基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ハヤカワの1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する!!

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: Kindle版
うおおおコロナで外に出る理由もない今日この頃、突如として早川書房から1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールをはじめたのでオススメを紹介します!!

早川は毎年、海外SFだったり日本SFだったりと、わりとテーマを絞った数十〜数百点規模のセールはやっていたのだけど、垣根がなくここまで大規模のセールははじめてでは!? 早川といえばSFとミステリと科学ノンフィクションなので、そこらへんを重点的に紹介してみようかと思いやす。ちなみにセール商品全点は下記の通り。
www.amazon.co.jp

SF篇

まず「これは当然だよなあ?」レベルの王道から行くと、なんといっても劉慈欣の『三体』だ! 識者らがアンケート形式で投票し、その得票数でランキングを決める「SFが読みたい!」というムックのランキングで2位を大きく突き放して海外編の一位を飾った中国SFのドン。凄まじいスケールと科学的厳密性のあわせ技、中国語版で三部作合わせて2000万部も売れたという化け物級の話題作にして、その中身もそれに劣らずおもしろいという奇跡のような作品なので、まだ読んでない人はぜひ。

つづけてSFでいうと、ディストピアSFの古典中の古典、オーウェルの『一九八四年』。クラークの代表作『幼年期の終り』。その後の様々な作品の流れ、イメージの基調を作ったフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』あたりの定番古典も揃い踏み。日本SFでいうと、先日アニメ化が発表されたばかりの傑作百合ゾーン物(不条理的で即死級の出来事が起こる異界が突如現実に出現し、そこでの冒険を描く)の宮澤伊織『裏世界ピクニック』もセール! これはめちゃくちゃおもしろく、尊さみにまみれるのでぜったいに読んで欲しい!
日本SFといえば、現代の日本SFを引っ張っていく男小川哲による『ゲームの王国』や短篇集『嘘と正典』もセール中。特にゲームの王国は、"権力者が都合良くルールを設定し、好きなように覆す"腐った政治体制の中で、いかにして人々は自身の正しさを貫き、ルールに挑むのか。そんなカンボジアとゲームについての重厚な物語で、この5年ぐらいの長篇の中でも飛び抜けたおもしろさを持つ作品。ぜひ読んで欲しい。『嘘と正典』も、歴史とSFが絡み合った、重厚かつトリッキィな傑作揃いだ。
ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:小川 哲
  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: Kindle版
他、セールでは大抵入っている伊藤計劃『虐殺器官』や『ハーモニー』もあるよ。
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ノンフィクション篇

つづけてノンフィクションに目を向けてみると、近年の作品としてはカル・ニューポートの『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』が入っているのが嬉しい。これは、TwitterやFacebookなどのSNSに時間や集中力を奪われすぎているのではないか、そうした時間を削減することでもっと自由になれるのではないかと問いかけ、まさにその実践を行った記録や研究が記されている一冊。僕もこの本を読んでからTwitterをみることがなくなったぐらいに影響力の大きな本だ。
もうひとつ、SNS繋がりでオススメしておきたいのはデイヴィッド パトリカラコス『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』。2014年のガザ侵攻を筆頭に、SNSがどう戦場に作用するのか、戦地でレポートをする「若い女の子」のSNSの投稿に共感や同情が集中することの意味など、現代におけるSNSの意味を捉え直すきっかけとなる一冊だ。若い女性が涙ながらに訴えると、その意見の正当性以前に人は「どうしようもなく感情を動かされてしまう」。そうした、ナラティブについての本でもある。また、コロナが蔓延している今のような状況でこそ読んでもらいたいのが、スティーブン スローマン,フィリップ ファーンバック『知ってるつもり 無知の科学』。これは、我々が無知であることを知らしめる本ではなく、我々がいかに「自分が思っているよりも」無知であるかを解き明かす本だ。多くの人は信念に従って何を信じるか決めており、科学、エビデンスへの合理的評価とは無関係だ、など数々の研究・事例が紹介される。「まさに様々なデマが飛び交う今」だからこそ読んで欲しい。コロナでリモートワークに移行した人も多いだろうが、そういう人たちは10年以上前からその実践者であるジェイソン フリード,デイヴィッド ハイネマイヤー ハンソンによる『小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード』を読んでおくといい。彼らの会社は、Ruby最大のwebフレームワークのRailsを最初に開発した会社というとweb開発者には通りがいいだろう。大人数の社員などいらず、会議も事業計画もいらず、オフィスだっていらない。どうやったらみんながリモートで成果をあげられるのか? と、その秘訣について語られた一冊で、依然として役に立つ。
あと、現状とは関係ないけれども『ミヤザキワールド ─宮崎駿の闇と光─』もオススメ。アニメーションと日本文化の研究者スーザン・ネイピアが、宮崎駿の人生と作品を絡めるようにして論じた一冊。情熱的な筆致で、同時にロジカルで、先行の研究や批評を丁寧に織り交ぜながら、自身の見解も取り込んでいく。宮崎駿の人生と作品をおっていく中で、特に重要な部分については文字数を費やしてアニメのシーンを描写していくのだけど、その文章がまた美しくて鮮やかに映像が浮かび上がってくる。

それ以外

話題作というわけでもないやつをおすすめしていくと、まず矢部嵩『〔少女庭国〕』はやばい傑作。密閉された部屋に閉じ込められた女子中学生。『“下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ”』と張り紙があり、ドアを開けて別の部屋に出ると、そこには寝ていた中3女子が一人いて──とドアを開けるたびに無制限に中3女子が増えていく女子中学生増殖SF。わけのわからない光景がみたければこれを読むといい。

〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA)

〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:矢部 嵩
  • 発売日: 2019/06/20
  • メディア: Kindle版
近刊系にも目を向けてみよう。世界で売れに売れまくっているミステリィシリーズ『ミレニアム』が昨年12月に出た6巻までセール中な他、黒人を主人公に据え、『ベイカー街の脳をサウス・セントラル・ロサンゼルスに移し替えたシリーズ第一作』とも評されたジョー・イデによる探偵小説『IQ』と『IQ 2』もセール中。SFとしては神林長平のデビュー40周年を迎え、なお先へ進む、見たこともない領域を開拓するんだという決意と覚悟に満ちた傑作最新巻『先をゆくもの達』
先をゆくもの達

先をゆくもの達

異色のなろうファンタジィというか、メタなろうファンタジィである平鳥コウの『JKハルは異世界で娼婦になった』。その前日譚や後日譚が含まれた、昨年12月に出たばかりの短篇集『JKハルは異世界で娼婦になったsummer』もセール中だ。どちらもおもしろいので、読んだことがなければ手を出してもらいたいなあ。僕が今国内外含めていちばんおもしろいミリタリーSFだと思っている林譲治『星系出雲の兵站』シリーズも軒並みセール中なので、宇宙戦争での兵站に興味がある人は是非。

おわりに

星系出雲の兵站 1 (ハヤカワ文庫JA)

星系出雲の兵站 1 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:林 譲治
  • 発売日: 2018/08/31
  • メディア: Kindle版
というわけで駆け足で紹介してきたが、アントニオ・ガルシア・マルチネスのシリコンバレーでの激闘の日々を綴った『サルたちの狂宴』とか、紹介しきれなかったおもしろい本も多いので(サルたち〜は今触れたが)、みんなも自分で探してみてね〜〜〜〜。一九八四年とか幼年期の終りが400円以下で買えるのはたまげるよな〜〜〜。