基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』

近年、栄養環境の改善や医療技術の進歩によって人間はより長く生きることができるようになった。ただ、ほとんどの人が望んでいるのは、「長く生きる」ことだけでなく、同時に「健康で」あることだろう。糖尿病などの慢性疾患を発病して、永続的な治療が必要ないのであれば、それが幸いである。

そうした状況と科学の進展も合わさってか、『LIFESPAN: 老いなき世界』など、近年「健康に、長生きする」ことにフォーカスした本が出るようになった。本書『100歳まで健康に生きるための25のメソッド』は、そうした数多ある健康長寿のメソッドを、科学的エビデンスと共にすべてまとめ、それを実践するために何をしたらいいのかのレクチャーまでしてくれる、実践的な「健康に、長生き」するための本だ。

動物実験や臨床研究、さらには百寿者に関する研究から、ヒトは大きな慢性疾患を発症することなく、100歳以上生きられることが明らかとなっている。(……)WHOの推定によれば、質の悪い食事、身体不活動、喫煙、過体重といった生活様式に関連した要因を改善することで、心血管系疾患、脳卒中および2型糖尿病の発症を少なくとも80%ほど予防できること、同様に、がんの発症も40%予防できることが報告されている。この値は、かなり低く見積もられた値であると私は考えている。pⅷ

僕も健康に長生きしたいのでいろんな本を読んで実践してきたが(たとえば週に最低でも150分の有酸素運動、食物繊維や野菜を多くとり、適切な睡眠など)、本書にはちゃんとそのすべてと、それ以上が網羅されている。もちろん遺伝的な部分で決まってくる部分も大きいし、ここに書いてあるようなメソッドをすべて実践することは難しいだろうが(僕も全部はとてもじゃないが無理だ)、読んで、できそうだな、と思うものを実践するだけで、随分と最終的な結果は変わったものになるだろう。

そういう意味では、すべての人に(遅すぎるということはないので、何歳であっても)おすすめしたい本だ。

たとえばどんなことが書いてあるのか。

では具体的に健康に生きるためには何をすればよいのか。ざっとその分類をすると、1.食べ物に気をつけること。2.適切な強度の運動を続けること。3.喫煙や酒などの悪習慣をできるだけ遠ざけ、定期的な健康診断などの予防的な行動をとること。4.メンタル面を守ること──あたりになり、各項目超細かく具体例が書かれていく。

たとえば食事について語った章では、何を食べればよいかだけでなくベジタリアンであることは健康によいのか?(結論だけ書くと、『ベジタリアンであることは、そのヒトの健康状態に対して大きな意味・影響を持たない。』p22)であったり、エネルギーの取得制限を実施することで健康寿命にどれだけの好影響が出るのか。また、体重を減らすとしてどのぐらいのペースで減らすべきなのか──などが語られている。

何を食べればいいのかについては、答えはシンプルで、「ほとんど加工されていない、食物繊維が豊富な食品」になる。野菜、豆類、ナッツ類、種実類、全粒穀物および果物などの摂取量を増やすことが重要だ。これらの食品群にはさまざまな種類の食物繊維やビタミンが含まれていて、満腹感が早期に生じやすく、減量に効果的だ。中でも食物繊維は重要で、食物繊維を1日あたり14gしか摂取していない人は、30g以上摂取している人たちに比べて、死亡リスクが30%高くなる結果が報告されている。

肉はとっちゃだめなの? と疑問に思うかもしれないが、肉は本書の中では推奨されている食べ物ではない。たとえば近年高たんぱく質食を推薦し、低炭水化物食による減量効果をうたう本も多数出版されているが、本書ではこうした食事には良いとされる効果(高たんぱく質食は空腹感をおさえ脂肪燃焼効果を高める)に対するエビデンスは「非常に弱い」とし、たんぱく質を摂れば摂るほど筋量が増える説も、『科学的な裏付けのない神話の1つである』として否定的だ(効果がないわけではないが)。

多くの研究データにより、高たんぱく質食の摂取は、ヒトの健康にとって好ましいものではなく、糖尿病や心血管系疾患の発症リスクの増大と関係することが示されている。2型糖尿病の発症リスクは、1日のたんぱく質摂取量が64gを超えて10g増えるごとに20-40%増加すると推定されている。(p95)

本書では牛肉、仔牛肉、豚肉、子羊肉といった赤肉系の摂取量は1週間あたり350g〜500gを超えないように制限すべきとしている。本書に書いている内容のほとんどをすでに実践済みの僕だが、唯一無理だ……と諦めてるのがこの赤肉系の摂取制限。今毎日一人で2〜300gぐらい肉を食っているので、とてもじゃないが守れない

肉の制限は僕にはどうしても難しいが、せめて食物繊維だけはとろうと思っている。ただ、食物繊維をサプリメントで摂取は危険であることを示す研究が示されていて、それにも気をつけたほうがよさそうだ。

運動について

もう一つ重要なのが無論のこと「運動」だ。有酸素運動は人間に有益な効果を与える。たとえば、骨格筋内のミトコンドリアの数および活性の増大。これによって脂肪をよりエネルギーへと変換し、多く利用できるようになる。有酸素トレーニングの実施は13種類のがんの発症リスク低減と関わり、前頭皮質および側頭葉の加齢による変性を軽減できる可能性もあり──と利点をあげたらきりがない。では、次に考えるべきなのは、どれだけ運動すべきかだ。

理想的には、エネルギー消費量が合計で300kcalを超える有酸素トレーニングを60分。これを週に3〜4回実施することだ。だが、現実的にはそんな時間をとるのは難しい。本書では、この問題を回避するすべとして、高強度インターバルトレーニング(HIIT)の実施を推奨している。これは、たとえばランニングやサイクリング、もしくは水泳を全力で60秒間行い、その後ゆっくりとした速度で4分間行って回復させるような運動のことだ。

これを最初は4セットほど行い、次第に6までそのセット数を増やしていく(合計30分)。その効果は、低〜中強度のトレーニングを45〜90分間やった以上の効果が出るという。6セットのHITTを週に2回実施しただけでも、週5回有酸素性トレーニング(45〜90分間)を実施した場合と同程度の効果が出るそうなので、時間が取れない人でもそう難しい話ではない。(ただ、やればわかるがこれは相当にしんどい。実際僕はしばらくHIITでやっていたが、途中で諦めて週4の有酸素トレーニングに切り替えている。)

おわりに

と、食事と運動の2つを軸にざっと紹介してきたが、これでも本書に含まれている知見のほんの一部だ。本書では他にも、より実践的で現実的な食事内容の提案(豆類そんなにたくさん食べれないよ〜〜という人のために調理法を紹介したり)、体を動かすためのヨガや太極拳などの紹介、メンタルを安定させるためのマインドフルネスについて、健康診断を何歳のときに何を受けるべきかなど網羅的に書かれている。

美味しいものをたくさん食べたい年末に紹介するような本ではなかったきもするが、誰でも読んだら得るものがあるはずだ。