あらすじ
短編がいっぱい
感想 ネタバレ無
戦争とは何なのかを、一度考え直してみる本となった、なんて書いたら格好いいかもしれないが特にそんな事もなく。
結局戦争が何なのかなんて単純化はできなくて
村上春樹の解説を読んでもわからなくて
読み終わったらハイさよならで忘れてしまいそうな
そんな考えしか残らなかったけれども、深く洞察するような読み方なんて全くしてないけれども、それでも少しぐらいは考えさせられるわけで。
現実と非現実の間が戦争であるなんていう一本筋の通った答えなんて見つからんのう。
いろんな出来事が起こるけれど、全部どうにもやるせない話で(そりゃ全部戦争の話なのだ)、夢や希望なんてものは皆無だけれども、ってなんて書こうとしたか忘れたなぁ。ようするに、ただやるせない。やるせないったらやるせない。
苦しみながら戦ったとか、自分は本当は自ら望んで残虐非道の限りをつくしたのだ、とかいう自らの醜い部分を他人に打ち明けて逆に許しを乞うような、そんな話ではなかった。
御気の毒に、というのも変だし、ふーんと素通りするには重いし、ただただやるせない。
書いてある事は、最初に書いてあるとおりにほとんどフィクションだろう。異常に心理描写がすっきりしすぎているし、自分の若い頃の話など通常考えたらあり得ないほど克明に描かれている、明らかに創作だと分かる。
ただ、だからといってそれが事実ではない、という事ではないというのは繰り返し書かれている事であって、それについては全くの事実であろう。
間違いなくフィクションとして面白い。
どの短編も印象的で、どの短編も、現実か、もしくは非現実か、わからなくなるような構成になっている。あるいはこれは作者の実体験なのだろうか、それともこれは創作なのだろうかと、普通は考えるだろう。
ただ、そこが狙いなのかなと思った。戦争を語る時に、どこかシュルレアリスムのような感覚を持ってしまうという文章があったが、要するに、読者にも物語の現実性と非現実性の合間をさまよってほしかったのではないか、と思ったのである。そういう意味でいえば、まんまとハメられた、と言わざるを得ない。
ネタバレ有
本当の戦争の話というのは全然教訓的ではない。それは人間の徳性を良い方向に導かないし、高めもしない。かくあるべしという行動規範を示したりもしない。またひとがそれまでやってきた行いをやめさせたりするようなこともない。もし教訓的に思える戦争の話があったらそれは信じない方がいい
なんとなくわかると書いた後によくよく考えてみたら全くわからなかった。
教訓的というと、どういうことだろうな。その話を聞いた時に、戦争はやはりダメなのだ、と感じたり、戦争というのは人をおかしくしてしまうのだ、と感じたり、そういうことだろうか。
確かにこの本を読んでいてそんな事を感じた事はなかった。
戦争がいけないなんて一言も言っていないし、戦争を恨んでもいない。
ただ戦争があって、戦争にいって、滅茶苦茶になっただけだ。
ひどくやるせない話だ。戦争はいけないというよりも、ただただ戦争に参加したくないという思いが高まっただけだ。
つまるところこれが本当の戦争の話だろうか。
戦争の最中にこんなことがあった、あんなことがあった、とひたすら書かれているが、戦争のせいでこんなことになった、などというのは、ほとんど書かれていなかったか、あるいはまったく書かれていなかったように思う。
あったとしても、誰誰のせいで誰誰が死んだ、などというあくまでも個人個人の話だ。全体がまるで見えてこない。戦争という大きな枠組みとして書かれているよりも、その中の本当に一部隊の話だけだろうか。
どの短編も印象的で、どの短編も、現実か、もしくは非現実か、わからなくなるような構成になっている。あるいはこれは作者の実体験なのだろうか、それともこれは創作なのだろうか上でも書いたが、だからこそ作者は村上春樹の解説するところの、危険な行為をしたのだろう。
特に内容については触れないでおこう。うまく書ける気がしない。
ただ、本当に感想としてはやるせない、というだけだ。