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宇宙生物学について最初に知るのにうってつけの一冊──『エイリアン──科学者たちが語る地球外生命』

エイリアン──科学者たちが語る地球外生命

エイリアン──科学者たちが語る地球外生命

観測技術の高まり、生物学の知見、惑星気候学の発展に伴って、地球外生命の存在可能性について考えるノンフィクションが近年いくつも出てきているが、本書もその列に連なる一冊である。類書と異なるのは、それぞれ専門分野の異なる研究者ら20人によって、多角的にこの事案について検討していること。この分野は、地球外生命がいると結論づけるにせよしないにせよ、宇宙物理学から生物学まであらゆる分野の知見が総動員されなければそこそこの仮説をたてることすら難しいので、こうやって各分野の専門家が集まってきてテーマ・アンソロジーを組むには絶好の分野だ。

執筆者の中には量子力学的観点からの考察もあれば、熱水噴出孔からの生命発生シナリオをベースにした進化生化学観点からの考察あり、認知神経科学者がタコの知性からエイリアンの意識についての考察あり、SF小説の中で書かれてきたエイリアンについて概観する人もいれば、現在行われている地球外生命探査について語る人あり、とそれぞれの論が手短にまとまっているのでありがたい。『生命、エネルギー、進化』などの著作を持つニック・レーンなども気候しているが、いかんせん彼らの本をそのまま読むと長くと難しいので、こうした概論で雰囲気を掴むのも悪くない。

さて、では具体的な紹介に──と思ったのだけれども、アンソロジーということもあって紹介の軸をつくるのが難しい。逃げになってしまうが、近年の宇宙生物学に関連する本で、最近読んでおもしろかったものを紹介してみよう。『エイリアン』を読んで(読む前でも)、宇宙生物学関連で次の本を探そうとしている人にオススメである。

宇宙生物学関連のオススメ本をいろいろ紹介する。

まず紹介したのはつい先日記事を書いたばかりの『我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの』。そもそも我々はまだ地球上でさえ生命がどこで、どのような過程を経て産まれたのかもわかっていないわけだが、その問題に合成生物学の観点から迫る一冊だ。はたして人間は生物をつくることができるのか?
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あと、もう一つ直接宇宙生物学と関連しているわけではないけれども、ある意味では最重要かもしれないものとして『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』もいい。仮に様々な物理法則を持った宇宙が無数に存在するのであれば、確率的に生物が産まれ得る宇宙と惑星ができるのもそう不思議ではないのである。
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惑星に普遍的に存在する気候のルールを研究し、文明の存在は必ず惑星の環境を変化させる、という観点から、地球外文明が仮に存在するとしたらその惑星はエネルギー収支的にどのような運命をたどるのかのモデル化を行ってみせる『地球外生命と人類の未来 ―人新世の宇宙生物学―』もこの分野では傑作といっていい出来である。
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地球外生命の知性を考える時に読んでおきたいのは、『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』人間とは異なる道筋で進化した生物は、どのような「こころ」を持っているのか? と問うのは、そのまま異種知性について考えることである。
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宇宙生物学分野では最初に言及されるフェルミのパラドックスに徹底的に答えた『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』も外せない。単に荒唐無稽な仮説というだけでなく、きちんと現実の科学や計算に立脚したものも多く(バカバカしいものもあるが)この『エイリアン』と同じく広範な記述、思考の幅広さが魅力である。
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