナでジャックインとだけ書いてあってもフーンって感じだったと思うんですよ。没入の横に<ジャックイン>って書いてあるから、こんなにかっこいいんですよ、わかりますかね。

あと各章のタイトルがすごい。第一部が千葉市憂愁<チバシティ・ブルース>(<>内は本来漢字の横にふってあるルビ)だし、チバシティブルースっておまっそれもう千葉じゃねーしみたいな。第二部は買物遠征<ショッピング・エクスペディション>。買物遠征って漢字にするとすげーだせーのに横にルビふるだけでなんかすっごいヤバイ旅みたいになりますからね。まじぱねえっすよ。

で、第三部はまああんまり面白くないんでおいといて、第四部が迷光仕掛け<ストレイトライト。ラン>ですよ。なんか、超電磁砲的なルビの振り方ってここからきたのかなって感じ。最後が結尾<コーダ> 出発と到着<デパーチャとアライヴァル>

そんで、内容はさっきも言ったように全然わかんないんですよね。すっごく不親切。お前わからせる気ないだろって感じ(僕が馬鹿なだけかもしれないですけど)。でも描写自体は震えるほど素晴らしい。とても想像できそうにない世界なのに、その描写はとても現実的です。

何よりもかっこいい。そう、圧倒的にかっこいいんです。こんなにかっこいい作品は読んだことが無い。地の分を読んでいるだけで震えが来るようです。描写の一つ一つには意味があり、意味が良く分からなくても読んでいるうちにその深さに触れます。

読み終わった時に思わず本の形を確認してしまったのはほとんど無意識のことでした。一瞬、「これは本当に一冊の本なのか?」と確認したくなってしまった。本を閉じてみてみるとそれは確かに一冊の本で、しかし読み始めるとそれはほとんどWebのように広大な世界が広がっている。

特別な位置を占める一冊になりました。

これって新しい表紙になっているんですけど、凄くかっこいいです。

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)